悪魔祓い、聖なる儀式の映画専門家レビュー一覧

悪魔祓い、聖なる儀式

    1973年の大ヒット映画「エクソシスト」でも知られる悪魔祓い師の実態に迫るドキュメンタリー。イタリア・シチリア島のカタルド神父に密着。これまで閉ざされてきた1200年も続く聖なる儀式の現場に潜入し、人間と悪魔の臨場感溢れるせめぎ合いをカメラが捉える。監督は、イタリア出身の新鋭ドキュメンタリー作家、フェデリカ・ディ・ジャコモ。本作で第73回ヴェネチア国際映画祭オリゾンティ部門最優秀作品賞を受賞。ナレーションを一切排し、独特のユーモアを交えながら、撮影対象の真の姿を浮かび上がらせてゆく。
    • 映像演出、映画評論

      荻野洋一

      とにかく目の付けどころがいい。「エクソシストって実在するの?」と誰もが吃驚するだろう。ヴァチカンが公式的に悪魔祓い養成講座を主催するシーンまで出てくる。シチリア島のカタルド神父のもとに助けを求める患者たちは、本当にオカルト映画の登場人物に見える。ある日、回復した患者が一家で神父にお礼参りに来る。うれしそうな神父「きょうもミサに出席していくね」「もちろん」。しかし少女はみるみるうちに声色が変化し、悪辣な態度を見せ、結局ミサに出ないまま教会を出てしまう。

    • 脚本家

      北里宇一郎

      一応、ドキュメンタリーの体裁はとっていても、再現ドラマみたいな場面もあって。会話がちゃんとカット割りされていたりとか。真実に到達するためには、その手法も有りかとも思うのだが、これではちと中途半端。登場の悪魔憑き人間たちは、精神的ストレスの持ち主に見える。神父が執り行う悪魔祓いの儀式も、どこか一時の気休めに思える。人間の心の病、その闇の深さ。それに付き合わされる聖職者の溜息と憂鬱。何だかそんな皮肉な味わいしか感じられなくて。ホラーとは無縁の映画。

    • 映画ライター

      中西愛子

      フィクションとしてのものだと思っていたが、悪魔祓いは千年以上続き、現代にも存在しているという。イタリア、シチリアのそうした儀式の様子を映し出したドキュメンタリーだ。身に降りかかる問題を悪魔の仕業とし、激しく叱咤する神父を前に泣き叫ぶ人々。祓う方も、祓われる方も、どちらの姿も壮絶である。ナレーションを排したスタイルが効いている。ラストの世界各国からの神父たちの集いで映画の空気がガラッと変わりユニーク。現代社会を生きる人間の困難を改めて感じた。

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