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  • 癒され度120%!イケメンシェフ チョン・イルと知英(元KARA)演じる新人Pの恋の結末は? ドラマだけでなくバラエティでも、料理をテーマにした番組が続々と作られている韓国。7/2にDVDがリリースされるラブロマンス『夜食男女』では、料理をきっかけに出会った男女が番組作りをしながら育む信頼関係と、それによって起こる波紋が描かれる。 ヒロインが企画した斬新な番組が周りの人々の運命を変える 仕事帰りに馴染みのレストランに寄って、シェフであるパク・ジンソンの作る夜食を食べる喜びを心の支えにしながら、厳しい毎日を耐えていた新人プロデューサーのキム・アジン。セクシャル・マイノリティに対する偏見を減らすことを願って彼女が企画した料理番組『夜食男女』は、ゲイであることをカミングアウトしたシェフを起用し、料理だけではなく出演者から悩みの相談も担当するという斬新なものだった。同じ頃、父親が交通事故に遭ってまとまった金が必要になったジンソンは、アジンから企画の話を聞き、自分がゲイであると偽ってオーディションに臨む。 アジンを演じているのは、紅白歌合戦に出場するなど、高い人気を誇ったガールズグループKARA出身で、日本での俳優活動後、本作で初めて韓国ドラマに出演した知英。一緒に番組を作っていく中で少しずつジンソンに好意を持つようになるアジンだが、彼がゲイだと信じているため、なかなか一歩を踏み出せない。一方、番組を手伝うファッションデザイナーの男性カン・テワンも、ジンソンに対する思いを深めていく。『夫婦の世界』(20)で暴力的なキャラクターを演じたイ・ハクジュが、本作ではまったく違う繊細なキャラクターに扮している。はたして、複雑な3人の関係はどうなっていくのだろうか。 シェフ役のチョン・イルが見せる料理の腕前に感嘆 深夜から明け方にかけて開店するレストランBISTROを営むジンソン役は『ヘチ 王座への道』(19)のチョン・イル。芸能人たちがメニューを開発し、優秀なものをコンビニで実際に発売するバラエティ番組『新商品発売~コンビニレストラン』でも絶賛された料理の腕を存分に披露している。ロブスター鍋を作るシーンの前には、自宅で練習して撮影に臨んだという。あさりの酒蒸し、麺、チゲといったおいしそうな料理の数々に加え、包丁や鍋を華麗に使い、丁寧に盛り付けをするチョン・イルの真剣な姿もお見逃しなく。テワン役のイ・ハクジュが大学の後輩だったということもあり、リラックスした現場となったそうだ。 契約社員の悲哀を背負うヒロインに共感 日本同様、非正規雇用の増加が社会問題となっている韓国。若者の就職難についても多くのドラマで取り上げられている。『夜食男女』のヒロイン、アジンも契約職という設定で、正社員たちとの待遇の差が随所で描かれている。同じプロデューサーという職にありながら、雑用を押しつけられたり、企画が通りにくかったりということ以上に彼女が一番心を痛めているのが、上司からきちんと名前で呼んでもらえないということ。店に来て、そのことを嘆く彼女を見ていたジンソンは、番組に出演するようになった後で行われた飲み会で、失礼な正社員に向かって「彼女の名前を呼んでください」とはっきり告げ、アジンを感動させる。一方、『知ってるワイフ』(18)のコン・ミンジョン演じる放送作家や、『風と雲と雨』(20)のキム・スンス演じるのんきな先輩プロデューサー、『ナビレラーそれでも蝶は舞うー』(21)のキム・スジン演じる本部長といった周囲の人々は、アジンの熱意に動かされ、徐々によき仲間となっていく。悩みながら仕事と恋に真っ直ぐに向かっていくアジンの姿を見ていると、思わず声援を送りたくなってくる。 文=佐藤 結/制作=キネマ旬報社 『夜食男女』 ●7月2日(金)DVD-BOX1リリース(第1話~第12話) ●8月4日(水)DVD-BOX2リリース(第13話~第24話) DVDの詳細情報はこちら ●DVD-BOX1:11,880円(税込)  DVD-BOX2:11,880円(税込) ●DVD-BOX1特典 【映像特典(100分)】「夜食男女」制作発表会/次回、チラ見せ! 【封入特典】ブックレット(8P) ●DVD-BOX2特典 【映像特典(70分)】チョン・イル独占インタビュー/知英独占インタビュー/次回、チラ見せ! 【封入特典】ブックレット(8P) ●2020年/韓国 ●出演:チョン・イル、知英(ジヨン)、イ・ハクジュ、チェ・ジェヒョン、キム・スジン、コン・ミンジョン ●発売元:ストリームメディアコーポレーション 販売元:株式会社ハピネット・メディアマーケティング 販売協力:カルチュア・パブリッシャーズ © JTBC Studios Co., Ltd & Hello Contents Co., Ltd All rights reserved
  •   2021年に、日活ロマンポルノは生誕50年の節目の年をむかえました。それを記念して、「キネマ旬報」に過去掲載された記事の中から、ロマンポルノの魅力を様々な角度から掘り下げていく特別企画「あの頃のロマンポルノ」。キネマ旬報WEBとロマンポルノ公式サイトにて同時連載していきます。 今回は、「キネマ旬報」2001年2月上旬号より、北大路隆志氏による企画特集「小沼勝の華麗なる映像世界」からの記事を転載いたします。 1919年に創刊され100年以上の歴史を持つ「キネマ旬報」の過去の記事を読める貴重なこの機会をお見逃しなく! 「ロマンポルノへの誘い・小沼勝小論」ただ女たちの存在を輝かせるためだけに存在する・・・ リアリズム無視の過剰さが独自のリアリティを醸し出す  小沼勝の監督作品はほぼ全て1917年に登場した新種のプログラム・ピクチャー、"日活ロマンポルノ"の枠内で撮影されている。輝かしい伝統を誇る映画会社である日活が諸般の事情からロマンポルノ路線に活路を見出し再生を図ろうとした時期に、小沼は映画作家としてデビューし、そうしたギリギリの路線さえ消滅するまで、この枠組みの外で映画を撮ることはなかった(その点、たとえば、この路線が生んだもう一人の巨匠である神代辰巳と異なる)  だから僕たちは小沼勝を論じる際に、どうしても"日活ロマンポルノ"とは何だったのか、という問いの前に立ち止まり、真剣に再検討する必要性を感じてしまうのだ。  