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名優ジャンヌ・モローが監督した3作を公開〈映画作家 ジャンヌ・モロー〉
2024年8月7日フランスを代表する女優ジャンヌ・モロー(1928-2017)。その監督作を特集する〈映画作家 ジャンヌ・モロー〉が、10月11日(金)より新宿シネマカリテ、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国で順次開催される。上映作は「リュミエール」(1976/日本劇場初公開)、「思春期」(1979)、「リリアン・ギッシュの肖像」(1983/日本劇場初公開)の3本。ビジュアルが到着した。 オーソン・ウェルズ、フランソワ・トリュフォー、ルイ・マル、ルイス・ブニュエルら巨匠・名匠による名作の数々に出演してきたモロー。映画への情熱と好奇心は、監督としても発揮された。 40代で初監督を務めたモローの映画には、「私は女たちを称賛している。ありのままの姿を彼女たちに示そうと思った。男たちが示す形ではなく」という言葉通り、さまざまな年代の女性たちの率直な言葉や姿が映し出される。 監督デビュー作の「リュミエール」は、女優4人を主人公に映画業界を内部から描く作品で、モロー自身の半生を彷彿させる。女優の一人であるサラをモローが演じ、ドイツの名優ブルーノ・ガンツも出演、音楽はタンゴを革新した作曲家アストル・ピアソラが手掛けている。 [caption id="attachment_40581" align="aligncenter" width="850"] 「リュミエール」 LUMIÈRE © 1976 FONDS JEANNE MOREAU POUR LE THÉÂTRE, LE CINÉMA ET L’ENFANCE. TOUS DROITS RÉSERVÉS[/caption] 「思春期」は戦争の足音が迫る1939年の夏、少女マリーの忘れられない夏休みを丹精込めて紡いだ名作。大女優シモーヌ・シニョレが孫を優しく見守る祖母を演じている。日本では1986年に「ジャンヌ・モローの思春期」のタイトルで劇場公開された。 [caption id="attachment_40582" align="aligncenter" width="850"] 「思春期」 L’ADOLESCENTE © 1979 FONDS JEANNE MOREAU POUR LE THÉÂTRE, LE CINÉMA ET L’ENFANCE. TOUS DROITS RÉSERVÉS[/caption] 「リリアン・ギッシュの肖像」は、サイレント時代から活躍する伝説的女優リリアン・ギッシュに迫ったドキュメンタリー。ギッシュとの対話から浮かび上がる映画の歴史、そして好奇心に満ちた人生に胸が熱くなる。 [caption id="attachment_40584" align="aligncenter" width="850"] 「リリアン・ギッシュの肖像」 LILLIAN GISH © 1983 FONDS JEANNE MOREAU POUR LE THÉÂTRE, LE CINÉMA ET L’ENFANCE. TOUS DROITS RÉSERVÉS[/caption] 映画史の陰に隠れていたモロー監督作、現代的視点で見返すべき時が来た。 [caption id="attachment_40587" align="aligncenter" width="850"] ジャンヌ・モロー © 1976-1979-1983 FONDS JEANNE MOREAU POUR LE THÉÂTRE, LE CINÉMA ET L’ENFANCE. TOUS DROITS RÉSERVÉS[/caption] 〈映画作家 ジャンヌ・モロー〉 提供:キングレコード 配給:エスパース・サロウ 宣伝:プンクテ 公式サイト:jeannemoreau.espace-sarou.com -
ハロウィンの夜、テレビ番組に悪魔が“生出演”──「悪魔と夜ふかし」
