ビースト(2019)の映画専門家レビュー一覧

ビースト(2019)

「ベストセラー」「さまよう刃」のイ・ジョンホが監督を務め、フランス映画の「あるいは裏切りという名の犬」をリメイク、韓国ノワールへと昇華させたクライム・サスペンス。かつて相棒だった二人の刑事。男たちは韓国中を震撼させた連続猟奇殺人犯を追っていた。事件解決のためなら手段を選ばないハンスと、冷静沈着なミンテは、警察組織の中で昇進をかけた熾烈な争いを繰り広げる。だが、二人の執念と野心が激突したとき、彼らの“正義”は思いもよらない破滅への引き金となり、自らの運命さえ標的にしてしまう。警察権力と裏社会、刑事と容疑者、約束と裏切りのすべてが絡み合い、物語は驚愕のフィナーレを迎える。「工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男」で青龍映画賞や大鐘賞など多数の主演男優賞に輝いた実力派俳優イ・ソンミンと、「ブリング・ミー・ホーム 尋ね人」「野球少女」に出演するカメレオン俳優ユ・ジェミョンが共演。「白頭山大噴火」など話題作に出演するチョン・ヘジン、「タイム・クライム」のチェ・ダニエルが脇を固める。
  • 米文学・文化研究

    冨塚亮平

    事件解決に向けた手がかりがほぼ外部の女性情報屋からもたらされることは、権力をめぐる男たちの争いの虚しさを強調する狙いがあったのだろうが、それ以上に捜査の過程からジャンル映画としての魅力を削ぐ結果になってはいないか。ハンスと出世を争うミンテがかつては相棒であったという設定もほぼ生かされていないため、なぜ不仲で偏屈な二人のいがみ合いを長々と見続けなければいけないのかという気分に。二人の因縁に感情移入できないせいで、終盤にもいまいちのめりこめず。

  • 日本未公開映画上映・配給団体Gucchi's Free School主宰

    降矢聡

    ヤンキー映画と見紛うほどに身体が暴力を介して入り乱れる、裏社会のアジトへ突入するシーンを筆頭に、抽象的な心理描写を斥けて、腕っぷしと人数という即物的な力に信を置いている作りがとても良い。警察と裏社会との結びつきや組織内での権力争いなどといった特段目新しいわけではない題材を、しかしきっちりと撮り上げる総合力の高さも感じられる。ただし、着実に事態が進行していく反面、後戻り不可能な決定的瞬間が捉えられていないことを指摘するのは少し野暮か。

  • 文筆業

    八幡橙

    あのフレンチノワールの名作を韓国でリメイク! 第一報に心躍った。義理と人情に篤く、仲間や家族の絆を重んじ、出世欲さえストレートに露わにする韓流独自の“熱さ”が、オリジナルのテーマにしっくり溶け込みそうに思えたからだ。多くは語らず余白で伝える大人の映画だった仏版とは、また違う手触りのノワールをきっと見せてくれるはず、と。実際、演出も演技も悪くない(特に「白頭山大噴火」と正反対のチョン・ヘジン!)のに、脚本の大胆すぎる改変が仇になったか……。無念。

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