日活ロマンポルノとは何か?少なくとも小沼にとって、それは日活が得意としていた"アクション映画"の換骨奪胎化された(女性化された?)継承だ。中田秀夫によるドキュメンタリー『サディスティック&マゾヒスティック』の中で、小沼はSMの女王谷ナオミをアクションスターとして称え、彼が下積み時代に日活アクション映画から学んだ原則であるリアリズムとリアリティの差異について言及している。誰もが知るように日活アクション映画はいわゆるリアリズムから程遠い。だけどそこにリアリティが欠けているわけでもない。銃が撃たれ、嘘のように馨しい血が流れるがゆえに出現するリアリティ、つまりは嘘でしか生み出しえない現実感こそ、小沼にとって映画の基本原則を成す。あるいは、現実には存在しえない人物をそれでも涼しい顔で主役として登場させること……それが映画に許された特権であり、小沼作品の中でとりわけ谷ナオミが現実的にはありえないがゆえにリアリティを増すアクションスターを演じる。  ▲『生贄夫人』(1974年製作) 主演:谷ナオミ  小沼の演出による男女の絡みは、小沼作品の代名詞であるサドマゾ的なな装置が介在しなくても、かなり不自然な身体動作に及び、そうしたリアリズム無視の過剰さがむしろ独自のリアリティを醸しだし、中田が感嘆するように、素晴らしいラブシーンを生む。そもそも誘拐され、性的陵辱を受けつつ監禁されている女性の脱出劇という、SM映画の定型は、アクション映画のそれにほぼ等しいではないか。そんな意味で、小沼は神代よりむしろ日活がロマンポルノ路線を選択する数年前に解雇した鈴木清順と比較されるべき映画作家だ。彼らの映画はたとえ異様な外観を呈し、意味不明な"イメージ"・ショットが挿入されていても、理詰めで絶妙な編集によって組み立てられ、エモーション(感情)ではなくモーション(運動)によって成立するアクション映画である……という点においてそしてたぶんその結果として、彼らの映画を特徴づけるポップな平面性において(絵によって全てを語ること…小沼はもともと画家志望だった) 変貌を受け入れる女性とそれを拒絶する男性  さらに僕の考えでは、ポルノ映画は根本的にある逆説を抱えている。たとえば、ポルノ映画は誰を観客に想定し撮影されるのか?ロマンポルノ路線に突入した当時の日活は、監督たちが同僚の作品の試写に熱心に詰めかけ、互いに批評しあう環境にあったという。これ自体は感動的で重要な映画史的エピソードだ。僕たちが後年"最後のプログラム・ピクチャー"と呼び、ある種の定型に従って量産される映画群として捉えてしまうロマンポルノが全く未知の領域だったとき、映画作りに関る人々がそれぞれの立場で新種のプログラム・ピクチャーの定胆を模索していたのだ(10分に、一度はセックスシーンを入れること、予算の関係上、アフレコで音声を付加すること等々の原則は確実に存在し、その原則が小沼作品を構成する重要な.要素になるのだが……)。だけど再びロマンポルノを誰が見るのかという問いに、戻れば、小沼は仲間内の監督の批評など聞きたくもなかった、むしろ自作がかかる映画館に出かけ、そこで映画を見つめる観客の反応を注視したと語っている。そう、"日活ロマンポルノ"の枠組みで撮影された映画で観客の大多数を占めるのは、昼休みに会社を抜け出して三本立ての映画館に潜り込みその中の一本半ほどを眺めた後でいそいそと席を立つサラリーマンであり、何らかの事情で一日の大半を映画館で過ごすことができて競馬新聞を片手に煙草をくゆらす男たちである。単純な事実の確認にすぎないが、ロマンポルノそして小沼勝が演出する作品群は、そうした男たちのために撮られていたのだ。  だけど、小沼勝作品が根本的に孕む逆説は、まさにこのバカバカしいほど単純な事実に起因するだろう。問いを変えてみればいい。ポルノ映画は男たちのために撮られている。では、ポルノ映画は誰を撮っているのか?あるいは誰に熱い視線を向けているのか?答えは同じくバカバカしいほど単純で、女たちだ。男たちはただ女たちを見るためだけにポルノ映画館の暗闇に潜りこむ。だから、僕が考えるポルノ映画の逆説とはこうだ。ポルノ映画は男たちの(主に性的、少し映画狂的な)欲望のはけ口として撮られていたが、そこで映し出されるのは、男たちを排除した女たちの世界であり、ポルノ映画はただ女たちの存在を輝かせるためだけに存在する……。 ▲『ラブハンター 熱い肌』(1972年製作) 主演:田中真理  小沼の映画での女性と男性の際は、前者が変貌を受け入れるのに対し、後者はそれを拒絶する点に集約される。小沼作品の女たちの多くは、『生贄夫人』の谷、『妻たちの性体験 夫の眼の前で、今・・・』の風祭ゆき、『箱の中の女 処女いけにえ』の木築沙絵子らがそうであるように、秘められた本性の発露とも性の目覚めともとれる変貌を遂げたり、『ラブハンター 熱い肌』の田中真理や『昼下りの情事 古都曼陀羅』の山科ゆりのように家族や夫婦等々の偽りの拘束からの離脱を決意する。ところが、男たちは女たちの変貌を促す術を持たず、彼女たちの前から退散するか主導権を奪われるしかない。言葉を換えれば、女性たちは複数に増殖(変貌)し、無方向に拡散する様々な模像を生むが(『濡れた壷』のマネキン人形、『OL官能日記 あァ!私の中で』のヒヨコ、『昼下りの情事 古都曼陀羅』で山科のスカートから零れ落ちる無数の白いピンポン玉……)、男たちは単数的な存在にとどまる。あるいは、男たちは徒党を組むことでしか女性の複数性に対抗できないのかもしれない。『妻たちの性体験 夫の眼の前で、今・・・』の風祭が一人で担う複数性に対抗するために、いったい何人の男たちが彼女に立ち向かっただろう?小沼作品ではしばしば軍隊への郷愁に惣かれた老年の男たちが戯画化されて登場するが、むしろそこからは徒党を組むことでしか女性の複数性に対抗しえない男たちの無力さや惨めさばかりが滲み出る……。こうして、小沼作品が性転換されたアクション映画であり、男たちに向けられた、しかし(だからこそ)女だけが輝かしい複数性を担う映画であることが確認された。