2024年8月6日ハロウィンの夜にテレビの生放送で起きた怪異を“ファウンド・フッテージ”スタイルで描いた衝撃ホラー「悪魔と夜ふかし」が、10月4日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国で順次公開。ポスタービジュアルと予告編が到着した。 1977年、ハロウィンの夜。低迷するテレビ番組『ナイト・オウルズ』の司会者ジャック・デルロイは、オカルト・ライブショーで人気回復を図る。スタジオでは霊聴、ポルターガイスト、悪魔祓いなどが次々と披露され、視聴率は過去最高に。だがクライマックスを迎えた時、思わぬ惨劇が起きる……。 監督はオーストラリアの鬼才コリン&キャメロン・ケアンズ兄弟。「エクソシスト」「キング・オブ・コメディ」など70〜80年代作品のオマージュを盛り込みつつ、新たな恐怖を創造した。愛嬌と狂気が同居する司会者ジャックを演じるのは、「ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結」のデヴィッド・ダストマルチャン。本作はホラーの帝王スティーヴン・キングをはじめとする著名人やメディアに称賛された。 https://www.youtube.com/watch?v=f9DsuTllLEM 予告編のナレーションは、ホラー映画好きを公言している声優のファイルーズあいが担当。少女リリーに乗り移って“生出演”した悪魔は、いかなる恐怖を巻き起こすのか、目が離せない。 「悪魔と夜ふかし」 監督・脚本・編集:コリン・ケアンズ、キャメロン・ケアンズ 出演:デヴィッド・ダストマルチャン、ローラ・ゴードン、フェイザル・バジ、イアン・ブリス、イングリット・トレリ、リース・アウテーリ オーストラリア/カラー/ビスタ/5.1ch/93分/PG-12 原題:LATE NIGHT WITH THE DEVIL 字幕翻訳:佐藤恵子 配給:ギャガ ©2023 FUTURE PICTURES & SPOOKY PICTURES ALL RIGHTS RESERVED -
山田尚子監督「きみの色」、劇中歌『水金地火木土天アーメン』のリリックビデオ公開
2024年8月5日「けいおん!」シリーズや「映画 聲の形」の山田尚子監督が、人が《色》で見える高校生・日暮トツ子を軸とした物語を紡ぎ、第49回アヌシー国際アニメーション映画祭長編コンペティション部門出品や第26回上海国際映画祭金爵賞アニメーション最優秀作品賞受賞を果たした「きみの色」が、8月30日(金)より全国公開される。劇中歌『水金地火木土天アーメン』のリリックビデオが到着した。 https://www.youtube.com/watch?v=NdQxlIQAyJE 同曲を制作した音楽監督の牛尾憲輔は、プロっぽくなりすぎず、高校生らしい素朴さや粗さが残るよう心掛けたという。山田監督も「本当に可愛らしいし、一回聴いただけで口ずさめる。トツ子のまっすぐな性格の明るさだったり、芯の強さがすごく面白く可愛らしく表現されている」と一瞬で虜に。 魅惑の楽曲とともに、カラフルな青春音楽ストーリーを楽しみたい。 Story 高校生のトツ子は、人が「色」で見える。嬉しい色、楽しい色、穏やかな色、そして自分の好きな色。そんなトツ子は、同じ学校に通っていた美しい色を放つ少女・きみと、街の片隅の古書店で出会った音楽好きの少年・ルイとバンドを組むことに。 学校に行かなくなったことを家族に打ち明けられないきみ。医者になることを母に期待され、隠れて音楽活動をするルイ。トツ子をはじめ、それぞれが人知れず悩みを抱えていた。 離島の古教会でバンド練習をする三人に、友情と仄かな恋のような感情が芽生える。 周りに合わせ過ぎたり、ひとりで傷ついたり、自分を偽ったり──。 やがて訪れる学園祭での初ライブ。観客の前で三人が見せた「色」とは。 ©2024「きみの色」製作委員会 配給:東宝 ▶︎ 山田尚子監督の《色》をめぐる青春物語「きみの色」。お笑い芸人やす子、悠木碧、寿美菜子、戸田恵子が出演 -
