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世界で評価された珠玉作が集結。「指先から宇宙まで 素晴らしき短編アニメーションの世界」
2022年10月12日珠玉の短編アニメーションを集めた「指先から宇宙まで 素晴らしき短編アニメーションの世界」が、12月10日(土)より渋谷ユーロスペースほかで全国順次公開。ポスタービジュアル、場面写真、予告編が到着した。 カンヌ国際映画祭監督週間でプレミア上映され、10を超える国際賞を受賞した水尻自子の「不安な体」。ベルリン国際映画祭短編部門特別表彰やオタワ国際アニメーション映画祭グランプリに輝いた、ユニークで奇妙な和田淳の「半島の鳥」。カラフルでポップな作風で熱狂的ファンを擁する冠木佐和子の生理をめぐるアニメーション・ドキュメンタリー「I’m Late」。映像と音楽のシンクロが心地良いノンナラティブ・アニメーションで評価される水江未来の大作「ETERNITY」(今回が世界初公開)。さらに、個人制作で2時間半に及ぶ長編「コンシューミング・スピリッツ」を完成させたアメリカの鬼才クリス・サリバンによる新作長編「The Orbit of Minor Satellites」より、“先行短編”として「コントロール・ユア・エモーション」も特別に併映。短編アニメーションは巨大な小宇宙であることを体感させる5作品60分だ。 【上映作品:5作品/計60分40秒】 「コントロール・ユア・エモーション」(「The Orbit of Minor Satellites」より) 監督:クリス・サリバン/アメリカ=日本/2022年/7分09秒 ワールドプレミア上映 アメリカの鬼才クリス・サリバンが10年近くかけて準備中の最新長編「The Orbit of Minor Satellites」(原題)より、冒頭の一章を短編アニメーションとして特別上映。教育映画を模した構成で、ある女性の深い悲しみと闇の感情、そして彼女の精神科医との関係が、柔らかく、ときにユーモラスに、しかし無慈悲に語られていく。 「不安な体」〈ニューディアー製作短編作品集:その1〉 監督:水尻自子/フランス=日本/2021年/5分47秒 カンヌ国際映画祭監督週間プレミア上映 アルスエレクトロニカ コンピュータアニメーション部門 優秀賞 オタワ国際アニメーション映画祭最優秀ノンナラティブ作品 何かを感じて不安になり、不安だから何かを感じていたくなる身体。セロテープを指で引っ張って切る。そこから身体は何を感じるだろう。質感、形、伝わる感触、あらゆる連想が境界なく呼び起こされ混ざり合っていく。そしてまた不安になる、繊細で健やかな私たちの身体。 (音楽:本田ゆか) 「I’m Late」〈ニューディアー製作短編作品集:その2〉 監督:冠木佐和子/フランス=日本/2022年/10分36秒 グァアナファト映画祭グランプリ 文化庁メディア芸術祭 アニメーション部門 審査員推薦作品 イメージフォーラムフェスティバル SHIBUYA SKY賞/東京会場観客賞 あなた又はあなたのパートナーの生理が遅れたり、来なかったりしたことはありますか? (音楽・サウンドデザイン:hikariko) 「半島の鳥」〈ニューディアー製作短編作品集:その3〉 監督:和田淳/フランス=日本/2022年/16分08秒 ベルリン国際映画祭短編部門特別表彰 ファントーシュ国際アニメーション映画祭ベストフィルム オタワ国際アニメーション映画祭短編部門グランプリ ある半島の、ある村で昔から続いている子どもが大人になるための通過儀礼。その本番に向け、少年たちは決められた舞を一生懸命練習している。少年にしか見えない鳥がいる。その少年もいつか鳥が見えなくなる。好意なのか、憧れなのか、嫉妬なのか。本当の気持ちは自分でもわからないけれど、少女はずっと少年を追いかける。 (音響ディレクター:滝野ますみ/作曲:足立美緒) 「ETERNITY」 監督:水江未来/日本/2022年/21分00秒 ワールドプレミア上映 目が覚めた少年の瞳に映るのは、永遠の姿。 (音楽:トクマルシューゴ) 配給:ニューディアー 公式サイト:newdeer.net/wonderful -
