ブレスレス(2019)の映画専門家レビュー一覧

ブレスレス(2019)

第72回(2019年)カンヌ国際映画祭監督週間で上映され注目を浴びた、フィンランド発の衝撃作。妻を不慮の事故で失い、喪失感を抱えながら毎日を送る外科医のユハ。ある日、ふと迷い込んだSMクラブで、喉を締められ生死をさまようユハは、死の間際の妻の姿を見る。出演は「トム・オブ・フィンランド」のペッカ・ストラング、『ラストウォー1944 独ソ・フィンランド戦線』のクリスタ・コソネン。監督・脚本は『2人だけの世界』のユッカペッカ・ヴァルケアパー。
  • 非建築家、美術家、映画評論、ドラァグクイーン、アーティスト

    ヴィヴィアン佐藤

    「時間」と「代理」が何度も変奏される。溺れた妻の腕時計が外れた時間や娘の誕生日、昼寝のひととき、ガラス玉の落下の瞬間が永遠の宙吊りにされる。また陸に揚げられた魚はユハで、桟橋に並べられた花々は妻、誕生日に訪れる博物館はピアッシングルームとなり、妻の代わりにミストレス・モナが充てがわれる。「代理」によって人々は一時の安息を得ようとするが、現実の欠落は充足されない。物事が「代理」ではない「唯一無二」の存在になったとき、「愛」は完成するのだろうか。

  • フリーライター

    藤木TDC

    妻が早世し、娘のため貞潔を貫く昨今トレンドの父親像。その父がSMクラブにハマり見失った自己を取り戻す。風俗産業セラピーはロマンポルノなど日本映画によくあるモチーフで、そこに娘の視点を加えてホームドラマ化を試みた挑戦的企画だ。しかも拷問ホラー的演出まであり、観客は途方に暮れそう。ハッピーエンドにするため父と女王様の関係を無理矢理成就させてるが、バイトなのにつきまとわれて女王様も本音は迷惑だろう。気どった映像とボンデージ趣味が90年代風で古くさい。

  • 映画評論家

    真魚八重子

    導入部は一秒一秒に集中力があり、魅惑的な焦点を持った映像と時間の過ぎ方に期待を抱いた。女の登場の仕方は怪物めいていて、主人公と不思議な通じ合いが生まれるのも、男女の出会いとしてセンシブルだ。しかし関係がSMに集約してしまうと矮小に感じてしまう。男が求めている意識を失うための窒息プレイにマゾヒズムは無関係に見えるが、その辺りがいささかはっきりしない。女王様にしては揺れ動く情動や戸惑いの理由、父と娘の関係の変化など、放置された逸話が気になる。

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