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世界が注目するバス・ドゥヴォス監督「Here」、緩やかな《出会い》を紡ぐ予告編
2023年12月29日世界が注目するベルギーのバス・ドゥヴォス監督が、移⺠労働者と植物学者の緩やかな交流を紡ぎ、第73回ベルリン国際映画祭でエンカウンターズ部門最優秀作品賞と国際映画批評家連盟賞(FIPRESCI賞)に輝いた「Here」が、2月2日(金)よりBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほかで全国公開。グラフィックデザイナーの大島依提亜が手掛けたアザーポスター、予告編、場面写真が到着した。 ブリュッセルに住む建設労働者のシュテファンは、アパートを引き払って祖国ルーマニアに戻るか悩んでいる。やがて冷蔵庫の残り物でスープを作り、姉や友人らに別れの贈り物として配って回る。 出発の準備を整えたシュテファンは、森を散歩中に以前レストランで出会った中国系ベルギー人のシュシュと再会。そこで初めて彼女が苔類の研究者であることを知る。足元に広がる多様で親密な世界で、二人の心はゆっくりと繋がっていく──。 ブレヒト・アミールの魅惑の音楽とともに、16ミリフィルムの穏やかな映像が、スタンダードサイズ画面を満たす。《世界と出会い直す魔法》の物語に身を委ねたい。 なお、第72回カンヌ国際映画祭監督週間に出品されたバス・ドゥヴォスの前作「ゴースト・トロピック」(2019)も同時公開。こちらも見逃せない。 「Here」 監督・脚本:バス・ドゥヴォス 撮影:グリム・ヴァンデケルクホフ 音楽:ブレヒト・アミール 音響:ボリス・デバッケレ 出演:シュテファン・ゴタ、リヨ・ゴン、サーディア・ベンタイブ、テオドール・コルバン、セドリック・ルヴエゾ 2023/ベルギー/オランダ語・フランス語・ルーマニア語・中国語/83分/DCP(16mm撮影)/カラー/スタンダード(1.33:1)/G/日本語字幕:手束紀子/配給:サニーフィルム ©︎ Quetzalcoatl 公式サイト:www.sunny-film.com/basdevos -
「エマニエル夫人4Kレストア版」—〝エマニエル特需〟の頃の〝淫夢〟再びも一興か
2023年12月29日主演シルビア・クリステルが60歳の若さで死して早11年。〝エマニエル伝説〞はもはや大過去と思いきや、再公開とはまた良きかな。エロスは根強い。ジュスト・ジャカンの低予算フレンチ・エロス作を、日本で大化けさせたのが、今は亡きヘラルド映画であった。カメラマン出身監督だけに被写体をフォトジェニックに撮る術には長けた。ポルノは観たいけど……、当時の主に20〜40代女性層に対し、文芸もの等に特化した上品な一流館・みゆき座にかけ、ファッショナブルに売るイメージ戦略(籐椅子に座り艶然と微笑むクリステルのポスターもその一環)の完勝なり。ほぼ無名の彼女を欧州の美しい女優さん=憧れの対象とし、様々なエクスキューズを施し、堂々と単身&女性同士で鑑賞することを可能にした。この映画を観ることが時代の先端、との美しき誤解をまんまと植え付けた。タイ・バンコクで奔放な性行為に目覚めてゆく外交官夫人のエロス行脚なんだけどね。当時、大学留年中の鬱屈した身で、イソイソと観に行ったら女性観客が約7割を占め、当方の肩身のほうが狭かったことを昨日のように思い出す。 安く輸入したこの作品が十倍、百倍の興収をたたき出し、のちにこの業界に入って、その頃のヘラルドの試写室はフランス製椅子を設えた配給会社随一の豪奢な代物で『エマニエルの恩恵で作った〝エマニエル試写室〞と呼ばれている』と知った。社会現象化し、その余波か、全国各地の歓楽街で『エマニエル』の名を冠した店が激増したほど。この鉱脈を映画界が見逃すわけもなくシリーズ化! クリステル以外の女優も起用され、21世紀まで続いた。そんな〝エマニエル特需〞は、クリステルを一躍人気女優にし、ジャカン監督をエロスのカリスマに押し上げたが、最後まで〝エマニエルの〜〞の冠を取ることはできなかった。21世紀に入るとクリステルは、10代時からのヘビーな喫煙が祟ったのか肺ガンを患い、長く闘病し、12年6月に脳卒中で倒れ、秋には帰らぬ人に。第一線での活躍はほぼ10年……短くも美しく淫らに燃え、であった。 この「エマニエル夫人」をレア・セドゥーでリメークという報に、年甲斐もなく色めき立ったが、近年ドリュー・バリモアで「バーバレラ」(68)をリメークする話もいつしか頓挫……話半分に聞いておこう。