豊田利晃 トヨダトシアキ

  • 出身地:大阪府東大阪市
  • 生年月日:1969/03/10

略歴 / Brief history

【波乱万丈の映画人生を生き抜くアウトロー】大阪府東大阪市の生まれ。9歳から17歳まで新進棋士奨励会に所属。阪本順治の「どついたるねん」(89)に魅せられ、イメージフォーラムに通うため21歳で上京するが、ライター活動を経て、荒戸源次郎事務所に所属することとなった。自身の体験をもとにした阪本監督「王手」(91)の脚本で映画界にデビュー。その後、阪本の「ビリケン」(96)の脚本を執筆したほか、演劇台本や劇画原作なども手がける。1998年、ライター時代から親交の深い千原浩史を主演に抜擢した「ポルノスター」で監督デビューを果たし、日本映画監督協会新人賞ほかを受賞して注目を浴びる。01年、一度も勝てずに引退したボクサーなど4人の格闘家たちの5年間に迫ったドキュメンタリー「アンチェイン」も、各国の映画祭で評判を呼ぶ。02年、松本大洋の人気漫画を映画化した「青い春」は、若者に潜むやり場のない苛立ちや暴力性を巧みに描き、ミニシアターとしては異例のヒットを記録。続けて松田龍平を主演に、年代も生い立ちもバラバラな9人の脱獄囚たちが行き場所を求めてさすらう姿を丹念に追う「ナイン・ソウルズ」(03)では、これまで描いてきた表裏一体の生死の境を踏み越えて現状を打破しようとする人間を、“脱走”という題材に集約させた集大成として高く評価された。続く05年、角田光代の同名小説の映画化に挑んだ「空中庭園」では、“家族”という幻想にすがりつく主婦を主人公に新境地を開く。しかし、公開直前に豊田は覚醒剤取締法違反の罪で起訴され、上映規模を縮小して公開、自身も監督活動の休止を余儀なくされた。09年、地獄から這い上がり蘇る主人公に自らを重ね合わせたかのような「蘇りの血」でカムバックを果たしている。【新境地を迎えての事件、そして復活】鮮烈なバイオレンス描写に漂うユーモアセンスは、異色の経歴をもつ豊田が映画界入りするきっかけとなった阪本順治にも共通するが、初期の阪本がホームタウンの大阪を舞台に撮り続けてきたのに対し、大阪を背負い込むカミソリのような千原浩史を渋谷に解き放ったデビュー作「ポルノスター」の頃から両者の志向には違いが見られる。“異端”としての内省的な孤立感、閉塞感からの脱出、その後の再生が、強く志されるのである。豊田自身“青春3部作”と位置づける「ポルノスター」「青い春」「ナイン・ソウルズ」を経て、初の女性映画「空中庭園」で新展開を見せ、正にこれからという時期での逮捕劇は、日本映画界に少なからぬ衝撃を与えた。4年ぶりの復帰作「蘇りの血」は“死と再生”という一貫して探求し続けてきたテーマを、『小栗判官』の説話をモチーフに描いた意欲作であるが、音楽活動にも精力的な豊田の、映像による音楽の表現を模索した実験映画の趣も強い。

豊田利晃の関連作品 / Related Work

作品情報を見る

  • 戦慄せしめよ

      制作年: 2021
      関西を拠点に活動する現代音楽家・日野浩志郎と、創立40周年を迎えた太鼓芸能集団・鼓童による楽曲群を「泣き虫しょったんの奇跡」の豊田利晃監督が全編佐渡島で撮影、映像化。日本の原風景をとどめる佐渡島の歴史と神秘を紐解く、セリフを一切排除した音楽劇。「ナイン・ソウルズ」「狼煙が呼ぶ」など豊田組の盟友である俳優・渋川清彦も参加。
    • 全員切腹

      制作年: 2021
      「泣き虫しょったんの奇跡」の豊田利晃監督が「狼煙が呼ぶ」「破壊の日」に続き自ら企画・プロデュースした、「沈黙 -サイレンス-」の窪塚陽介主演の短編時代劇。明治初期。井戸に毒を撒いて疫病を広めたとして、ある流れ者の浪人が切腹を命じられるが……。流れ者の浪人を窪塚陽介が、介錯人を「狼煙が呼ぶ」「破壊の日」にも出演した渋川清彦が、女郎を「ソワレ」の芋生悠が演じる。また、音楽を和楽器集団『切腹ピストルズ』、DJ・コンポーザーのMars89、太鼓芸能集団 鼓童の中込健太と住吉佑太が担当。
    • 演者

      制作年: 2020
      2020年に解散した劇団前方公演墳の劇団員・小野寺隆一が作・演出した短編を基に映画化。昭和20年春、戦地に男たちを奪われた嶋田家に嫁いだ義理の姉妹。長男の嫁・智恵は幼い子供のように振る舞うが、次男の嫁・陽子はそれを演じているのではないかと疑っていた。出演は、元劇団前方公演墳の藤井菜魚子、河原幸子、広田あきほ。
    • プラネティスト(2020)

        制作年: 2020
        「泣き虫しょったんの奇跡」の豊田利晃が4年に渡り撮影した小笠原諸島のドキュメンタリーの再編集版。小笠原に魅了された豊田がレジェンドサーファーの宮川典継と出会い、映画制作に着手。原初の地球の風景のなかでアーティストたちのセッションをとらえる。出演は、「沈黙 サイレンス」の窪塚洋介、「半世界」の渋川清彦。ナレーションは、「食べる女」の小泉今日子。
      • 破壊の日

        制作年: 2020
        豊田利晃がクラウドファンディングを利用して製作した作品。ある炭鉱で正体不明の怪物が見つかってから7年。やがて村で疫病の噂が広がり、心を病む者が増えていく。そんな中、修験道者の賢一は、この世を救う究極の修行・即神仏に挑むことを決意するが……。出演は「酔うと化け物になる父がつらい」の渋川清彦、バンド“GEZAN”のヴォーカリストとして活躍し、これが映画初出演となるマヒトゥ・ザ・ピーポー、「漫画誕生」のイッセー尾形、「影裏」の松田龍平。

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