『相棒』新シリーズ放送直前!杉下右京×冠城 亘の最終章『season20』を振り返る
2022年10月12日20年以上継続中の水谷 豊主演の大人気刑事ドラマ『相棒』シリーズ。今年3月まで放送していた『相棒 season20』では、7シーズンにわたって杉下右京(水谷 豊)の“相棒”を務めてきた冠城 亘(反町隆史)の特命係としてのラストエピソードを描き、シリーズとしての大きな節目を迎えた。その『相棒 season20』のDVD-BOXとBlu-ray-BOXが、伝説のコンビが復活と話題の新シーズン初回放送日と同日の10月12日にリリースされた。 天才? 変わり者? 杉下右京と特命係 『相棒』シリーズは、2000年6月に単発ドラマとしてスタート。2002年からは連続ドラマ化され、4本の劇場版と2本のスピンオフ映画も公開している。基本的には1話完結のバディものの刑事ドラマだが、社会性を反映した犯罪捜査ミステリーを主軸にしながらも、型にはまらない多彩な物語が高い評価を受けている。日本を代表する長寿刑事ドラマとして人気を博しており、前シーズン『season19』のソフト販売も好セールスを記録した。 水谷 豊が演じる警部の杉下右京は、天才的な知識力・推理力・洞察力を有しているが、常に紳士的かつ冷静沈着ながらもマイペースな変わり者。正義感が強く、真相究明のためには暴走することもあり、警察庁のキャリア組だったが、ある事件を機に“陸の孤島”と揶揄される警視庁の窓際部署の特命係に追いやられた。その特命係は、配属された右京の部下が次々と辞めていくため“人材の墓場”とも称されていたが、熱血漢の亀山 薫(寺脇康文)が警視庁捜査一課から左遷。当初はぶつかり合いながらも次第に良き“相棒”となった二人は、様々な事件を解決に導いていくこととなる。その後、右京の“相棒”は、辞職や異動など様々な事情により変遷。二代目はスパイ的な形で警察上層部から送り込まれながらも右京と信頼関係を築いた神戸 尊(及川光博)、三代目はある事件で偶然関わった右京に見込まれて特命係に引き抜かれた甲斐 享(成宮寛貴)、そして、4代目の相棒となったのが、元法務省のキャリアという異色の経歴を持つ冠城 亘だった。 右京と独特な関係性を築いた相棒・冠城 亘 反町隆史が演じた冠城 亘は、今回の『season20』で特命係を去ることにはなったが、『season14』から7シーズンにわたって右京の相棒を務め、出演回数は歴代最多の138回を誇る。 冠城は法務省のキャリアで、人事交流により警視庁警務部に出向していたが、ある事件で右京に興味を持ったことから特命係に居座ってしまう。その後、法務省を退官し、ノンキャリアとして警視庁に入庁。警察学校での研修後に総務部広報課を経て、正式に特命係へ配属された。 唯一、特命係に自ら希望して異動してきた冠城は、熱血漢の亀山、クールな神戸、若くて行動派な甲斐とは違い、大人の余裕やユーモアがあり、行動の読めない飄々とした男。一見軽そうにも見えるが、頭の回転が速い切れ者でもあり、その行動は大胆不敵。右京の暴走を面白がっている節があり、からかうこともある。優秀すぎる右京に誰もが怯む中、冠城は臆するどころか右京の行動を逆手にとり、対立も恐れない。 右京も当初は冠城を警戒していたが、二人は互いに認め合う頼れる存在として次第に阿吽の呼吸を見せるようになり、冠城はある意味で右京と独特な関係性を築いた刺激的な相棒となった。 右京と冠城の別れ、再登場キャラなど見所満載 そんな冠城のラストシーズンとなった『season20』の見所は、まずは冒頭第1~3話で描かれた連続エピソード。これは、衝撃的な結末を見せた『season19』から繋がるストーリーとなっている。白バイ隊員だった出雲麗音(篠原ゆき子)が銃撃された事件から始まる『season19』の第1~2話と第19~20話の連続エピソードでは、IT長者の加西周明(石丸幹二)、内閣官房長官の鶴田翁助(相島一之)、内閣情報調査室の柾庸子(遠山景織子)らが関わる国家規模の大事件が描かれてきたが、『season20』冒頭3話は、2シーズンをまたいで累計7話にわたって描かれてきたこの事件の最終決着を見ることができる。