クリステル〝13回忌〞も近い。再びエマニエルの〝淫夢〞をまどろむのも一興か。なお「続エマニエル夫人」(75)「さよならエマニエル夫人」(77)も再公開される。 文=秋本鉄次 制作=キネマ旬報社 (「キネマ旬報」2024年1月号より転載) 「エマニエル夫人4Kレストア版」 ・1974年/フランス/93分 ・監督:ジュスト・ジャカン ・出演:シルヴィア・クリステル、アラン・キュニー、クリスティーヌ・ボワッソン ©1974 STUDIOCANAL. Tous droits réservés. 「続エマニエル夫人デジタルリマスター版」 ・1975年/フランス/ 91分 ・監督:フランシス・ジャコベッティ ・出演:シルヴィア・クリステル、ウンベルト・オルシーニ ©1975 STUDIOCANAL. Tous droits réservés. 「さよならエマニエル夫人デジタルリマスター版」 ・1977年/フランス/ 98分 ・監督:フランシス・ルテリオ ・出演:シルヴィア・クリステル、ウンベルト・オルシーニ ©1977 STUDIOCANAL. Tous droits réservés. ・配給:ファインフィルムズ(全作品) ◎12月29日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、シネ・リーブル池袋ほか全国にて -
映倫 次世代への映画推薦委員会推薦作品 —「ブルーバック あの海を見ていた」—
2023年12月29日オーストラリアの海が育む母と娘の絆、自然への愛 海洋生物学者のアビーが故郷の海辺の町ロングボート・ベイに戻ったのは、母のドラが脳卒中で倒れたから。退院したドラは、言葉を発しない。海を一望する自宅で、親子の日々が再び始まり、過去が回想される——。 アビーを演じるのはミア・ワシコウスカ。ハリウッド作品でおなじみだが、今回は母国オーストラリアで落ち着いた魅力を見せる。昔日のドラ役にはラダ・ミッチェル。娘を深く愛する母親、そして海の生態系を破壊するリゾート開発に抗議する環境活動家という二つの顔が同居する。気さくでバイタリティにあふれ、時に荒っぽい(「臆病者に居場所はない」といった感じの台詞が印象的)。厳しくも優しい、まさに海そのもののような存在だ。 アビーにとって、母と並ぶもう一つの大きな存在。それは、8歳の誕生日に初めて潜った入り江で出会った巨大魚、ウエスタン・ブルーグローパーの〝ブルーバック〞だ。この魚が面白い。「体長は約1・7メートル、体重は約40キロに達し、約70年も生きる。人懐こく好奇心旺盛。産まれた時は皆メスで、体の色はグリーン。オスのハーレム状態というべき小さな群れをなし、そのオスが捕食や老齢などの理由で消えると、上位のメスがブルーに変色してオス化する」(プレスリリースより)。雌雄同体の種が形成するコミュニティ。こうなると、われわれヒト科が抱えるジェンダーやセクシュアリティとは一体何なのか、考えさせられる。 無骨な自由人である漁師役のエリック・バナ、少女時代のアビーに扮した新星イルサ・フォグとアリエル・ドノヒューらも好演。浮上するテーマが自然保護なのはもちろんだが、「多様性を守る」という言葉のみ独り歩きさせることなく、人々や生物種の唯一無二の実態を刻み、説得力を行き渡らせるのが、映画のいいところだ。 文=広岡歩 制作=キネマ旬報社 (「キネマ旬報」2023年12月号より転載) https://www.youtube.com/watch?v=bA0E591wUmM 「ブルーバック あの海を見ていた」 【あらすじ】 海洋生物学者のアビーは、母のドラが脳卒中で倒れたと聞き、西オーストラリアの海辺の町に帰郷。そして口がきけなくなったドラを世話しながら、少女時代を回想する。巨大な青い魚“ブルーバック”との出会い、環境活動家だったドラに海の素晴らしさを教わったことなど──。アビーが忘れかけていた大切なものは何か、自らの原点を見つめ直していく。 【STAFF & CAST】 監督・脚本:ロバート・コノリー 出演:ミア・ワシコウスカ、ラダ・ミッチェル、エリック・バナ 配給:エスパース・サロウ オーストラリア/2022年/102分/区分G 12月29日(金)全国順次公開 ▶公式HPはこちら ©2022 ARENAMEDIA PTY LTD, SCREENWEST (AUSTRALIA) LTD AND SCREEN AUSTRALIA -
