ゴーストマスターの映画専門家レビュー一覧
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フリーライター
須永貴子
“壁ドンキラキラ映画”の撮影現場が残酷劇場に変貌するまでのテンポの良さと落差の付け方、最初の死体(死に方)にインパクトあり。血糊や死体、モンスターの特殊造形など、痛みや臭いを感じさせないスプラッター描写はキッチュ。ガラリと様相を変えるフィナーレで、現場のすべてを記録したカメラが投写する影像は、映画の魔力に人生を狂わされた人たちへのレクイエムとして響く。全篇を映画愛が貫く本作は、映画監督が人生で一本しか作ることができない“長篇第一作”にふさわしい。
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脚本家、プロデューサー、大阪芸術大学教授
山田耕大
中々の快作である。中々などというと、映画の歯切れよさが伝わらないが、他に表現がない。撮影中の恋愛コミック映画の主役少年が、突然悪鬼になる、その唐突さにまず胸がキュン。助監督がデビュー作として書いていた「ゴーストマスター」という脚本のゴーストマスターという悪霊が主役少年にとりつき、以降あれよあれよとホラーな展開になっていく。撮影現場が舞台だからという訳じゃないが、「ああ、映画!」なのである。映画の性感帯をくすぐりまくるのだ。来るべき達人の誕生だ。
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映画評論家
吉田広明
恋愛映画を撮っている現場がホラーに、という話だが、撮られている作品とされる恋愛もの映像が、予告篇にしか見えない。それをしっかり作りこんで伏線としていないため、作者たちの狙う「ツギハギ」、恋愛ものと思いきやホラー、ホラーかと思っていると恋愛ものとして落ち着く、という逆転の切れが薄れている。また、ゴーストと化した脚本がとり憑くのは俳優ではなくやはり監督であるべきで、彼がホラー愛ゆえに、映画をホラーに作り変える、という筋の方が分かりやすかったのでは。
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