さらに第1話には『season3』で登場した元内閣官房長官の朱雀武比古(本田博太郎)が実に17年ぶりに再登場する他、第3話のラストでは驚きの人物も顔を見せている。 シリーズファンが特に見逃せないエピソードとしては、特命係“第3の男”こと陣川公平(原田龍二)が再登場する第4話、冠城の姉・由梨(飯島直子)が初登場する第11話、特命係に逮捕された過去を持つ元詐欺師・平井(風間杜夫)が再登場する第15話、右京と親交の深かった元鑑識課員の米沢 守(六角精児)が再登場する第17話などがある。 他にも、“8050問題”の社会問題を背景にした第5話、刺殺事件の被害者の生まれ変わりだという青年が現れる第9話、右京が動画配信者となる第12話、芸術家の才能を巡る結末が奥深い第14話、異色の設定が光る第16話など、輿水泰弘を始めとする多彩な脚本家が手掛ける、『相棒』シリーズならではの物語が楽しめる。 そして、第19話と最終話の第20話では、政界復帰を目指す片山雛子(木村佳乃)、国家公安委員長の大物議員・鑓鞍兵衛(柄本 明)らが再登場する他、警視庁広報課在籍時の冠城の元上司・社美彌子(仲間由紀恵)、法務省在籍時の冠城の元上司・日下部彌彦(榎木孝明)といった冠城と関係の深い人物たちも絡み、冠城の特命係での最後の事件が描かれる。静かな感動に満ちた右京と冠城の別れのシーンは、右京が初めてある言葉を口にするのと共に、水谷 豊と反町隆史自身の想いとも受け取れるような名シーンとなっている。 また、冠城らしいともいえる今回の結末は、『相棒』シリーズの世界観をさらに広げることにもなると思われ、今後の新たな展開やさらなる進化が期待できそうだ。 水谷 豊と反町隆史の貴重なインタビュー特典映像 10月12日リリースのDVD-BOXとBlu-ray-BOXには、総計約85分もの特典映像を収録。 相棒の生みの親でもある脚本家の輿水泰弘と、監督の橋本 一が手掛けたTELASAオリジナルのスピンオフ『とりしらべ』は、特命係と捜査一課の主要レギュラーが総登場。放送開始直前に配信されたスペシャル動画では、水谷 豊と反町隆史が『こてまり』のセットで裏話などを語る他、第1話に繋がる『season19』のエピソードの振り返りも行っている。撮り下ろしとなる、放送直前に収録した水谷 豊と反町隆史のインタビューではここでしか見れない裏話が。元日スペシャルと最終話の放送前に情報番組内で放送されたインタビューでは、反町が涙を抑えきれない様子も見られる。さらに各話のPRスポット集を収録する他、各話の主要ゲストを含む登場人物紹介のデータを見ることもでき、再登場キャラクターの復習も行える。また、スペシャルハンドブック『特命事件ファイル20』の封入特典もあり、充実の各種特典が収められている。 DVD-BOXとBlu-ray-BOXが発売した本日、水谷 豊&寺脇康文が14年ぶりにタッグを組む相棒の最新シリーズ『season21』もいよいよスタート。『season20』を見直したい方や見逃していた方はもちろん、近年のシリーズを見ていなかった初期ファンも、この機にぜひ進化を続ける『相棒』シリーズの現在に触れてみてはいかがだろうか。 文=天本伸一郎 制作=キネマ旬報社 『相棒 season20』 ●10月12日(水)Blu-ray BOX&DVD-BOX I・IIリリース(全20話)※レンタル同日リリース Blu-ray&DVDの詳細情報はこちら ●Blu-ray BOX:41,800円(税込) 【封入特典】 ・スペシャルハンドブック「特命事件ファイル20①&②」 【映像特典】 ・『相棒season20』スタート直前スペシャル動画 前篇・後篇 ・水谷 豊×反町隆史スペシャルインタビュー ・「とりしらべ」 ・元日スペシャルインタビュー(『グッド!モーニング』2021年12月30日より) ・最終話スペシャルインタビュー(『グッド!