青春ジャック  止められるか、俺たちを2の映画専門家レビュー一覧

青春ジャック  止められるか、俺たちを2

1969年を舞台に若松孝二監督が設立した若松プロダクションを描いた青春群像劇「止められるか、俺たちを」の続編。1980年代、ビデオが普及し始め映画館から人が遠のきだす中、それに逆行するように若松孝二は名古屋にシネマスコーレというミニシアターを作る。熱くなることが恰好悪いと思われていた1980年代を背景に、映画と映画館に吸い寄せられた若者たちの青春を描く。若松孝二監督に師事し、若松プロダクションにて助監督を務め、「戦争と一人の女」やドキュメンタリー「誰がために憲法はある」などを監督、「男たちの大和」「止められるか、俺たちを」など数々の作品の脚本を手がけてきた井上淳一が、本作の企画・脚本・監督を務める。若松孝二を前作から引き続き井浦新が、シネマスコーレの支配人に据えられる木全純治を「天上の花」の東出昌大が演じる。
  • ライター、編集

    岡本敦史

    前作とは比べものにならないくらい面白かった。そりゃあ井上監督自身の青春時代を描いてもいるのだから、記憶も鮮明で生き生きとしているし、実在の人物描写にも遠慮がない。何より半分コメディであるところが楽しく、それぞれに苦い現実と格闘する人々の悲哀を引き立たせてもいる。若松孝二監督の「微妙な時期」を伝えるドラマも興味深く、シネマスコーレ誕生記としても貴重。井浦新扮する若松監督はもはや寅さんのようで、いくらでもシリーズ化可能だ。次はぜひ90年代篇を!

  • 映画評論家

    北川れい子

    正直に言えば、ここで描かれているあれこれの実話は、わざわざ映画にするまでもない極私的な回想録である。いったい誰が監督/脚本・井上淳一の若き日の葛藤を知りたい? 誰が名古屋のミニシアター支配人の人生を覗いてみたい? そして人騒がせな仕掛人、若松孝二監督のこととか。いくら80年代という時代がポイントだとはいえ、しょせん“映画”という井の中に足を掬われた蛙たちが飛んだり跳ねたりしているに過ぎない。と思いつつ、この作品の一途さに嫉妬を感じ、どうしたアタシ。

  • 映画評論家

    吉田伊知郎

    若松孝二が映画館を作り、支配人と共闘するシネマスコーレ・パラダイスが観たいのであって井上淳一の自伝が観たいわけではない。終盤も蛇足でしかない。井上監督も承知だろう。だが、それでも自らを劇中に投入することでしか映画にならないと見極めたことが出色の青春映画を生んだ。若き日の自身を醒めた目で描く筆致は若松や映画との距離を描く際にも発揮される。小さな映画だが、シネマスコーレを活用し、井浦&東出、杉田&芋生が大きな存在感を見せることで豊かな広がりを見せる。

1 - 3件表示/全3件