マッド・ハイジの映画専門家レビュー一覧

マッド・ハイジ

児童書『アルプスの少女ハイジ』をB級バイオレンス映画化。チーズ会社社長にしてスイス大統領のマイリは、自社以外のチーズを法律で禁止する。24歳に成長したハイジは、闇でチーズを売りさばいていた恋人ペーターを処刑され、自身も矯正施設に入れられる。出演は、英国出身で本作が長編映画デビューとなる、アリス・ルーシー、「厨房で逢いましょう」のマックス・ルドリンガー、「スターシップ・トゥルーパーズ」シリーズのキャスパー・ヴァン・ディーン、「パイレーツ・オブ・カリビアン ワールド・エンド」のデヴィッド・スコフィールド。ブリュッセル国際ファンタスティック映画祭観客賞、トリエステSFフェスティバル観客賞受賞。
  • 映画監督

    清原惟

    ハイジやチーズなど自国の誇りとされるものを貶めるような描写や明らかなナチスパロディなど、スイスでの反応は大丈夫なのかとソワソワしてしまう。コミカルであまりリアリティがないため、残虐な描写は思ったほど心を痛めず見ることができた。ただ、小汚い机で中年男性が一人、移民申請書に機械的に不認定スタンプを押すシーンは日本の入管法のことを思い出し暗い気持ちに。世界の最悪な出来事のチープなパロディとして、政治的な視点で観るといろいろ考えたりできそうだと思った。

  • 編集者、映画批評家

    高崎俊夫

    冒頭の独裁国家の党首による大虐殺。20年後、生き残ったヒロインはセックス三昧に耽る日々。なかなか牧歌的でキュートな出だしだ。ナチもの、女子収容所もの、功夫活劇etc、1970年代に隆盛を極めた、いかがわしいB級ジャンル映画を再構築せんとする作り手の心意気やよし。だが如何せん、全てはすでにタランティーノが踏破した試みの二番煎じという印象は否めない。いかに巧みに〈引用〉や〈オマージュ〉に耽っても、肝心の復讐譚が後半失速してしまい、心に響かないのはそのためだ。

  • 映画批評・編集

    渡部幻

    「アルプスの少女ハイジ」のエクスプロイテーション版を狙ったスイス映画だが、終始ニコリともせずに見ている自分に困った。アイデアはいいが、この手の本場たるアメリカ映画のフットワーク、リズム感に欠けて、役者の芝居も間が悪い。そうした要素が偶然の独自性を生むこともないし、刈り込んで短篇にすべき等々……しかしながら、このジャンルを楽しめるか否かは、客観的な評価を越える体質とセンスの問題である。単純に新作が並ぶ星取りでは数の比較を免れずフェアでないが、ぼくは★。

1 - 3件表示/全3件

今日は映画何の日?

注目記事