パク・チャヌク監督の助監督を務めてきた、気鋭オム・テファ監督の最新作「コンクリート・ユートピア」。主演を務めるイ・ビョンホン、パク・ソジュン、パク・ボヨンら、錚々たるスター陣を巧みに演出し、青龍映画賞や大鐘賞などの映画賞に輝いた2023年の韓国の話題作が、2024年1月5日より全国で公開される。韓国ドラマ年鑑『韓国テレビドラマコレクション2024』(2024年1月15日発売)で紹介するオム・テファ監督の独占インタビューを、いち早くキネマ旬報WEBでお届けしよう。 舞台であるマンションは、韓国の現代社会の縮図 ―「コンクリート・ユートピア」では、巨大災害後、ソウルに唯一残ったマンションで暮らす人々の葛藤が描かれます。ただ、これまで作られてきたディザスター(災難)ムービーとはかなり違う印象を受けました。 「災害が起きた後の世界を描く終末ものに近いと思います。生き残った人々の世界を通して、現在の韓国を象徴的に見せたいと思いながら作りました」 ―住民たちに選ばれて臨時住民代表となるヨンタク役のイ・ビョンホンさんがすばらしい演技を見せています。また、彼を補佐する公務員ミンソン役にドラマ『梨泰院クラス』(20)や「マーベルズ」(23)のパク・ソジュンさん、彼の妻ミョンファに「君の結婚式」(18)のパク・ボヨンさんを起用しました。 「ヨンタク役には、小市民的な姿から独裁者のような姿までという大きな変化を2時間のなかで表現できる俳優が必要でした。演技がとてもうまいだけでなく、この大きな予算の映画への投資も可能にするようなスターパワーも不可欠と考えた時に頭に浮かぶ俳優はイ・ビョンホンさんしかいませんでした。パク・ソジュンさんは、颯爽としてカリスマ性のある役もたくさん演じていますが、平凡な役を演じているときのほうが、むしろ魅力的な面があるのではないかと思い、平凡な公務員役を演じてもらいました。パク・ボヨンさんの場合は、普段あまり見せていない面が見たいと思って起用しました」 ―厳しい状況のなかで徐々に変貌してく住民たちの群像劇としても見応えがあります。撮影はどのように進めていったのでしょうか。 「全体を順番に撮影することはできませんが、俳優たちになるべく楽に演じてもらうため、できるだけ努力しました。たとえば、映画の前半に登場する住民会議の場ではそれぞれの人物がある決断をしますが、その後、3、4ヵ月撮影が進んだ後、彼ら彼女らの意思を改めて表明する別のシーンを撮ることになりました。そのとき、俳優たちに『このマンションの住民として生きてきて、考えは変わりましたか?』と聞いてみました。ある人たちは変わらないと言い、ある人は変わったと言ったので、『それなら現場では本人が思うように演じてください』と言って撮影しました」 エンタメ性の高いパニックスリラーを通じて伝えたかったこと ―今作の制作中に新型コロナウイルス感染症が世界的に広まりました。「コンクリート・ユートピア」に登場する人々が外の世界の人々を排除してなんとか生き残ろうとする姿は、人との接触を避けることが推奨され、家に閉じこもって病気を避けようとした日々を思い出させます。 「この映画の撮影が始まった頃に新型コロナウイルスの感染が世界的に拡大しました。撮影をしながら、当時、起きていたような事態が進むと、韓国だけでなく、全世界が、この映画のシナリオで描かれているような状態になりえるのではと思いました。「コンクリート・ユートピア」は、韓国のマンションのなかを顕微鏡で眺めるような、とても韓国的な内容ですが、突き詰めていくと、生存したいという欲望と人間の尊厳が衝突するストーリーです。自分や家族が生存するため、他人に対してどこまで害を及ぼすことができるのか、『あなたならどんな選択をしますか?』と問いかける映画にしたかったのです。すべての人物に感情移入できる余地を残し、どの人物の視点で見るかによって映画を見終わった時に出す答えが違うとよいなと思いながら作りました。今起きている戦争や難民の問題として受け止めた観客もいたようです」 (プロフィール) オム・テファ:1981年生まれ。韓国映画アカデミー(KAFA)出身。2002年ドキュメンタリー「선희야, 노올자!」で共同監督を務める。短編「숲」(12)、オム・テグ主演の「イントゥギ」(13)で才能が注目され、カン・ドンウォン主演の「隠された時間」(16)で商業デビューを飾る。商業映画第2作目となる「コンクリート・ユートピア」が、第44回青龍映画賞で3冠、第49回大鐘賞では作品賞をはじめ、6冠に輝くなど、最も勢いのある新鋭監督。 