もちろんフェミニズムの論理でいえば、ポルノ映画での女たちの表象は男たちの視線に晒されるべく構成された歪みの産物であり、女たちが輝き勝利するとしても、男たちの快楽に貢献するためでしかない。だが今や小沼の映画が女たちの世界であることの意味を反転させる好機が来たのではないか。日活ロマンポルノは制度として崩壊し、男たちが小沼作品を専有する権利などない。小沼が12年ぶりに撮った新作『NAGISA』の予想を超えた素晴らしさは、そんな僕たちの展望を勇気づけてくれる。この少女を主人公とした映画はすでに男たちのために撮られていないし、少女はいかなるフェティシズムの対象ともなっていない。今後小沼勝の作品群は女性たちの視線を通して、異様な"女性映画"の試みとして再発見されるだろう。その時、彼の映画での女たちの輝きはどんな意味を帯びることになるのか? 文・北大路隆志 「キネマ旬報」2001年2月上旬号より転載   日活ロマンポルノ 日活ロマンポルノとは、1971~88年に日活により製作・配給された成人映画で17年間の間に約1,100本もの作品が公開された。一定のルールさえ守れば比較的自由に映画を作ることができたため、クリエイターたちは限られた製作費の中で新しい映画作りを模索。あらゆる知恵と技術で「性」に立ち向い、「女性」を美しく描くことを極めていった。そして、成人映画という枠組みを超え、キネマ旬報ベスト・テンをはじめとする映画賞に選出される作品も多く生み出されていった。 オフィシャルHPはこちらから
  • 時代を駆け抜けた五代友厚と三浦春馬の生きざまが重なる歴史劇 知る人ぞ知る近代の偉人 江戸時代末期、1836年の鹿児島に生まれ、薩摩藩士から明治政府の役人を経て実業家となり、現在の商業都市としての大阪の基礎を作りあげた五代友厚。タイトルの「天外者」(てんがらもん)とは、すさまじい才能の持ち主、利口で功績をあげた人、いたずら小僧などの意味を持つ鹿児島弁で、映画の主人公である五代を称したもの。近年の研究によりその功績が再認識された知る人ぞ知る近代の偉人の一人である五代は、2015~2016年放送のNHK連続テレビ小説『あさが来た』に登場したことでも知名度を上げたが、映像作品の主人公として本格的に描かれたのは本作が初めて。そして今回その五代役を演じた三浦春馬のハマりぶりは、その生きざまなども含めて五代自身と重なって見えてしまう。 本作は、現代の日本の礎を築く上で様々な功績を残した五代の生涯を追った作品ではあるが、1本の映画に収める上で、その業績などを細かく追っていくよりも、五代がどのような熱い思いを持って時代を駆け抜けていった人物かという、その人柄を描くことに重きを置いている。そのため、歴史的な背景や具体的な業績などを知らないと、描かれていることのすべてを理解するのは難しい部分もあるが、先の時代を見据えた魅力的な人物であったことはよくわかる。この映画をきっかけに五代についてもっと知りたいと思わせられることだろう。 まさにハマリ役の三浦春馬 そんな魅力的な人物を表現する上で、それを演じた三浦春馬の功績は大きい。前半の血気盛んな青年時代から、後半の落ち着き払った晩年までの変化を違和感なく説得力を持って演じてみせている。まさに全身全霊で演じたであろうことが伝わるこの三浦の芝居があってこそ、五代の足跡の点描に陥らず、身なりや口ぶりは変わろうと、常に胸の奥に熱い信念を抱え、未来への夢や希望を追い続けた人物であったことが感じられる。 前半では実際に親交のあった坂本龍馬、岩崎弥太郎、伊藤博文らとの交流が描かれ、激動の時代を舞台にした青春群像的な物語も楽しめる。他にも五代は、高杉晋作、勝海舟、大久保利通、西郷隆盛、大隈重信、トーマス・グラバーといった日本を語る上で欠くことが出来ない偉人・傑物たちとの親交もあったらしく、その一部は劇中でも描かれており、幕末ものが好きな人にも興味深いはずだ。 薩摩藩の武士から明治新政府の役人となり、実業家へと転身していく後半は、政商と忌み嫌われながらも突き進む姿に生きづらさを感じて苦しくなるが、クライマックスで未来を見据えて「俺についてこい!」と熱く語る姿、そして静かな感動を呼ぶラストに救われる。先が見えすぎる人物であったからこそ、常に理解されにくい部分も多かったのだろうが、こんな人がいたからこそ今の日本があるということ、そして現代にこそまた必要な人材ではないかと思わせられる。それが今この映画を作った意味でもあるのだろうが、この映画製作プロジェクトの成り立ちや五代の業績の一部を解説した映像特典『五代友厚プロジェクトの想い!映画「天外者」が生まれるまで』(本日リリースのBlu-ray豪華版に収録されている)を見ると、その思いがより一層伝わることだろう。 また、同時代を生き、その足跡に重なるような部分が多い渋沢栄一が主人公の大河ドラマ『青天を衝け』にも、五代は登場している。“西の五代、東の渋沢”と並び称された二人が、実際に親交があったかは定かでないようだが、同ドラマを見ている人にも時代背景をより深く知ることができる「天外者」は、とても楽しめるはずだ。 「悔いがない」と語る本作への思い Blu-ray豪華版に収録されている映像特典の『メイキング~制作過程~』も非常に興味深い。美術や衣裳にもこだわり抜いて作られた本作が、松竹京都撮影所や当時の雰囲気を残した関西各地でロケ撮影された様子がわかる。さらに、クランクイン直前から撮影現場の様子と共に、田中光敏監督のコメント、そして三浦春馬、三浦翔平、西川貴教らメインキャストたちの撮影現場でのコメントも収録。高校の同級生だった三浦春馬との共演を喜ぶ五代の妻役の蓮佛美沙子が、撮影の合間に三浦と写真を撮り合う姿や、撮影現場の片隅で三浦春馬が田中監督と熱心に語り合う様子なども収められている。 特に印象深いのは、三浦春馬が語った「今回の作品は悔いがない。一生懸命やりました」との言葉。今回のハマりぶりもあり、三浦と49歳の若さで亡くなった五代を重ねて見てしまい、共にもっとやりたかったこと、やり残したことがあったのではないかとも、つい考えてしまう。しかし、それは他人の勝手な思いでしかない。彼らが一生懸命にやってきたことには悔いなどなく、成し遂げてきたものがすべてなのだ。そんなことを感じさせる力強い言葉だった。 