火だるま槐多よの映画専門家レビュー一覧
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文筆家
和泉萌香
激しく燃えて生き急ぐ、の言葉は魅力的だが、今では時代遅れか。夭折の異色作家の声に神経を浸食された男が作り出す音と、それに感応するサイキック若者集団というアイディアが面白い。今月号の別作品でも都会(東京)の街が描かれ、また演劇的要素も含まれているが、本作では若者たちのパフォーマンスや響き渡るノイズよりも、背景に横たわるビル群と夜景の巨大さが迫力を奪ってしまっているのが否めないかつ、現代的な若者たちとセリフが終始ちぐはぐな印象なのも拭えない。
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フランス文学者
谷昌親
村山槐多の人生が語られるわけではなく、槐多に魅せられた現代の若者たちを描いた作品だ。それぞれ超能力を有した彼らが、過去から響いてくる槐多の声を聞き取ったり、槐多作品にインスパイヤされて、どこかアングラ芝居ふうのパフォーマンスを披露するうちに、映画そのものも実験映画さながらにありきたりの劇映画の枠組みからはみだしていく。終盤にはフィルムを燃やすショットもあり、映画そのものの解体も辞さない意欲作だ。ただ、キノコ雲の映像はあらぬ誤解を招きかねない。
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映画評論家
吉田広明
欲というものに対して抑制的であるべき僧の、放恣な、しかも全裸の放尿。そこには確かに「無限に渇したインポテンツ」=槐多の、抑圧と欲望の葛藤が感じられる。その不能感は槐多の場合、思春期にして童貞(事実は知らないがそう思うと腑に落ちる)ゆえと解しうるが、本作の場合抑圧するものの正体が組織というだけで不詳。槐多の世界を表現するいまいちなパフォーマンスよりは、人を「普通」にする組織の正体や、その抑圧を破壊するすべを模索する方に重心を置いてもらいたかった。
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