藁にもすがる獣たちの映画専門家レビュー一覧

藁にもすがる獣たち

曽根圭介による同名犯罪小説を「シークレット・サンシャイン」のチョン・ドヨン&「アシュラ」のチョン・ウソン主演で映画化。一発逆転を計画する者たちが、巨額の金が入ったバッグを手に入れるため、欲望をむき出しにしながら激しくぶつかり合う様を映し出す。共演は「スウィンダラーズ」のペ・ソンウ、「王宮の夜鬼」のチョン・マンシク。
  • 映画・音楽ジャーナリスト

    宇野維正

    タランティーノ以降、日本を含む世界中で量産されてきた群像クライムスリラーのマナーに基本的には則った作品。つまり、極めて90年代的な題材を極めて90年代的な手法で扱っているのだが、キム・テソンの引き締まった撮影と、ポン・ジュノ組出身ハン・ミヨンの巧みな編集に目を見張った。役者も主要キャラクター全員が適役を活き活き演じていて、特に薄幸の主婦を演じたシン・ヒョンビンに魅了された。キム・ヨンフン監督、これが長篇デビュー作というのだから驚く。

  • ライター

    石村加奈

    原作の世界観を体現したような、自分の人生を人に委ねず、最後の最後まで抗い続ける強気なヒロイン・ヨンヒをチョン・ドヨンが怪演。ヨンヒ以外の女性キャラクターたちも、原作以上にいきいきと描かれる。認知症を患った母親スンジャ(ユン・ヨジョン)が、中年になっても出来の悪い息子ジュンマン(ぺ・ソンウ)を慰めるシーンは圧巻だ。映画オリジナルのラストも面白い。果たしてジュンマンの良妻ヨンソン(チン・ギョン)は、いつも通り夫の待つ家に帰るのか? それとも……。

  • 映像ディレクター/映画監督

    佐々木誠

    大金を巡る複数の登場人物の迷走が同時進行で描かれるが、全てのキャラクターの行動が説明なく時系列バラバラで進むので(整理されていない初期タランティーノとでもいうべきか)話の糸口を?むまでに時間がかかる。テンポの良い編集で飽きることはなく、徐々にピースが埋まっていく展開は気持ち良いが、どの人物も魅力的なのに背景が掘り下げられておらず、その愛憎を巡る行動、関係性の破綻に疑問を抱いてしまい、“藁にもすがる”絶望感もイマイチ伝わってこないのが残念。

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