モーニング』2022年3月23日より) ・PRスポット集 ●DVD-BOX I:19,250円(税込) 【封入特典】 ・スペシャルハンドブック「特命事件ファイル20①」 【映像特典】 ・『相棒season20』スタート直前スペシャル動画 前篇・後篇 ・水谷 豊×反町隆史スペシャルインタビュー ・「とりしらべ」 ・PRスポット集 ●DVD-BOX II:19,250円(税込) 【封入特典】 ・スペシャルハンドブック「特命事件ファイル20②」 【映像特典】 ・元日スペシャルインタビュー(『グッド!モーニング』2021年12月30日より) ・最終話スペシャルインタビュー(『グッド!モーニング』2022年3月23日より) ・PRスポット集 ●2021年/日本 ●出演:水谷 豊 反町隆史 ●発売元:株式会社テレビ朝日 販売元:株式会社ハピネット・メディアマーケティング ©2021, 2022テレビ朝日・東映 -
カンヌACID部門出品の山﨑樹一郎監督作「やまぶき」、予告編解禁&各国映画祭で4冠
2022年10月11日陽の当たらない場所に咲く花〈山吹〉をモチーフに、資本主義と家父長制社会の歪みに潜む悲劇と希望を描き出し、第75回カンヌ国際映画祭ACID部門に出品された山﨑樹一郎監督作「やまぶき」が、11月5日(土)より渋谷ユーロスペースほかで全国順次公開。予告編が到着した。 かつて韓国の乗馬競技のホープだったチャンス(カン・ユンス)は、父親の会社の倒産で多額の負債を背負った。岡山県真庭市に流れ着き、今はヴェトナム人労働者たちと採石場で働いている。一方、刑事の父とふたり暮らしの女子高生・山吹(祷キララ)は、交差点でひとりサイレントスタンディングを始める。ふたりとその周囲の人々の運命は、本人たちの知らぬ間に静かに交錯し始める──。 予告編は、チャンスが岡山で新しい家族と過ごす様子と、山吹がサイレントスタンディングするシーンからスタート。そしてオリヴィエ・ドゥパリの手掛けたトイピアノの音色とともに、ふたりの人生が思いがけず交わっていく物語の断片を映し出す。 本作は9月、第27回スプリト国際映画祭グランプリ、第19回ウラジオストク国際映画祭審査員賞、第18回ルッカ国際映画祭グランプリ、第8回ブラジリア国際映画祭最優秀男優賞(カン・ユンス)という4賞を受賞する快挙を果たしている。10月は、ロッテルダム国際映画祭(1〜2月にオンライン開催)のリアル上映に合わせて山﨑監督がオランダへ渡航する予定だ。 © 2022 FILM UNION MANIWA SURVIVANCE 配給:boid/VOICE OF GHOST ▶︎ 山﨑樹一郎監督作「やまぶき」がカンヌACID部門に日本映画で初出品! -
子どもたちが主役の映画祭「29th キネコ国際映画祭」が二子玉川で開催!井ノ原快彦らタレント・俳優陣も参加し一緒に楽しむ5日間 日本最大規模の子ども国際映画祭「第29回 キネコ国際映画祭」が11月2日から6日、世田谷区・二子玉川の街を会場に開催される。 今回で29回目を迎える「キネコ国際映画祭」は、iTSCOM STUDIO & HALL二子玉川ライズ、109シネマズ二子玉川をメイン会場に、子どもから大人まで楽しめる世界19ヵ国45作品が上映され、さらに二子玉川公園前の多摩川河川敷では大型スクリーンが設置され、3年ぶりの野外上映「野外ミズベリングシアター」が復活する。 映画の上映以外にも親子で体験できるアウトドアイベント「キネコエクスペリエンス」や、各種ワークショップ、大道芸のストリートパフォーマンスなど、二子玉川の街全体が映画祭を中心に盛り上がり、まさに“芸術の秋”を感じる5日間となっている。 1歳からティーンズまで、世界各国の子どもに観て欲しい作品がずらり! 期間中で上映される映画は約50作品。数分の短編から2時間の長編まで、世界中から集められたバリエーション豊かな選りすぐりの作品が勢揃い。各作品はそれぞれ、「1歳からのやさしい物語」、「冒険や挑戦の物語」、「ハンディキャップと寄り添い向き合う物語」といった様々なテーマと、4つの対象年齢(1歳以上、5歳以上、13歳以上=ティーンズ)で分けられているので、多くの上映作品の中からでも“観せたい”、 “観たい”作品がきっと見つけられるはずだ。 