マリグナント 狂暴な悪夢の映画専門家レビュー一覧

マリグナント 狂暴な悪夢

「ソウ」「死霊館」シリーズのジェームズ・ワンが贈る完全オリジナルストーリーのホラー。漆黒の殺人鬼による“悪夢体験”に苛まれるマディソン。その夢の中の殺人が現実世界でも発生し、やがてマディソンは自分の秘められた過去に導かれていくが……。出演は「コンティニュー」「アナベル 死霊館の人形」のアナベル・ウォーリス。
  • 映画評論家

    上島春彦

    典型的なマッド・サイエンティスト映画の始まり方だが上手いこと裏切られる。監督が監督だから「死霊館」的展開かと思うとそれも裏切られ、この企画は様々なジャンル映画との戯れに眼目があると分かってくる。ネタバレ厳禁だが手塚治虫とブライアン・デ・パルマが狂喜するであろう映画。この程度は書いてもいいだろう。謎の怪人のぎくしゃくした動きが最大のポイントである。そして裏切られたと思っていた諸ジャンルに再帰する感覚も重要。形而上的ホラー映画の新境地と言えるな。

  • 映画執筆家

    児玉美月

    ジェームズ・ワン自身はダリオ・アルジェントやブライアン・デ・パルマの名を挙げているが、描かれているテーマでいえばジョージ・A・ロメロなどを最も強く想起させる。序盤あたりで正体不明の殺人鬼から逃げまどう主人公の女性の視点がふいに離れ、殺人鬼のPOVに移行するカメラはその後の展開をも示唆しており、驚きがある。古典的なホラー映画の様相を呈していた前半から、アクション映画さながらの後半への転調は観客を飽きさせないが、物語の核部分は厳重に隠すほどではない。

  • 映画監督

    宮崎大祐

    ヨーロッパのジャッロ映画をクラシック音楽だとすると、本作はオーストラリアのメタルバンドにカバーされてしまったクラシック音楽のようないたたまれなさがあり、恐らく続篇の制作は絶望的であろう。だが、まるで課金ゲームのCMのような安くてのっぺりとした画調と三文役者たちの限度を知らない芝居合戦、そして間が持たなくなると流れはじめる下品なインダストリアル・ノイズがある瞬間共鳴し、まったく新しい体感型ホラー・オペラを現前させている点は評価するべきだ。

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