ザ・ミソジニーの映画専門家レビュー一覧
ザ・ミソジニー
「霊的ボリシェヴィキ」の高橋洋が贈るホラー。女優で劇作家のナオミは、かつて自分の夫を奪った女優ミズキを山荘に呼び、芝居の稽古を始める。題材は、ある謎めいた母親殺しの事件だった。やがてミズキは、この屋敷が事件現場ではないかと疑い始める……。出演は「SYNCHRONIZER」の中原翔子、「truth ~姦しき弔いの果て~」の河野知美、「三大怪獣グルメ」の横井翔二郎。『カリテ・ファンタスティック!シネマコレクション2022』にて7月24日に上映。一般公開はシネマカリテにて2022年9月9日からロードショー。
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映画・音楽ジャーナリスト
宇野維正
ポストJホラーの可能性を、芸能行政などに目もくれず、衒学趣味的な政治性を散りばめながらインディペンデントに探求している近年の高橋洋による、傑作「霊的ボリシェヴィキ」に続く新作。まずその心意気だけでも喝采を送りたくなるのだが、今回も相当エクストリームな各キャラクターの設定、及び展開で、ラストシーンまで心地よく翻弄された。江戸川乱歩を思わせる洋館を舞台にした室内劇ということもあって映像的興奮には欠けるが、こんなストレンジな映画、世界のどこにもない。
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映画評論家
北川れい子
一瞬、女性の敵は女性、娘の仇は母親、という、女性たちのリアルな地獄堕ちホラーかと思ったが、どうも違うようで、得体の知れない霊的なものまで登場、いまいち消化しきれないもどかしさが残る。とはいえ深い森に囲まれた山荘を舞台に、鏡や写真を効果的に使ったゴシックホラーふうな進行は、なにごとか、と思わせる不穏なイメージがあり、主役の女優2人の攻撃的な演技もかなり不気味。心理的な密室劇のようでもあり、劇中劇か妄想のようでもあり。衣裳と音楽も凝っている。
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映画文筆系フリーライター。退役映写技師
千浦僚
本作はオカルトミステリー+思想・歴史観ゴアホラーとでもいうものだが、それ以上にさまざまなものも描かれておりもはや新ジャンルの映画。「リング」の謎解き役を父親から母親に変更したのが高橋洋氏の脚色上の大発明だがそれを為しえた氏の女性存在への独特の感性が発展し極まったのが本作かと。ほぼ三人芝居の劇でダブル主演の中原翔子さん河野知美さんの迫力が凄いがそこについていく横井翔二郎氏が「悪魔の祭壇・血塗られた処女」のロバート・ブリストルのような佇まいで素敵。
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