脱・東京芸人の映画専門家レビュー一覧

脱・東京芸人

    地方創生を目的にした吉本興業の『あなたの街に住みますプロジェクト』の一環で、山形県に移住したお笑いコンビ『ソラシド』の本坊元児に密着したドキュメンタリー。コロナ禍をきっかけに農業を始めた本坊が、お笑いと農業に向き合って生きる姿を追っていく。吉本興業が取り組む『住みます芸人』と『地域発信型映画』による企画。本坊は2022年に書籍『脱・東京芸人~都会を捨てて見えてきたもの』を発表している。監督は、TVディレクターとして『吉本超合金』や『吉本新喜劇』などを手がけ、2018年に吉本興業エリア社員として山形県に赴任した安達澄子。2023年島ぜんぶでおーきな祭 - 第15回沖縄国際映画祭上映作品。2023年12月15日よりムービーオン山形、鶴岡まちなかキネマにて先行公開。
    • 文筆家

      和泉萌香

      「どれだけお金をもらっても面白くない」アルバイト生活をやめ、芸人としてお仕事を、と山形の地へ。コロナウイルスから屋根裏への珍客といった大小様々なハプニングにくわえ、救いの神があらわれるといったドラマもあるも、終始淡々とした主人公、ソラシド本坊さんのキャラクターの魅力と、実体験に裏打ちされた言葉が抑制的でいて、映画をクールに引っ張り上げている。人間の肩書きとは何か? それは生きていくこととイコールか。浮かびあがる問答をも“エモい”では終わらせない。

    • フランス文学者

      谷昌親

      山形に移住した芸人が、素人でありながら農業に挑戦し、数種類の作物を育て、収穫し、販売していく過程を追ったドキュメンタリーで、そうした題材自体は興味深い。しかし、ドキュメンタリー映画ならではの、題材に切り込むといった覚悟もなければ、撮影者と被写体のあいだに生じるはずの一種の葛藤のかけらもここにはない。芸人を題材にした吉本興業の作品だからだと言ってしまえばそれまでだが、ハプニングも含めてすべては予定調和的に展開していき、弛緩した時間が流れるばかりだ。

    • 映画評論家

      吉田広明

      「山形住みます芸人」が農業してその試行錯誤を追う。野菜育てのノウハウ、成功や失敗など見ていて面白くないわけではないが、芸人だから撮ってくれるとはいえ、これを本職は日々やっている。YouTubeの「やってみた動画」みたいなものではないのか(知らんけど)。それを百分劇場で見せることに対し、さしたる戦略があるように見えない。地方、農業という選択も、芸人のリサイクル目的であり、地方活性化や農業に対する強い関心も主張もあるようではない。カメラの喋り、介入も五月蠅い。

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