[caption id="attachment_40533" align="aligncenter" width="886"] 「拝啓天皇陛下様」[/caption] 今月は大スターや巨匠監督の映画に注目。劇場版第一作から今年で55年を迎える、映画シリーズ「男はつらいよ」。その主演の渥美清は、昭和を代表する喜劇俳優だった。「男はつらいよ」以降は〝寅さん〞のイメージと一体化したが、今回はそれ以前の彼の代表作を放送。野村芳太郎監督による「拝啓天皇陛下様」(63)は、孤児で無学な主人公が軍隊に入って、仲間もいればただで食事にもありつける軍隊を天国だと思い、戦争が終わりそうになると、除隊は嫌だと天皇陛下に直訴の手紙を書く喜劇。軍隊を礼賛するように見えて、根は孤独な男の哀歓を滲ませながら、戦争と人間を映し出した作品である。渥美は上官のいびりも何のその。本来過酷な軍隊生活をエンジョイする主人公に扮し、この逆説的な反戦映画を見応えのあるものにしている。好評を受けて作られた姉妹編「続・拝啓天皇陛下様」(64)、「拝啓総理大臣様」(64)も併せて放送。また渥美の主演作では、瀬川昌治監督とのコンビで彼が鉄道員を演じたコメディ「喜劇・列車」シリーズ3作品(67〜68)、「男はつらいよ」の第6作(71)と、第30作(82)も登場する。 [caption id="attachment_40536" align="aligncenter" width="886"] 「炎の肖像」[/caption] その第30作「男はつらいよ・花も嵐も寅次郎」に出演した沢田研二は、1960年代のザ・タイガースのボーカルを経て、71 年にソロ歌手デビューしてからは、〝ジュリー〞の愛称で70〜80年代を駆け抜けたスーパースターだった。今回は彼が単独で初主演した「炎の肖像」(74)が登場。ここで彼はロック歌手の鈴木二郎を演じているが、後半の沢田のロックコンサートのシーンを含めて、虚実を融合させた異色作になっている。〝虚〞のドラマ部分では、公開当時話題になった大胆なラブシーンをはじめ、ロック歌手のスキャンダラスなプライベートをドラマとして描き、秋吉久美子や原田美枝子が彩りを添える。藤田敏八、加藤彰の日活ロマンポルノ監督コンビが演出にあたり、音楽は井上堯之と大野克夫という豪華な布陣。時代のカリスマだった、〝ジュリー〞の魅力が詰まった一本になっている。併せて、彼がストイックで妖しいテロリストを演じた森田芳光監督の「ときめきに死す」(84)。さらに急逝した志村けんの代役として主演した、山田洋次監督による映画への愛が込められた人間ドラマ「キネマの神様」(21)も放送される。 [caption id="attachment_40537" align="aligncenter" width="886"] 「八月の狂詩曲」[/caption] 巨匠の映画では、黒澤明監督の「八月の狂詩曲」(91)がお目見え。長崎で暮らすお婆ちゃんと、4人の孫たちとのひと夏の触れ合いを中心に、原爆を体験したお婆ちゃんの心情を底辺に這わせ、「生きものの記録」(55)、「夢」(90)に連なる黒澤監督の反核の想いが映し出された作品だ。村瀬幸子扮するお婆ちゃんの甥役で、リチャード・ギアも出演。そのたどたどしくも誠実さが溢れる日本語のセリフも印象的だ。黒澤作品では他に、彼の遺作となった「まあだだよ」(93)も登場。こちらは作家・随筆家の内田百閒と彼の門下生たちとの触れ合いを描いた、人間讃歌になっている。門下生のひとりを演じた所ジョージが、軽さと柔らかさを感じさせて好演。デビュー作「姿三四郎」(43)や「赤ひげ」(65)など、黒澤監督には師弟関係を描いた作品が多いが、その集大成とも言える一篇だ。 文=金澤誠 制作=キネマ旬報社(「キネマ旬報」2024年8月号より転載) BS松竹東急 BS260ch/全国無料放送のBSチャンネル ※よる8銀座シネマは『一番身近な映画館』、土曜ゴールデンシアターは『魂をゆさぶる映画』をコンセプトにノーカット、完全無料で年間300本以上の映画を放送。 ■8/9[金] 夜8時 「八月の狂詩曲」 監督:黒澤明 出演:村瀬幸子、吉岡秀隆、大寶智子、鈴木美恵、伊嵜充則、リチャード・ギア ほか © 1991 松竹株式会社 ■8/19[月] 夜8時 「拝啓天皇陛下様」 監督:野村芳太郎 出演:渥美清、長門裕之、中村メイ子、左幸子、高千穂ひづる、藤山寛美 ほか © 1963 松竹株式会社 ■8/29[木]夜8時 「炎の肖像」 監督:藤田敏八、加藤彰 出演:沢田研二、秋吉久美子、原田美枝子 ほか 詳細はこちら:https://www.shochiku-tokyu.co.jp/special/eiga/
