もったいないキッチンの映画専門家レビュー一覧
もったいないキッチン
ドキュメンタリー映画「0円キッチン」監督でフードアクティビストのダーヴィド・グロスが、廃棄食材で料理を創作しながら日本を巡るロードムービー。リユース材で作ったオリジナル・キッチンカーで全国を旅しながら、持続可能な未来のためのアイデアを探る。
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フリーライター
須永貴子
「もったいない」をキーワードに、フードロスを解決するヒントを探る構成には、オリジナリティと多くの発見がある。監督&通訳コンビの取材旅行があまりにも段取り良くオーガナイズされていて、ドキュメンタリー映画というよりも、タレントが“エコをテーマに旅をする、日曜日の午後の旅番組”のよう。この「意識高い系」に響きそうな洗練が魅力なのかもしれないが、ある料理シーンで、スポンサー(クックパッド)を持ち上げるやりとりにゲンナリしたので★ひとつ減。もったいない。
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脚本家、プロデューサー、大阪芸術大学教授
山田耕大
新しいライフスタイルの提唱である。エコは、食物、命、自然、そしてその地その地に住む人々へのリスペクトから成り立っていることがよくわかる。それにしても日本にこれほどまでに食文化の多様性があることに驚く。野草を天ぷらにするおばあちゃん、こおろぎラーメンを供する昆虫食青年、廃棄食材で炊き出しをする西成のおっちゃん、ネギ坊主から取った出汁でご飯を炊く福島の料理人等々。イマジネーションの結晶である。日本がいい意味で変わるのはこういう人たちによってであろう。
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映画評論家
吉田広明
一年の消費量と同じ量の食品廃棄物を出す日本、その中で、もったいない精神で新たな道を探っている人々を描く。それぞれ個性的で、その意識改革には賛同するのだが、問題なのはコミュニティ像の転換なのではないかと思えてくる。近代資本主義の分業化が進み、中間業者の介在で肥大化したコミュニティを、より密接な中小規模コミュニティに再編してゆくこと。個々人の個性を捉えたことは美点なのだが、個人に還元しすぎで、本来持ちえたより広い射程を捉え損ねているようにも思う。
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