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略歴 / Brief history
東京市麹町区(現・東京都千代田区)の生まれ。父は昭和初期に活躍した作家・吉行エイスケ、11歳上の兄が芥川賞作家の吉行淳之介、妹は詩人の吉行理恵。美容師だった母・あぐりは、のちにNHK連続テレビ小説『あぐり』97のモデルになった。女子学院高校卒業の1954年に、劇団民藝付属水品演劇研究所に入所。翌55年に初舞台を踏み、今井正監督「由紀子」にも端役で出る。56年、『アンネの日記』の主役に抜擢され大評判に。民藝で活躍しつつ、59年には日活と契約して、今村昌平監督「にあんちゃん」、中平康監督「才女気質」で毎日映画コンクール助演女優賞を受賞する。以降も浦山桐郎監督「キューポラのある街」62などで清潔感のある演技を見せ、山本薩夫監督「証人の椅子」65では検察と闘う実直な男の妻をみずみずしく演じて重い題材の清涼剤となる。69年に民藝退団後、唐十郎の『少女仮面』69、別役実の『マッチ売りの少女』71などの舞台に出演し、74年には紀伊國屋演劇賞個人賞を受賞。70年代は舞台中心だが、大島渚監督「愛の亡霊」78で、周囲の反対を押して大胆な性愛場面に挑み役柄を拡げる。三村晴彦監督「天城越え」83、中島丈博監督「帰郷」88など多彩な作品群に出演した80年代を経て、90年代は一人芝居『MITSUKO』を続けるなど再び演劇中心となるが、2002年の松井久子監督「折り梅」02ではアルツハイマーの女性を演じ、毎日映画コンクール田中絹代賞を受賞。近年も滝田洋二郎監督「おくりびと」08や、松井監督「レオニー」10などで年齢に応じた役を好演している。テレビドラマにも50年代から多数出演し、特にTBS『3年B組金八先生』79~11、『ふぞろいの林檎たち』83~97のレギュラーなどで知られる。機知に富んだ性格がトーク番組などでも親しまれる。
吉行和子の関連作品 / Related Work
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ココでのはなし
制作年: 20232021年オリンピック開催直後の東京で都会の喧騒に佇むゲストハウス“ココ”を舞台に、住み込みバイトの詩子と“ココ”に集う人々との愛おしい日々を綴ったヒューマンドラマ。ワルシャワ国際映画祭でのワールドプレミア上映を皮切りに、10以上の海外映画祭で上映された。主演は「猫は逃げた」「走れない人の走り方」「SUPER HAPPY FOREVER」「夜のまにまに」など公開作が続く山本奈衣瑠。脇を固めるのは、「家族はつらいよ」「誰かの花」などのベテラン吉行和子、『ちゅらさん』で俳優デビュー後、「DitO」で監督デビューも果たした結城貴史、「MONDAYS」「Cloud クラウド」など話題作への出演が続く三河悠冴、映像や舞台を中心に活躍の場を広げる生越千晴、多芸多才で愛されるモト冬樹など、世代を超えた演技人が集結。18歳から独学で映画制作の道に入った現在31歳の新鋭監督こささりょうまの長編デビュー作。 -
湯道
制作年: 2023「土竜の唄」の生田斗真主演、「おくりびと」の脚本を手がけた放送作家の小山薫堂が企画・脚本を担ったコメディドラマ。父が遺した銭湯を畳みマンションに建て替えようとして店に戻った史朗だったが、入院した弟に代わり数日間銭湯を切り盛りすることになる。湯道とは、小山薫堂が提唱した、入浴の価値を改めて見出し、茶道や華道のようにひとつの道へと昇華させようというもの。監督は、『HERO』シリーズや「マスカレード」シリーズを手がけてきた鈴木雅之。うだつが上がらず実家に戻ってきた兄・史朗を生田斗真が、銭湯まるきん温泉を営む弟の悟朗を濱田岳が、まるきん温泉で働くいづみを橋本環奈が演じる。75点 -
世の中にたえて桜のなかりせば
制作年: 2021乃木坂46で活躍する17歳の岩本蓮加と、2022年で芸能生活68年を迎える宝田明がW主演。70歳の年の差コンビが“終活アドバイザー”として、さまざまな境遇の人たちの終活を手伝うヒューマンドラマ。宝田明は自らエグゼクティブプロデューサーも務めた。不登校の女子高生が「終活」という仕事を通して、多様な人生に触れながら自身の成長につなげていくという難しい役どころを、今年3月に高校卒業を控える岩本蓮加が等身大の姿で演じきった。余命幾ばくもない宝田の妻役は、「燦燦 ~さんさん~」(13年)などで宝田と共演歴のある吉行和子。監督は長編作品「Lost & Found」が2008オースティン映画祭にてグランプリ受賞、2017年の短編作品「サイレン」も国内外の映画祭で高い評価を得た三宅伸行。 -
誰かの花
制作年: 2021横浜黄金町の老舗の映画館、シネマ・ジャック&ベティの30周年記念映画。「世界を変えなかった不確かな罪」で注目された横浜出身の奥田裕介監督の長篇第2作目。嵐の日に団地のベランダから落ちた植木鉢をめぐって、家族や周囲の者たちの疑念と葛藤が渦巻いていく。鉄鋼所で働く主人公の孝秋に「ケンとカズ」「ONODA 一万夜を越えて」のカトウシンスケ。その両親役に吉行和子と高橋長英の大ベテランを配し、脚本から密なディスカッションが行われた。ある悲劇が「善意」から始まったら、その先に救いはあるのか。老親の介護や認知症、集合住宅の人間模様を縦糸に、被害者/加害者の救済問題を横糸に編まれた人間ドラマ。第34回東京国際映画祭「アジアの未来」部門正式出品作品。 -
浜の朝日の嘘つきどもと
制作年: 2021タナダユキ監督が、福島県南相馬に実在する映画館「朝日座」を舞台に、映画に人生を救われた女性が、映画を教えてくれた恩師との約束を果たすために、支配人や町の人々を巻き込みながら映画館を守ろうと奮闘する姿を描く。福島中央テレビ開局50周年記念作品。主人公の浜野あさひ/茂木莉子(もぎりこ)を演じるのは高畑充希、恩師の田中茉莉子役にバラエティで活躍する大久保佳代子、朝日座の支配人・森田保造に落語家の柳家喬太郎と異色の顔合わせが実現。丁々発止の会話が小気味よく展開する。茂木莉子と森田の掛け合いに、「キッズ・リターン」(96年/北野武監督)を彷彿とさせる「バカヤロー!まだ始まっちゃいねーよ」というセリフが出てきたり、教師の田中が失恋するたびに、「喜劇 女の泣きどころ」(75年/瀬川昌治監督)を見ていたり、映画好きにはたまらない仕掛けが随所にちりばめられている。大震災・福島の原発事故から10年、映画館を取り巻く状況はコロナ禍でさらに厳しさを増すなか、エンターテイメント文化へのエールが込められた作品が誕生した。なお、本作は福島中央テレビ50周年記念ドラマ『浜の朝日の嘘つきどもと』の前日譚ともなっており、ドラマに出演していた竹原ピストル、六平直政、吉行和子なども出演している。20点