偽りのないhappy endの映画専門家レビュー一覧

偽りのないhappy end

園子温監督作品の助監督を務め園監督に師事してきた松尾大輔が長編映画監督デビューを果たしたサスペンス。エイミは故郷の滋賀から突如東京に出てきた妹ユウと暮らし始めるが、ユウは行方不明になってしまう。同じく妹が失踪したヒヨリと共に犯人を捜し……。NHK連続テレビ小説『なつぞら』の鳴海唯と、マドンナのバックダンサーを務め「チワワちゃん」で女優デビューした仲万美が、いなくなって初めて妹について何も知らなかったことに気付き真相を追う姉たちを演じる。
  • 映画・音楽ジャーナリスト

    宇野維正

    キャラクターの造形を作り込んでから台詞やストーリーを紡ぐのではなく、冒頭の「夜の湖に浮かぶボートで向き合う姉妹」に象徴される撮りたい画や織り込みたい展開(東京で仕事をする20代女性が携帯電話を持っていないのはいくらなんでもエキセントリックすぎる)のために優先されたのであろう設定の数々がノイズとなって、物語に入り込めなかった。これまで映画出演経験の少ない女優たちはいずれも魅力的、撮影も綺麗で、構図、編集のセンスも悪くないのでもったいない。

  • 映画評論家

    北川れい子

    2組の若い姉妹が絡んでの行方不明事件に、自殺あり、殺人あり。何やらひと頃流行った火曜サスペンス並みの大仰な設定で、インディーズ映画としては異色である。これが長篇デビューという監督自身のオリジナル脚本。けれどもこの脚本に取り憑かれているらしい監督の演出が乱暴なほど強引で、人物たちの言動もその場限り。過去の因縁話も取って付けたよう。琵琶湖ロケも“火サス”的な扱いで、赤いボートが何度も登場するのも気になる。それにしても包丁持参で妹探しとは。

  • 映画文筆系フリーライター。退役映写技師

    千浦僚

    ちゃんとした映画は設定なり登場人物の振る舞いなりに妥当性というか、こうだったらこうなる、こうする、ということへの観る者が納得しうる水準があり、普通じゃないことを重ねられると観ることの困難が生じる。普通でなくてもいいがそれはどこかで作品内がそういう世界であることを納得させるか、明確な切り替えポイントをつくらねばならない。全員悪人ヤクザ映画とか全員変人の映画づくり映画とかは逆にやりやすいだろうが、その点本作は難しく、うまくない映画だった。

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