また、先述のとおり“天外者”とは“すさまじい才能の持ち主”のことだが、三浦はこのタイトルについて五代を指すものではないという独自の解釈をしていたと、メイキング映像の中で監督が明かしている。その詳細はメイキングをみていただきたいが、三浦の誠実な人柄が伝わるエピソードだと感じると共に、五代を演じた三浦自身もまた、“天外者”だったのだと思えて、胸が熱くなった。 文=天本伸一郎/制作=キネマ旬報社 『天外者』 ●6月23日(水)Blu-ray&DVDリリース Blu-ray&DVDの詳細情報はこちら ●Blu-ray 豪華版(特典ディスク付2 枚組) 7,480円(税込)  DVD 通常版 4,180円 (税込) ●Blu-ray 豪華版特典 【本編ディスク】 ・予告編集(特報、予告、TV スポット) 【特典ディスク】 ・メイキング~制作過程~ ・五代友厚プロジェクトの想い!映画「天外者」が生まれるまで ・イベント映像集(完成披露試写会、公開記念舞台挨拶) ・五代友厚の妻・豊子の故郷を蓮佛美沙子が巡る、「田原本さんぽ」 【仕様・封入特典】 ・アウターケース ・フォトブック ●2020年/日本/本編109分 ●監督:田中光敏、脚本:小松江里子、出演:三浦春馬 三浦翔平 西川貴教 森永悠希 森川葵 ほか ●発売・販売元:東宝株式会社 ©2020 映画「五代友厚」製作委員会
  • 1960年(昭和35年)に創業し、60年の歴史を誇る株式会社ホリプロ。芸能界に燦然と輝いてきたこの一大企業は、ミュージシャンだった堀威夫さんが音楽プロダクションを興したのが始まりだ。その後、時代に先駆けて音楽出版や著作権ビジネス、映画やドラマ、ミュージカルや演劇の製作・興行へとフィールドを広げていった。 ホリプロ所属のタレントといえば、世代によって思い描くスターは様々だろう。舟木一夫、ザ・スパイダース、和田アキ子、石川さゆり、森昌子、山口百恵、榊原郁恵などの歌手を挙げる人は昭和生まれだろう。平成生まれ以降は、藤原竜也、妻夫木聡、松山ケンイチ、鈴木亮平、池松壮亮、綾瀬はるか、石原さとみなど、俳優の名前を挙げる人が多いかもしれない。 株式会社ホリプロの取締役、津嶋敬介さんは1987年(昭和62年)の入社以来、マネージメント部門と映像事業部門の両翼となってきた。ホリプロのスカウトシステムである『ホリプロタレントスカウトキャラバン』の運営や、現在全国公開中のホリプロ60周年記念映画「NO CALL NO LIFE」など、数々の映画のプロデューサーである。 ホリプロの半分の歴史の証人であり、スターの発掘、育成、プロデュースまでを知り尽くしている津嶋さんは、芸能プロダクションの将来をどのように見据えているのだろうか。俳優やタレント、マネージャー、プロデューサーなど、エンタメ業界を目指す人必読! 映画俳優の訓練や映画をプロデュースする、映画24区代表の三谷一夫さんが本音を聞いた。 津嶋敬介さん(株式会社ホリプロ・取締役)×三谷一夫さん(映画24区・代表)   ホリプロのマネージメント哲学 三谷 津嶋さんとは、かれこれ10年になりますね。2012年頃に千駄ヶ谷にあった映画24区のスタジオにふらっといらしたのが、初まりでしたね。 津嶋 そうでしたね。現在、全国公開中の映画「NO CALL NO LIFE」で主演を務めている優希美青が、第37回ホリプロスカウトキャラバンでグランプリを獲った直後でした。俳優として教育したいなと思って、調べたら映画24区というのがあったので、ここでちょっと教えてもらおうと思ったんです。 三谷 『ホリプロタレントスカウトキャラバン』は1976年(昭和51年)にスタートしたホリプロのスター発掘オーディションですが、今年でもう45回目になるんですね。96年のグランプリが深田恭子さん、津嶋さんが実行委員長をされた2000年の審査員特別賞に綾瀬はるかさん、2002年のグランプリに石原さとみさんが選ばれています。 津嶋 これはよく考えられたシステムなんですよ。他に良い方法が見つかったらやめましょうと言ってますが、なかなか見つからない(笑)。 三谷 原石の才能を見つけて、教育をされて、自社企画で世に送り出すシステムは、やはりマネージメント部門と製作部門の両輪を持っているホリプロならではの強みですね。津嶋さんのキャリアは、その二つの部門に絞られるんですね。 津嶋 はい、マネージメント部門と映像事業部門のどちらも担当してきました。1987年(昭和62年)の入社当時はマネージャー希望でしたが、映像事業部に配属されて、アシスタント・ディレクター、アシスタント・プロデューサーを3年やりました。コマーシャルの制作でカチンコを叩いていましたが、もう地べたに這いつくばって働きましたよ(笑)、よく辞めなかったと思います。そして3年目からドラマやバラエティの企画を出したりしてやっと面白くなってきた矢先の1990年(平成2年)に、マネージメント部門へ行けと言われて、結構へこんで異動しました。 三谷 どんな方をマネージメントされたんですか。 津嶋 現場マネージャーとして大石吾朗、比企理恵、大沢逸美、戸田菜穂、鶴見辰吾を担当しました。マネージメント部門は、ずいぶん長かったですね。現場マネージャー、チーフ・マネージャー、そのあと部長を10年やって、合計23年やりました。 三谷 自ら街に出て、スカウトされたりもされたそうですね。 津嶋 やりましたよ。チーフ・マネージャーになってから、優香と佐津川愛美をスカウトしました。ドラマを作って、マネージメントでも役者をやっていると飽きてきて、バラエティ系をやってみたいなと思ったんです。それで優香を池袋でスカウトして、話してみたらバラエティ向きな明るい子だったので、グラビアからバラエティ展開のプロモーション計画を立てました。 三谷 マネージャー経験の長い津嶋さんに伺いたいんですが、マネージメントについて、なにか哲学をお持ちですか。 津嶋 いきなり深い話ですね(笑)。哲学ということでもないですが、マネージャーに向いている人と役者に向いている人というのは、僕はまったく違うと思ってます。タイプとしては両極端だと言ってもいい。自分でマネージメントしながら出演もするという「プレイングマネージャー」みたいな役者さんもいますが、僕は絶対に無理だと思っているんです。 