取材・文=佐藤結 制作=キネマ旬報社 『韓国テレビドラマコレクション2024』(2024年1月15日発売)より転載 https://www.youtube.com/watch?v=EJOl9VOdY74 「コンクリート・ユートピア」 【あらすじ】 大災害後、韓国・ソウルで唯一残ったマンションを舞台にしたパニックスリラー。韓国社会の縮図ともいえるマンションに生き残った住人の人間模様から、この時代の“人道”について問い掛けている。世界各地で起こった地盤隆起による大災害に見舞われたソウル。唯一崩落を逃れたファングンアパートに生存者たちが押し寄せたことで、物騒な事件が発生する。危機感を覚えた住人は、外部からマンションを遮断し、防犯隊を作って統制することに。902号室のヨンタク(イ・ビョンホン)が臨時代表に選ばれ、602号室のミンソン(パク・ソジュン)は防犯隊長に任命される。しかたなく加わったミンソンだったが、行動力を発揮し、住民を導くヨンタクに次第に心服していく。そんな夫の姿を心配する妻のミョンファ(パク・ボヨン)は、ヨンタクに不信感を募らせていた。ヨンタクの支配力が強まったとき、予期せぬ出来事が起こってしまう。 【作品データ】 콘크리트 유토피아/Concrete Utopia 2023年・韓国・カラー・2時間10分 監督 オム・テファ 脚本 イ・シンジ、オム・テファ 出演 イ・ビョンホン、パク・ソジュン、パク・ボヨン、キム・ソニョン、パク・ジフ、キム・ドユン 配給 クロックワークス 2024年1月5日より全国公開 公式オフィシャルサイトはこちら © 2023 LOTTE ENTERTAINMENT & CLIMAX STUDIO, INC. ALL RIGHTS RESERVED. 『韓国テレビドラマコレクション2024』 2002年よりキネマ旬報社が毎年発行してきた‟元祖”韓国テレビドラマムック。最新ドラマの紹介はもちろん、巻頭特集『2023韓流エンタテインメント徹底解剖』は読み応え十分。映画の注目作、旬の俳優、世界中を圧巻したK-POP事情まで。2023年に話題になった韓国のエンタテインメントを、各専門のエキスパートと共にひもときます。 全国書店・ECストアにて2024年1月15日発売 2,530円(税込)※電子ブック版は2,500円(税込) /キネマ旬報社刊 A5版/カバー・並製/608頁 予約購入はこちらまで⇒KINEJUN ONLINE
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ロック界の最高ドラマーたちが明かす軌跡と情熱。「COUNT ME IN 魂のリズム」
2023年12月28日レジェンドたちが教えてくれる演奏の興奮と悦びとは──。ロック界のドラマーにスポットを当てたドキュメンタリー「COUNT ME IN 魂のリズム」が、3月15日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、新宿シネマカリテほかで全国公開。ポスタービジュアルが到着した。 ニコ・マクブレイン(アイアン・メイデン)、スチュワート・コープランド(ポリス)、シンディ・ブラックマン(サンタナ/レニー・クラヴィッツ)、チャド・スミス(レッド・ホット・チリ・ペッパーズ)、テイラー・ホーキンス(フー・ファイターズ)、ロジャー・テイラー(クイーン)、ジム・ケルトナー(トラヴェリング・ウィルベリーズ/エリック・クラプトン/ライ・クーダー)、イアン・ペイス(ディープ・パープル)といった超一流から、ベン・サッチャー(ロイヤル・ブラッド)やエミリー・ドーラン・デイヴィス(ザ・ダークネス/ブライアン・フェリー)ら若手世代、さらにロス・ガーフィールドのようなスペシャリストまで登場。自身のキャリア、ドラムの歴史や真髄を語っていく。 偉大なジャズドラマーたちが現代のドラマーと音楽に与えた影響を解説し、そうしたレガシーをロックに持ち込んだジンジャー・ベイカーの功績を称え、トッパー・ヒードンやラット・スキャビーズといった伝説的なパンクバンドのドラマーをフィーチャーするなど、見逃せない内容だ。 「COUNT ME IN 魂のリズム」 監督:マーク・ロー 出演:シンディ・ブラックマン、ニコ・マクブレイン、イアン・ペイス、チャド・スミス、ロジャー・テイラー 2021年/イギリス/英語/85分/カラー/5.1ch/原題:COUNT ME IN/配給:ショウゲート © 2020 Split Prism Media Ltd. ALL RIGHTS RESERVED.