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新堂冬樹の同名純愛小説を、主演に三山凌輝と久保史緒里(乃木坂46)、共演にファン・チャンソン(2PM)を迎えて映画化した内田英治監督(「ミッドナイトスワン」「サイレントラブ」)の最新作「誰よりもつよく抱きしめて」が、2025年2月よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国で公開される。 絵本専門店に勤める水島月菜(久保史緒里)は、絵本作家の水島良城(三山凌輝)と同棲中。互いを大事にしているが、良城は強迫性障害による潔癖症のため、月菜に触れられない。ようやく治療を決意した良城は、病院で同じ症状の千春に出会い、葛藤を共有。その姿に嫉妬めいた感情を覚えた月菜の前に、恋人と触れ合っても心が動かないイ・ジェホン(ファン・チャンソン)が現れる──。 脚本を担当したのは、東京藝術大学大学院映像研究科脚本領域で坂元裕二に師事し、「夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく」などを手掛けたイ・ナウォン。 愛を伝えることのままならない者たち。交錯した先に待ち受ける運命に注目したい。 〈コメント〉 三山凌輝(水島良城役) 内田監督とは以前に偶然海外でお会いしたご縁もあり、いつか作品で御一緒できたらと話をさせて頂いていたのですが、まさかこんなに早く、しかも監督の作品で自分にとっても初の主役を努めさせて頂くことになるなんて、そのスピード感含めて、本当に驚きの連続でした。 良城を演じる事は、当初シンプルにワクワクした部分がありましたが、自分の陽の性質に比べ、すごくかけ離れていたり、更には強迫性障害を患っているということもあり、自分とは正反対とも言える、この難しいキャラクターを演じるには、どう役に向き合えばいいのか、最後まで、ずっと考え試行錯誤し続けました。 作品自体は、画に流れる空気感がとても素敵なのですが、よくある恋愛映画に終わらず、人のモヤッとする矛盾みたいなものがあえて描かれていたり、人間生きてたら、こういう事あるよね…みたいなリアリティある展開を含めて内田監督だからこその魅力が詰まっていて、人の心に必ず引っかかるような、そんな味わい深い作品になっているのではと思います。誰もが人間関係や恋愛で知らずに経験しているような、単純に割り切れない複雑な気持ちや、行動を敢えて描くことにより、皆さんの心にどんな思いを残す事ができるか?僕自身も楽しみですし、皆さんも、どうか楽しみにしていて下さい。 久保史緒里(桐本月菜役) 桐本月菜役を務めさせていただきました、久保史緒里です。 月菜として生きた日々を今振り返ってみると、とても息苦しかったように思います。常に自分の感情に蓋をしているようで、果たして己にとって一番大切にしたいものは何か、自分なのか、愛する存在なのか、あるいはそれ以外なのか。環境や行き場のない想いに振り回されながらも、月菜の心を満たしてくれるものも蝕んでいくものもいつだって『愛情』だったように思います。そんな刺激的な日々を、三山さん、チャンソンさんをはじめとする素敵な方々とご一緒させていただき、本当に光栄でした。 また、内田監督とご一緒させていただくのは今回で三度目となります。繊細に揺れ動く月菜の心情を言葉に変換しながら、真正面から向き合っていただき、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。この作品が、私たちが生きる中で日々探し求めている愛情のカタチを見つけ出すきっかけとなりますように。そして、月菜が見つけた、導き出した、愛情の答えを見届けていただけたら幸いです。 劇場でお待ちしております。 ファン・チャンソン(イ・ジェホン役) オファーをもらったとき、日本で俳優としての活動を続けていくきっかけになる作品ではないかと思い、とてもワクワクしました。