三谷 それはどうしてでしょうか。 津嶋 マネージャーは喜怒哀楽が激しい人は向いていないし、役者は逆に喜怒哀楽が激しい人が向いているからです。わかりやすく言うと、役者は感情の起伏が激しいほうが表現力が豊かでいいのですが、マネージャーは常に冷静でフラットでないといけない。たとえば仕事がないとき、役者はどんどん落ち込みます。そのときにマネージャーも同じように不安になって落ち込んでいたら、もうダメなわけです。そこは大丈夫だと役者を鼓舞して引っ張り上げないといけない。また、役者がすごく売れてくると、どんな役者でも一瞬、天狗になります。自分はすごいと。もちろん役者はそう思ったほうがいい。でもマネージャーまで調子に乗って天狗になると最悪なんです。そこで役者の驕り高ぶりを抑えないといけない。 三谷 津嶋さんは、そういう意味ではマネージャーに向いていたのですか。 津嶋 そうですね。心に秘めたものはありますし、よく笑うし、よく泣きますよ(笑)。でもすごく怒ったりはしないし、少なくとも仕事では表面に出さない。 三谷 最近の若い役者志望の方「自分には感情の起伏がないんです」という子が増えましたけどね。 津嶋 普段は物静かで憑依型だという役者さんもいますけれど、そんなに多くはないですよ。入社して33年間見てきて思うのは、やはり喜怒哀楽が激しい子のほうが売れるし、喜怒哀楽が激しくない子のほうが優秀なマネージャーになります。 三谷 『俳優の教科書』(2017年、フィルムアート社刊)の中で、津嶋さんと対談したとき、10代や20代はマネージャーの言うことを聞く子のほうがいい、でも30代になるとセルフ・マネージメントをできる子がいいと断言されていました。 津嶋 いまもその考えは変わりません。10代や20代の子は自分を過大評価したり、逆に過小評価することがある。不得手なことはやりたくないとか、好きなことはしたいけど嫌なことはしたくないというジャッジを、若いからどうしてもしてしまう。でも、マネージャーは本人のことを考えて俯瞰で見ていますから、辛い仕事でも本人のためになると思うと入れますし、たとえギャラがよくてもマイナスイメージになることは断ります。 三谷 自分より若いマネージャーでも従ったほうがいいんですか。 津嶋 その上にはチーフ・マネージャーもいますからね。でも、30代になると、セルフ・プロデュースができないと残っていかない。自分でもわかってきますよ、この仕事は辛いけど自分が成長するためにやりますと言いますもの。そこで決められない役者もいっぱいいますが、その子たちは残っていかないですね。でももし、そこで自分がジャッジできないのならば、一切の文句を言わずにマネージャーの言うとおりにやるほうがいい。次のステップはこうなると考えられる人に判断を委ねたほうが得策です。 ©2021映画「NO CALL NO LIFE」製作委員会 激変するマネージメント事業 三谷 基本的にマネージメントの仕事は、これまで、そんなに変化はなかったと思いますが、コロナによって、今後大きく変わっていきますか。 津嶋 変わっていきますね。まず営業の仕方が変わりました。リモートで営業しないといけないですからね。キャリアのあるマネージャーは知り合いのプロデューサーやディレクターと連絡を取り合ってタレントの動画を送ったりできますが、若いマネージャーは知り合いもいないし、何もできないんです。昨年4月入社の社員は入ったときからこうなので可哀想ですね。現場でやることはもちろん教えていますが、プロモーションやセールスが教えられないですよね。 三谷 昔はプロフィールを持って、テレビのプロデューサーになんとかへばりついて、朝まで飲んで、というようなことがありましたけど、減っていきますよね。 津嶋 まず今はテレビ局に入れないですから(笑)。プロデューサーもリモートワークでいないし。 三谷 そうなってくると、そんな時代の芸能事務所の選び方はどうなりますか。これから事務所に入ろうとする人たちは、どうすればよいのでしょうか。 津嶋 マネージャーというのは、やはりプロデューサーの意味合いがありますから、自分をどう売ってくれるのか、きちんと絵を描いてくれる人を探したほうがいいですね。セールス能力があり、コロナが終息したら一気にプロモーションをしてくれる人です。もちろんこのコロナ禍でも、リモートで営業してくれる人が一番いいです。うちはドラマも映画もいっぱい作っていますが、他所の事務所の人はフロアには来ないですよ。でもメールは来ますよ。優秀なマネージャーは所属のタレントの動画をつくって送ってきます。俳優だって自分で撮って送ってきますからね。 三谷 役者も自分で撮って編集するくらいの技術は必要になってきますよね。セルフ・プロデュースに関連するところとして、ホリプロはSNSの活用にルールがあるんですか。 津嶋 SNSが出始めたころは、マネージャーがチェックしてOKなものをアップするということをやっていましたが、そんなことをしてると遅いし、タレントや役者もやりたくなくなってしまうので、そこはもう信頼して任せるようにしています。インスタグラムもFacebook、TikTok 、Twittertなども自由にやっています。 三谷 ホリプロのタレントさんは、あんまりやっている印象がないですが。 津嶋 やってますよ。綾瀬はるかや石原さとみがやってないから、そう思われるのかな。高畑充希とか竹内涼真とか、何百万人のフォロワーがいますよ。そういうのが得意な人と不得意な人、好きな人も嫌いな人もいますから、任せています。僕自身、インスタもFacebookもやってます。 三谷 オープンすぎるくらい、やってますよね(笑)。 津嶋 やったほうがいいと思いますよ(笑)。あれだけコアターゲットに刺さるものはない。高畑充希が記者会見やテレビでなにか言うとマスには広がりますけど、本当に好きな人に刺さるかと言えば、ちょっとわからない。でも、充希がインスタで言うと、充希が好きな300万人くらいに広まるし、しかも宣伝費は無料ですからね。そのかわり、悪いことも、あっという間に広まりますから、諸刃の剣ですけどね。 ©2021映画「NO CALL NO LIFE」製作委員会 芸能プロダクションのお金の話 三谷 ホリプロは東証一部に上場していたので、会計がしっかりとされていますから、踏み込んでお聞きします。