生吹替え「ライブシネマ」に戸田恵子らタレント・俳優が参加 キネコ映画祭の大きな特徴とも言えるのが、字幕の読めない子どもたちに吹替えを、スクリーンの横で声優たちがその場で“生吹替え”をする「ライブシネマ」。世界でも珍しい試みとして海外の映画祭からも注目されているというが、今回は映画祭のジェネラル・ディレクターの戸田恵子、プログラミング・ディレクターの中山秀征、スペシャル・サポーターの横山だいすけ、イモトアヤコがオープニング・セレモニーで吹替えに挑戦、映画祭の開幕を盛り上げる。さらに期間中には俳優の高橋克典も登場予定となっており、作品と合わせて彼らの参加も映画祭の魅力のひとつとなっている。 コンペティション部門の各授賞作品の選定には子どもたちも参加 「キネコ国際映画祭」のコンペティション対象作品の審査を国際審査員と共に行うのは、一般公募によって選ばれた小学4年から6年生の子ども審査員と、中高生のティーンズ審査員の「キネコ審査員」たち。映画、芸術の世界で活躍するプロフェッショナルの映画人と共に、審査会議に参加し、各賞の選定を行うという。受賞作品は映画祭の最終日の11月6日に発表・授賞式が行われるが、その司会を務めるのが井ノ原快彦。映画祭のクライマックスを飾る授賞式を、和やかに盛り上げてくれるのではないだろうか。 子どもと映画の出会いの場としての意義があるだけでなく、子供の成長を願う大人も新たな発見が得られる貴重な場として注目されるキネコ映画祭。秋の深まりを感じながら、二子玉川の街を上げて行われるこの映画祭に、親子はもちろん、大人もぜひ行ってみてはいかがだろうか。 「29th キネコ国際映画祭」開催概要 開催期間:2022年11月2日(水)~11月6日(日) 会場:iTSCOM STUDIO & HALL、109シネマズ二子玉川、ほか チケット発売::10月21日(金) AM10:00より開始 大人1,000円 子ども(高校生以下)500円 公式サイト:https://kineko.jp/ 【キネコ国際映画祭とは】 1992年に渋谷でスタートした子ども国際映画祭。国内で唯一、ヨーロッパ子ども映画団体(ECFA)や子ども・青少年向けのオーディオ・ビジュアルのプロフェッショナルが集まる団体(CIFEJ)に加盟し、子どもたちが映画を通じて世界の芸術や文化に触れ、映画から夢や希望を育むこと、子どもたちの人生の指針のきっかけとなる映画の上映に取り組んでいる。
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聴覚障害と向き合いながらプロボクサーとしてリングに立った小笠原恵子さんをモデルに、「きみの鳥はうたえる」の三宅唱監督が岸井ゆきのを主演に迎えて描く「ケイコ 目を澄ませて」(12月16日よりテアトル新宿ほかで全国公開)。出品された第27回釜山国際映画祭 特別企画プログラム「Discovering New Japanese Cinema」での10月9日(日)上映後に、岸井ゆきのと三宅唱監督が登壇して行われたトークショーのレポートが到着した。 まず三宅監督が「アンニョンハセヨ。こうして釜山の大きなスクリーンで大勢の方と一緒に観ることができて楽しかったです」、岸井が「アンニョンハセヨ、岸井ゆきのです。アジアで最初のプレミアをご鑑賞頂きありがとうございます。この日を待ち望んでいたので感無量です!」と伝えると、満席の会場より大きな拍手と喝采が沸き起こった。 三宅監督は「この映画を作るまでボクシングについて全く知りませんでした。なぜ殴ったり殴られたりするのか分かりませんでした。でも多くの人がボクシングに夢中になってしまう。この謎について考えていくと、もしかしたら自分たちの人生についても考えていくことができるのではないかと思いました。この作品の主人公のモデルとなった小笠原恵子さんの生き方、純粋に自分のやりたいことをして、自分の人生を生きようとするエネルギーがこの映画の中心にあると思っています。岸井さんは映画の中でその全てを表現してくれています」と話す。 