標的の映画専門家レビュー一覧

標的

    1991年に元慰安婦の証言を記事にした元朝日新聞記者・植村隆が、23年後に「捏造記者」などと汚名を着せられ、本人のみならず家族までもが理不尽なバッシングにさらされたことに抗い、その支援者たちと共に真正面から立ち向かう姿を記録したドキュメンタリー。監督は記録作家・林えいだいの姿を追った映画「抗(あらが)い」で平和・協同ジャーナリスト基金賞大賞を受賞した元RKB毎日放送(福岡)ディレクターの西嶋真司。第 64 回日本ジャーナリスト会議賞(JCJ 賞)受賞。第 26 回釜山国際映画祭正式招待作品(ワイドアングル部門ドキュメンタリーショーケース)。
    • 映画・音楽ジャーナリスト

      宇野維正

      朝日新聞を過剰に敵視するメディアや、安倍晋三や櫻井よしこといった卑しい政治家や言論人に「捏造」とされた記事が事実かどうかという点において、自分は製作サイドを支持する立場だ。しかし、本作が取り上げた事象をはじめとする数々の理不尽な消耗戦を経て、現状は左右のイデオロギーや「言論の自由」を超えた戦線にまで追い込まれている。安っぽい劇伴にのせて観客の良識や感傷に訴える本作のアプローチが有効な時期は、もうとっくに過ぎてしまったのではないだろうか。

    • 映画評論家

      北川れい子

      歴史と政治が絡んでいる韓国の元慰安婦問題は、各マスコミの報道や「ナヌムの家」「主戦場」などのドキュメンタリーで知るのがせいぜいなのだが、個人的には歴史上の真実に違いないと思っている。その慰安婦の記事を書いた植村隆氏が、これほど長期にわたり、理不尽な誹謗中傷を受けていたとは。いや、過去形ではない。現在も。カメラは植村氏側に寄り添う形で中傷側の責任を追及、目に見えない権力の存在もひしひし。ただこれはこちらの偏見だが氏の自己顕示的場面には興醒め。

    • 映画文筆系フリーライター

      千浦僚

      ネトウヨ、ヤバい。それは奴らを醸成した現代日本社会がヤバいということだが。植村氏への不特定多数からの脅迫の記録となる箇所を観ていてその犯人たちの動機となる「捏造」「誤報」へのこだわりに異様さを感じた。それで慰安婦の存在や植民地支配下での強制性を否定することができるわけでもないのに言葉尻を死守して歴史認識全体を歪ませていく。読売新聞、竹中明洋、『週刊文春』、西岡力、櫻井よしこその他と無名匿名のネトウヨが標的にし、傷つけたのは日本の未来。

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