芸能プロダクションはあくまで会社ですから、売上を立てないといけないですよね。タレントや俳優にお金の話をどこまでするんですか。たとえば、どこの事務所とは言えませんが、タレントに売上と経費を示して、あなたはこれくらい稼がないと会社にはマイナスだよと徹底して教え込む会社もあります。 津嶋 うちは、方針の話はしますが、お金の話はしませんね。ただ、タレントには言わないけれど、一人一人に売り上げ目標はあります。各マネージャーが毎年、年度はじめに方針や目標、売上金額を決めて、「タレント方針会議」で部長や役員の前でプレゼンテーションをやるんです。2日間缶詰めになって、みんなでじっくり詰めていくんですが、そのときに年間の売上目標を立てますね。 三谷 それは、一年間のホリプロのマネージメント事業総売上ですよね? 津嶋 いえ、個々のタレント単位で決めます。ただ、マネージャーに対しては、目標を設定させますけど、ノルマにはしないんです。ノルマだと、達成できないと、給料を下げたり降格させたりという話になってしまいますよね。そうすると、変な仕事でもギャラが高い仕事を取ってきちゃうんですよ。それはタレントのためにならない。ギャラが安くても、質のいい仕事をしたほうがいいですからね。 三谷 そのバランスは難しいですね。 津嶋 難しいですよ。でも、うちはおかげさまで会社もそこそこ大きくて、タレントも役者もいっぱいいるし、もし仮に一人が働かなくても、他の人が働けばちゃんとみんな食べていけるので、変な仕事はやらなくていい。もちろんマネージャーが売上目標を達成したら、給料は上がるし出世もします。ただマイナス評価はしません。 三谷 マネージャーは、ひとり何人くらい担当するんですか? 津嶋 優秀な人は2年目から独り立ちします。売れている子を持たせたり、ひとりで3、4人持たせますね。でも力量がないと、3年、4年たってもアシスタント・マネージャーだったり、あまり数を持たせなかったりしますね。 三谷 新人タレントは、どれくらいの売上目標なんですか。ある事務所から聞いた話ですが、年間100万を上げるだけでも、けっこう大変だと。 津嶋 新人のギャラは、本当に安いですよ。 三谷 例えば、「ホリプロタレントスカウトキャラバン」のグランプリの新人の場合、初年度の売上目標はいくらくらいなんですか? 津嶋 スカウトキャラバンは何千万円もかけてやるプロジェクトですが、それを何年もかけて回収していきます。グランプリを獲って鳴り物入りで入ってきた新人はプレッシャーもありますよ。でも最高でも年間300万くらいです。グランプリになった子はあらかじめ仕事を入れてますから、その分のギャラがもうありますけどね。 三谷 タレント一人にかかる経費(原価)というのは、どんなものがあるんですか。 津嶋 本人に払うギャラ、スタイリストやメイクの費用、宣材費、交通費、食費、演技レッスンやダンスレッスンなどの費用などですね。 三谷 マネージャーの給料は? 津嶋 マネージャーの人件費は、全体的に部署の中で。 三谷 販管費みたいなものですね。やはり一部上場されていたので、その辺はかなり細かく決めておられますね。 津嶋 うちは経理がちゃんとしてますので。 三谷 津嶋さんくらいになると、タレントの顔を見たら年間の利益は、これくらいだなと見えるんじゃないですか。 津嶋 まあ、もちろん見えますけど。年度初めに売上目標は立てるんですけど、あんまりお金のことを考えずにやっています。あまりそっちばかりを考えると仕事の選び方を間違えてしまうので。それよりは、いい仕事を取ろうということですね。 ©2021映画「NO CALL NO LIFE」製作委員会 独立問題とエージェント制  三谷 最近、業界全体でタレントの独立が増えていますね。 津嶋 それは、マネージメントの危機だと思っています。いまYouTubeなど自分の力だけで表現できる場がありますからね。ただ、ダウンタウンの松本人志さんが「自分はお笑いしかしたくない、他の面倒臭いことをしたくないから事務所にいる」と話しているのを聞いたことがありますが、独立したら、事務処理やスケジュール・ギャラ交渉などがあって、これが大変神経を使う作業なんです。自分は芝居しかしたくない役者は、絶対に事務所にいたほうがいいと私は思いますね。 三谷 マネージャーの仕事は、本当に細やかで多岐にわたっていますからね。 津嶋 たとえば、ギャラが10万だとして、そのうちの3万が事務所の取り分とすると、その3万でマネージャーがどれだけの仕事をしているのか、フリーになると思い知りますよ。そして、まず3万取られるという発想がいけない。その3万ですごいことをやっているし、そう思わせないと、僕らの負けです。 三谷 独立の問題は経営課題になっていますか。 津嶋 うちは辞める人がほとんどいないから(笑)。制作側の立場からしますと、キャスティングするとき、事務所があると、やはり安心なんです。フリーの人は、もし現場に来なかったらどうしようとか、撮影から公開までの間にスキャンダルを起こしたらどうしようとか不安があります。リスクヘッジを事務所がしてくれないので、なかなかキャスティングする勇気はないですね。 三谷 特にテレビやCMはスポンサーとの向き合いがありますからね。最近の動きとしては、エージェント契約の考え方も出てきていますが、いかがですか。 津嶋 アメリカや韓国はエージェント契約が主流ですね。しかし、僕たちマネージメント会社はそれを認めると負けなんですね。エージェント契約は役者がクライアントです。エージェントが仕事を持ってきて役者がジャッジする。それで役者がその仕事をやるとなったら、エージェントが手数料をいくらか取るシステムです。すると、エージェントは高い仕事しか持ってこないんですよ。判断基準は質のいい仕事よりもギャラの高い仕事です。マネージメント契約はまずマネージャーが仕事もギャラもジャッジします。もちろん、役者がやらないと言ったら仕方ないですけど、たとえ安い仕事でも質のいい仕事なら持ってくる。役者の売り方をロングレンジで考えていますから。 三谷 そもそもエージェントという考え方は、すでに売れている俳優が利用する制度という考え方があります。 