応援に駆けつけた「新聞記者」のシム・ウンギョンが、本作に魅了され、岸井に圧倒されたと言うと、岸井は「ボクシングのトレーニングを3か月行いました。その中でケイコを形作っていきましたが、トレーニング中からこれは二度とできない作品、役柄であるなという実感がありました。体づくりのために糖質制限をしていたので、すごく狭い世界しか見えなくなって、自分が見たいものしか見られない、聞きたい音しか聞こえないという状況でした。ある一点に集中力を注ぎ、その精神状態の中でケイコというキャラクターは作られていきました。この映画で身体が朽ちてもいいと思うほどに、このような経験は二度とできないだろうし、二度とできない瞬間を収めてほしいと思いながら日々撮影に臨んでいました」と並々ならぬ役作りを打ち明けた。 三宅監督は、岸井とボクシング指導の松浦慎一郎氏との撮影前トレーニングを振り返り、「ボクシングの練習を始める前までは、ボクシングとはリングに一人で上がって闘う孤独なスポーツだと思っていました。しかし実際に練習してみると、パンチを当てるのがものすごく怖いと感じ、互いに相手へのリスペクトがないと、ボクシングは練習すらできないということを学びました。ある日の練習で体格の全く違う僕と岸井さんがリングに上がって闘うという練習をしたときに、僕が本気で殴るわけにはいかないので遠慮してガードばかりしていたら、岸井さんから『なぜ本気で殴ってこないのか、なぜ真剣に向かってこないのか』と真っすぐ言われました。強さ、弱さは関係なく、その真っすぐな姿勢というものが、元々岸井さんにあり、ケイコというキャラクターにもあったのだと思います。それが“共に生きる”という姿勢にも繋がると、僕は練習中に感じ続けていました」と、印象的なエピソードを紹介。 それに岸井は、「映画のためというよりか、自分自身がいかに強くなれるか、を考えてずっとやっていました。この映画をやり遂げられなかったら、俳優でいるのは難しいと思うくらい、必死で日々練習に臨んでいました」と応じる。 映画作りについて三宅監督は、「目の前に素晴らしい役者さんがいて、素晴らしいスタッフの働きがあって、素晴らしいロケ地があって、それを撮り逃さないようにするということをまずは意識していました。それから、シム・ウンギョンさんが仰ってくれた“共に生きる”ということは、このように劇場で多くの人と“共に観る”こととも繋がっていると思います。どんな物語であれ、僕が映画を作るときは、スクリーンの向こうの世界とお客さんが、どのように同じ時間を過ごせるのかということについて考えながら作っています」と説明。 最後に岸井は「私は映画が本当に好きなんです。この仕事を始める前からずっと観てきました。16mmフィルムで撮るということを知って、映画の撮影中にしか聞くことができないカラカラというフィルムの音を聞けるんだと思い、もう全てをここにかけるしかないんだという気持ちになりました。三宅監督と一緒に映画を撮るということ、16mmフィルムで撮るということ、そしてそのために集まってくれるスタッフの皆さんがいて、この映画を作ることができました。私はベルリン国際映画祭も他の映画祭も参加が叶わなかったので、この釜山が初めての映画祭となり、この映画を観た方とコミュニケーションをとれる良い機会となりました。いま皆さんの表情を見て、この映画を観て何か感じて頂けたんだなということを思い、とても嬉しいです」と喜びを述べた。 Story 嘘がつけず愛想笑いが苦手なケイコは、生まれつきの聴覚障害で、両耳とも聞こえない。再開発が進む下町の一角にある小さなボクシングジムで日々鍛錬を重ねる彼女は、プロボクサーとしてリングに立ち続ける。母からは「いつまで続けるつもりなの?」と心配され、言葉にできない思いが心に溜まっていく。「一度、お休みしたいです」と書き留めた会長宛ての手紙を出せずにいたある日、ジムが閉鎖されると知り、ケイコの心が動き出す──。 ©2022 映画「ケイコ 目を澄ませて」製作委員会/COMME DES CINÉMAS 配給・ハピネットファントム・スタジオ ▶︎ 岸井ゆきのを三宅唱が16mmフィルムで撮る。耳が聞こえないボクサーの物語「ケイコ 目を澄ませて」