滝田洋二郎 タキタヨウジロウ

  • 出身地:富山県西砺波郡福岡町
  • 生年月日:1955/12/04

略歴 / Brief history

【シリアス、コメディ両面で才能が光るピンク出身の気鋭】富山県西砺波郡生まれ。県立高岡商業高校を卒業後に上京し、20歳の時に知人の紹介で向井寛が主宰する獅子プロダクションに入社。ピンク映画の助監督として向井のほか山本晋也、稲尾実、梅沢薫らについたのち、1981年、獅子プロ製作の「痴漢女教師」で監督デビューする。以後、新東宝の看板コメディ「痴漢電車」シリーズを中心にピンク映画を多数演出。滝田の「痴漢電車」は、満州の張作霖爆殺事件がモチーフの「下着検札」(84)、グリコ・森永事件を扱った「聖子のお尻」(85)、写真週刊誌ブームを皮肉った「あと奥まで1cm」(85)など奇想天外な着想のミステリーコメディが大半を占め、ピンク映画ファンの度肝を抜いた。一方、83年の「連続暴姦」、84年の「真昼の切り裂き魔」は一転してシリアスタッチのサスペンスで、この2作によりピンク映画の祭典・ズームアップ映画祭の作品賞と監督賞を連続受賞している。85年に獅子プロを退社。この頃すでにピンク映画界の新鋭・滝田の名は広く映画ファンの注目を集めていたが、それが決定的となったのが初の一般映画進出となった「コミック雑誌なんかいらない!」(86)である。内田裕也扮する芸能レポーターを主人公に、1985年の事件・事故や世相を大胆に物語に取り込んで、時代を鋭く斬った問題作。ピンク時代に培ったシリアス、コメディ両面の才能をここで一気に開花させ、それは滝田がこの後、一般映画を次々と連作していく過程においても常に発揮されていった。【米アカデミー賞受賞の快挙】88年には、お金がテーマのシニカルなコメディ「木村家の人びと」が単館系でスマッシュヒットとなった。以後もこの時の脚本家・一色伸幸と組んで、「病院へ行こう」2部作(90~92)、「僕らはみんな生きている」(93)、「熱帯楽園倶楽部」(94)と快作コメディを連発。大沢在昌原作のサスペンス「眠らない街・新宿鮫」(93)や東野圭吾原作の「秘密」(99)、平安の京が舞台のVFXアクション「陰陽師」(01)「陰陽師II」(03)、急逝した相米慎二の企画を引き継いだ時代劇「壬生義士伝」(03)など様々なジャンルの作品で堅実な手腕をふるい続けている。さらにその評価は08年、納棺師という職業にスポットを当てたヒューマンドラマ「おくりびと」で頂点に達した。国内でもすでに各映画賞を総なめにしてロングランヒットとなっていたが、年が明けた2009年になって、米アカデミー賞の外国語映画賞を見事受賞。滝田は一躍時の人となり、その演出手腕が改めて注目を集めている。

滝田洋二郎の関連作品 / Related Work

作品情報を見る

  • 北の桜守

    制作年: 2018
    「北の零年」「北のカナリアたち」に続く吉永小百合主演の“北の三部作”最終章。息子二人を連れて戦争から逃れ網走で過酷な状況の中生き抜いたてつ。1971年、次男の修二郎は戦禍によるPTSDに悩む母と思い出の地を辿るうちに、禁断の記憶に行きつく。監督は「おくりびと」「ラストレシピ ~麒麟の舌の記憶~」の滝田洋二郎。母てつを演じる吉永小百合や成人した修二郎役の堺雅人ら俳優陣とともに、貧しさや飢えに苦しみながら極寒の北海道で懸命に生きる母子のドラマを撮る。また、てつの心象風景を劇団ナイロン100℃の主宰ケラリーノ・サンドロヴィッチが演劇的に表現している。
    50
  • ラストレシピ 麒麟の舌の記憶

    制作年: 2017
    田中経一の同名小説を「おくりびと」の滝田洋二郎監督が「母と暮せば」の二宮和也主演で映画化。絶対味覚を持つ料理人・佐々木充は、歴史の闇に消えた究極メニューの復元に挑む。一方、1930年代、そのレシピ作成に人生を捧げたのは天皇の料理番・山形であった。共演は「武曲 MUKOKU」の綾野剛、「沈黙 サイレンス」の笈田ヨシ、「クリーピー 偽りの殺人」の西島秀俊、「怒り」の宮﨑あおい、「PとJK」の西畑大吾、「シン・ゴジラ」の竹野内豊。脚本は「永遠の0」の林民夫。音楽を「3月のライオン」の菅野祐悟が担当する。
    70
  • 天地明察

    制作年: 2012
    「おくりびと」で第81回アカデミー賞外国語映画賞を獲得した滝田洋二郎監督が、第31回吉川英治文学新人賞および第7回本屋大賞を受賞した冲方丁による同名ベストセラー小説(角川書店刊)を映画化。江戸時代前期に星の観測をもとに膨大な計算をし、改暦の大事業に挑戦した安井算哲(後の渋川春海)の姿を描いた時代劇。脚本は滝田洋二郎監督と「クライマーズ・ハイ」の加藤正人。出演は「花よりもなほ」の岡田准一、「ツレがうつになりまして。」の宮崎あおい、「麒麟の翼~劇場版・新参者~」の中井貴一、「十三人の刺客」の松本幸四郎ほか。作曲家の久石譲が「おくりびと」に続いて再び滝田監督とタッグを組み音楽を担当している。
    70
  • 釣りキチ三平

    制作年: 2009
    「少年マガジン」で連載され、80年代にはテレビアニメ化もされた矢口高雄の伝説的な人気コミックをCGを駆使して実写映画化。原作の舞台である秋田でロケーション撮影が行われ、魚などのCGを「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズの白組が担当している。 釣りの天才である三平三平を「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズの須賀健太、三平の姉の愛子を香椎由宇、アメリカで活躍するバスプロの鮎川魚紳を塚本高史が演じている。脚本は「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズや「キサラギ」の古沢良太、監督は「おくりびと」でアカデミー賞外国語映画賞を受賞した滝田洋二郎。講談社「少年マガジン」創刊50周年記念作品として製作された。
    70
  • おくりびと

    制作年: 2008
    死者の遺体を棺に納める【納棺師】の職に就いた男が、仕事を通じ、様々な死に向き合いそこに息づく愛の姿と向き合う姿を描いたヒューマン・ドラマ。第32回モントリオール世界映画祭でグランプリを受賞するなど、世界的にも高い評価を得る。「シコふんじゃった。」の本木雅弘と、「秘密」の広末涼子が夫婦役を演じる。他出演者に山崎努、余貴美子、吉行和子など。監督は、「バッテリー」「秘密」の滝田洋二郎。
    92
  • バッテリー

    制作年: 2006
    少年野球を通じて友情と兄弟の絆を描き、累計380万部を突破したベストセラー小説を、「誘拐」「13階段」の森下直が脚色して「木村家の人々」「陰陽師」の滝田洋二郎が監督。自信にあふれる孤高の中学生ピッチャーの原田巧役には、3000人のオーディションを勝ち抜いた新人・林遺都が演じる。その同級生のヒロイン矢島繭は、2005年“ミス・フェニックス”でグランプリを受賞した蓮佛美沙子。