津嶋 売れていないと、俳優は勝手にオーディンションを受けに行きますからね、エージェントを通さずに。エージェントが営業をするところもありますが、基本的には来た仕事をさばいたり、契約書を交わす役割がメインのスタンスなので、アメリカは弁護士がやっていることが多いみたいですね。 三谷 エージェント制は日本に馴染むんでしょうか。いずれにしても、役者が相当勉強しないといけないですね。自分で判断できるスキルもあって、いろんなパイプもある、そういう人であれば、エージェントというのも考えられるのかもしれませんね。 津嶋 もちろん、そのほうが合理的だという考え方もありますから、これから出てくる可能性はありますね。 俳優を志す人に向けて作られた『俳優の教科書』。現在19,500部の大ヒットシリーズ 俳優やタレントを目指す人へ 三谷 最後に、これから俳優やタレントを目指す方に向けてアドバイスをお願いしたいのですが。 まず、ホリプロに所属するにはどうすればいいですか。 津嶋 10代であれば、スカウトキャラバンがありますし、いろんなオーディションをやっていますから応募してください。高畑充希はスカウトキャラバンではなく、舞台のオーディションでした。でも、スカウトキャラバンが分かりやすいですね。実はグランプリだけを採るわけではなくて、ファイナリストや予選で落ちた子でも、マネージャーが見ていますからね。それから、あまり良いことばかり言っても仕方がないので言いますが、うちは10代からじっくり育成するのが得意な事務所なんです。ですから、30代や40代の人は入りづらいです。なぜならば10代から育てている人がいるので、そのライバルをわざわざ採ることはあまりしていない。そのために、ホリプロ・ブッキング・エージェンシーを作ったんですけどね。そこは、キャリアがすでにある人や、無名でも舞台などで実力のある人が所属しています。 三谷 鈴木亮平さんも特殊なケースですよね。 津嶋 鈴木亮平はいろんな事務所に飛び込み営業をしていたんです。それでモデル事務所に入って、そこが当時ホリプロの系列だったし、本人が役者をやりたいと言っていると聞いて、会ってみたら「いいじゃん」となった。そういうふうに飛び込みでという人もなくはないですが、基本は断られますね。 三谷 なるほど。ちなみに売れる人に共通点ってあるのでしょうか? 津嶋 それはもう、やってみないとわからない。よく言われるんですが、タレント6割、マネージャー4割と。仮に80点取れたらスターになれるとしたら、タレントだけが頑張っても60点だし、マネージャーだけでも40点。両方頑張ってはじめてスターになれるのかなと思います。 三谷 ホリプロは製作会社でもあることが、大きな強みだと思うのですが、津嶋さんが映像事業部に戻られてから映画の製作本数が増えましたね。 津嶋 2010年に50周年を迎えて、そのときはマネージメントの部長だったんですが、いざ「周年映画」を作ろうとなったとき、当時、うちの映像事業部は悔しいことに大きな映画を作る体力がなかったんですよ。台本を作ってキャスティングまではしたのですが、現場の制作は別の映画制作会社に発注したんです。でもそれはもったいないから、うちで作れたほうがいいんじゃないかと。それで映像事業部に異動したとき、映画も作れる部署にしようと思ったんです。映画の場合は下手したら赤字になるのでリスクもありますが、出資をすると映画はヒットすると配分もあるし二次使用料も入りますからね。もちろんテレビも面白いですが、映画は特別な感じがありますよね。 三谷 外部にもう制作を委託していないんですか。 津嶋 それが、社員数の割に企画がどんどん決まりますから、人が足りず外部の方に作ってくださいというケースもあります。プロデューサーからすれば、ずっと現場で関わっていたい人もいますから、忸怩たる思いで外部に出すんです。本当はやりたくないんですが……。 三谷 自社で製作もして、マネージメントもしていると、キャスティングのバランスで迷ったりしませんか。 津嶋 それはあります。僕はマネージャー歴が長いので、うちのプロデューサーにとにかくホリプロの役者を使えと言って、うっとうしがられています(笑)。 三谷 でも津嶋さんがエグゼクティブ・プロデューサーにクレジットされている「勝手にふるえてろ」は松岡茉優さん、「娼年」は松坂桃李さんで、他の事務所の俳優ですよね。 津嶋 あの役は松岡さんと、松坂さんしかできなかったですね。他の事務所さんにもいっぱい、いい人がいますから。うちの子が主役ではまらないときは、他の役でキャスティングするとかね……。 三谷 津嶋さんは、インディペンデント映画の監督や俳優まで、たくさんご覧になっていますよね。 津嶋 もちろんですよ。うちはインディペンデント映画の祭典のぴあフィルムフェスティバルのオフィシャルパートナーでして、エンタテインメント賞(ホリプロ賞)も毎年出しているんですが、昨年その賞を獲った「スーパーミキンコリニスタ」という映画の主役をやった高山璃子さんがすごく魅力的でね。うちの作品にいまよく出てもらっています。いろんな人の目に留まることが大事だから、インディペンデント映画も、出ないよりは出たほうがいいですね。 三谷 ホリプロはプロデューサーも若返っていますよね。 津嶋 「勝手にふるえてろ」はうちの白石裕菜という女性が20代で企画・プロデュースしたんです。僕も経験がありますが、20代でやりたいことがいっぱいあるときに、ADやAPの仕事でどんどん疲弊していって、どんどん夢が失われていく。そういうのをどうしても避けたいと思ってね。それで公開中の「NO CALL NO LIFE」は60周年映画としてプロジェクトを立ち上げましたが、20代限定で企画募集して、当時24歳の佐藤慎太朗に白羽の矢を立ててプロデューサーにしました。彼が一緒にやりたいと言った監督の井樫彩さんも20代だし、主役の優希美青、井上祐貴も20代です。みんな20代で作ったから、大人が見ると理解できないところもあるかもしれない。でも大人になると忘れてしまう、そっちに行ったら危ないとわかっていても、どんどん危険な方に行ってしまうという、ヒリヒリした恋愛を描いた映画です。ぜひ見てほしいと思います。 