デヴィッド・リンチ:アートライフの映画専門家レビュー一覧

デヴィッド・リンチ:アートライフ

「エレファントマン」「マルホランド・ドライブ」などで知られるデヴィッド・リンチ監督のドキュメンタリー。美術学生時代の退屈と憂鬱、悪夢のような街フィラデルフィアの暮らし、長編デビュー作「イレイザーヘッド」に至るまでを、リンチが自ら語りつくす。共同監督は、「リンチ1」のジョン・グエン、リック・バーンズ、「ヴィクトリア」脚本のオリヴィア・ネールガード=ホルム。2025年1月24日から「デヴィッド・リンチ追悼上映」として再上映される。
  • 批評家。音楽レーベルHEADZ主宰

    佐々木敦

    リンチ自身のナレーションが実に素晴らしい。あの声と語りの雰囲気は彼の映画そのものだ。あくまでもクリアで明快なのに、同時にどこか奇妙で謎めいている。「アートライフ」という言葉は一見とても普通だが、その意味するものは深い。これを観るとわかるのは、リンチを造ったのは環境でも経歴でもなく、持って生まれた天賦の感性であったということだ。それは一歩間違っていたら暗黒面に堕ちていたかもしれない天才である。「イレイザーヘッド」完成より以前の、若き芸術家の肖像。

  • 映画系文筆業

    奈々村久生

    リンチ本人の肉声や喋り方といったものに、今まで特に注目したことはなく、これといったイメージもなかったのだが、その発音の美しさとゆったりした優雅な語り口にすっかり耳を奪われてしまった。本作におけるリンチ像は声に属している。キャッチーなビジュアルは広く知られているところだが、キャンバスに向かうリンチの姿は職人のように厳かだ。彼の描く絵や実験映画的な映像も非常に刺激的で楽しめるのだが、個人的にこの映画の一番の魅力は、リンチの声に尽きると思う。

  • TVプロデューサー

    山口剛

    映画監督を取り上げたドキュメンタリー映画は最近多いが、この映画はそれらとは大きく異なる。作品の映像はない。出演者やスタッフも一切出てこない。作品の解説や裏話もない。絵の具を練り、粘土をこね不思議なタブローを黙々と作っている彼の姿にボイスオーヴァーがかかり、映画に関わる以前のアーティストを志す田舎町の青年の心情が語られる。リンチ映画の便利な入門ガイドとは言えないが、この全体像の捕らえにくい複雑な作家を理解する助けになることは間違いない。

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