素敵な作品の提案をいただいたので、何よりも精一杯頑張りたいという気持ちでいっぱいでした。 私が演じるイ・ジェホンは、父親の家業を継ぐことを拒否し、シェフになるという夢を持ちながら日本で働き、自分の夢に向かって頑張る男性です。そんなジェホンがシェフの夢を諦めようとしていた時に、日本でのあるきっかけで夢を持ち続けることになり、自分の道を愛して大切にしていく情熱的な人物です。 撮影は長い時間ではありませんでしたが、撮影期間中、スタッフのみなさんや共演者のみなさんとの相性がとても良かったと思います。内田監督の正確で細かい演出と、その演出を実行するスタッフのみなさん、そして素晴らしい役者のみなさんと共演することができて本当に幸運でした。 恋の感情と葛藤は、必ずしも現時点で解決されなければならないモノではないということ。忘れていた感情の物語が時間の流れに溶け込み、互いを理解して許すことができるということ。私はこの映画を通して、恋をしている私たちに必要なのはこういうことではないかと思いました。ぜひ楽しんで観ていただけたら嬉しいです。^^ 内田英治(監督) ふとしたきっかけで出会った小説「誰よりもつよく抱きしめて」を映画化させていただきました。小説の中で描かれる、愛情にまつわる悲しみや純粋な気持ちをスクリーンに投影させたいという衝動に駆られ、若手俳優たちとともに作品作りを行いました。ミュージシャンとしても活躍する三山凌輝、久保史緒里、チャンソンの3人の演技は初々しさとリアリティが混合する素晴らしいものとなり、その姿をぜひ劇場で見ていただきたいと思います。 新堂冬樹(原作者) 内田英治監督と初めて出会ったのは、六年前のことだった。 私の著書、「誰よりもつよく抱きしめて」を映画化したいとの話が、共通の知人の制作会社の経営者を通してあったのだ。 本書は2005年発売の作品で、その当時でも13年前に刊行された小説だった。 光文社の「女性自身」で連載していた作品で、発売当初から映画化、ドラマ化の話が殺到していた。 いろんな問題で話がまとまらずに結局、映画化までに20年の歳月を要してしまったが、結果、内田監督という稀代のヒットメーカーが撮ってくれることになったので、ここまで待ってよかったと思っている。 先日、試写を観た私がまず思ったのは、主役の三山さんが、いい意味で「BE:FIRST」の三山凌輝のイメージを崩してくれたということだ。 どういうことかと言うと、主人公の脅迫的潔癖症を患っている良城が憑依したような演技だったからだ。 私は小説家という仕事柄、年間300本前後の映画やドラマを観ているが、ここまでタレントイメージを裏切る演技をした若手役者を見た記憶がない。 もう一人の主役、月菜役の久保史緒里さんの演技には言葉を失った。 セリフのうまさはもちろん、セリフがないときの表情や瞳の演技が、セリフがあるときと同等、もしくはそれ以上に心に伝わってきた。 小説家風にたとえると、顔面筋、毛細血管の一本一本まで動かす演技力、という感じだ。 久保さんにお会いする前から、滅多に人を褒めない内田監督の評価が異常に高かったのも納得の女優力だ。 静と動の演技の使い分けや声のトーンの強弱のつけかたが秀逸で、陳腐な言葉かもしれないが、彼女のような人を天才というのだろう。 チャンソンさんとは約10年前に、私の著書『忘れ雪』で主役をやって貰って以来、久々の再会だったが、韓国でもドラマや映画で活躍し、以前に比べて演技に深みが出て、大人の役者さんになったと感慨深い思いでスクリーンを見ていた。 話題性だけではない二人の若き主役を抜擢し、これだけの作品に仕上げた内田監督の眼力と演出力もまた、紛れもない天才の為せる業だ。 こんなに素敵な映画になり、小説家冥利に尽きる思いだ。 「誰よりもつよく抱きしめて」 原作:新堂冬樹「誰よりもつよく抱きしめて」(光文社文庫) 監督:内田英治 脚本:イ・ナウォン 出演:三山凌輝、久保史緒里(乃木坂46)、ファン・チャンソン(2PM) 配給:アークエンタテインメント ©2025「誰よりもつよく抱きしめて」HIAN /アークエンタテインメント 公式サイト:dareyorimo-movie.com