三谷 井樫彩監督は「真っ赤な星」で長篇デビューし、映画24区が企画に参加した「21世紀の女の子」の1本を撮って、「NO CALL NO LIFE」が長篇2本目ですよね。僕も拝見したんですが、津嶋さんに「60周年、これで大丈夫ですか」って聞きましたよね(笑)。ホリプロのイメージだと、もっとニコニコとかホンワカした映画かなと思っていたら、けっこうギリギリのところを攻めていて。 津嶋 高校生の恋愛映画ですが、ぜんぜんキュンキュンしない(笑)。つらい恋愛映画です。因みに、ホリプロの50周年映画「インシテミル」は殺し合う映画ですし、40周年は藤原竜也主演の「仮面学園」と深田恭子主演の「死者の学園祭」ですからね。映画なんだから、いいんですよ、それで(笑)。 「NO CALL NO LIFE」全国公開中 / 2021年6月25日から、アップリンク吉祥寺で上映スタート! 監督・脚本:井樫彩 / 原作:壁井ユカコ 出演: 優希美青、井上祐貴、犬飼貴丈、小西桜子、山田愛奈 ©2021映画「NO CALL NO LIFE」製作委員会 / 公式HP:http://nocallnolife.jp/   <プロフィール> 津嶋敬介(つしま・けいすけ) 1964年奈良県生まれ。株式会社ホリプロ取締役(映像事業部担当)。関西学院大学法学部卒業。1987年株式会社ホリプロダクション(現・株式会社ホリプロ)入社。映像事業部に配属されCMやドラマなどのAD・APを務める。1990年マネージメント第一事業部に異動。マネージャー、チーフ・マネージャーを経て、2003年部長に就任。2013年より映像事業部の執行役員として、映画、ドラマ、バラエティ、ドキュメンタリー、CM、配信、web動画などの映像事業を統括する。2016年6月、取締役に就任。優希美青と井上祐貴が主演したホリプロ60周年記念映画「NO CALL NO LIFE」など数々の映画をプロデュースしている。   三谷一夫(みたに・かずお) 1975年兵庫県生まれ。株式会社映画24区代表。関西学院大学経済学部卒業。東京三菱銀行にて10年間、エンタメ系企業の支援に従事。2009年に「映画人の育成」「映画を活用した地域プロデュース」を掲げて映画24区を設立。最近のプロデュース参加作品に『21世紀の女の子』や全国の自治体とタッグを組んだ「ぼくらのレシピ図鑑」シリーズなど。第1弾「36.8℃ サンジュウロクドハチブ」(安田真奈監督)に続き、第2弾「夏、至るころ」(池田エライザ監督)が全国公開中。著書に『俳優の演技訓練』『俳優の教科書』(フィルムアート社)がある。 【映画俳優スタートアップONLINE】の詳細は下記にて 昨年10月より映画俳優の育成を支援するオンラインサービス「映画俳優スタートアップONLINE」を開始。全国から年齢、経験を問わず募集中。☛ 映画俳優を志す人のためのオンライントレーニング【映画俳優スタートアップONLINE】
  • 千葉県柏市のキネマ旬報シアターでは、最新作「すばらしき世界」の当館初公開に併せて、6月26日(土)~7月16日(金)に<西川美和監督特集>を開催。特集初日には、西川美和監督のトークショーの実施が決定しました! これまでオリジナル脚本で国内外で高く評価される映画を作り続けてきた西川美和監督が、直木賞作家・佐木隆三のノンフィクション小説「身分帳」を原案に、長編映画としては初めて原作ものに挑んだ映画「すばらしき世界」。役所広司をはじめ、仲野太賀、長澤まさみら、豪華なキャスト陣が集結し、今年2月の劇場公開時には大きな反響を呼んだ。今回、キネマ旬報シアターでは、「すばらしき世界」の当館初公開に併せて、歴代のキネマ旬報ベスト・テンで受賞した西川美和監督作品3本を併せて一挙に上映します。日本映画を象徴する俳優たちの代表作は、なぜいつも西川美和監督作品なのか。4本の西川美和監督作品と、貴重なトークショーでその魅力に触れてください。 <西川美和監督特集>では、第80回キネマ旬報ベスト・テン日本映画第2位の「ゆれる」(2006)、第83回キネマ旬報ベスト・テン日本映画第1位「ディア・ドクター」(2009)、第90回キネマ旬報ベスト・テン日本映画第5位「永い言い訳」(2016)を旧作料金(一般1400円、大学生1000円、高校生・中学生500円ほか/詳細は劇場ホームページ御参照)で上映。「ゆれる」と「ディア・ドクター」は、貴重な35mmフィルム上映となります。 <トークショー> 6月26日(土)11:40の回 スクリーン3「すばらしき世界」上映後 登壇者:西川美和監督 ※敬称略 ※チケットの発売は当日、当館チケットカウンターにて朝8:45より開始いたします。 全席指定席です。定員に達し次第販売終了とさせていただきます。予めご了承ください。 ※ゲストは予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください   <西川美和監督特集>上映作品 ©佐木隆三/2021「すばらしき世界」製作委員会 「すばらしき世界」 6/26(土)~7/16(金)以降未定 ※上映時間 6/26(土)11:40~、6/27(日)~7/2(金)11:00~ 7/3(土)以降の上映時間は、順次劇場ホームページにて発表 監督・脚本:西川美和 原案:佐木隆三 出演:役所広司、仲野太賀、長澤まさみ、安田成美、梶芽衣子、橋爪功 (2021年/126分/G/日本)   ©2006「ゆれる」製作委員会 「ゆれる」 6/26(土)~7/2(金) ※上映時間 6/26(土)14:55~・17:45~、6/27(日)~7/2(金)13:25~・17:45~ 監督・脚本:西川美和 出演:オダギリジョー、香川照之、真木よう子 (2006年/119分/日本)※35mmフィルム上映 第80回キネマ旬報ベスト・テン 日本映画第2位、脚本賞(西川美和)、助演男優賞(香川照之)   ©2009「ディア・ドクター」製作委員会 「ディア・ドクター」 7/3(土)~7/9(金) ※上映時間は、順次劇場ホームページにて発表 監督・原作・脚本:西川美和 出演:笑福亭鶴瓶、瑛太、余貴美子、松重豊、中村勘三郎、香川照之、八千草薫 (2009年/127分/日本)※35mmフィルム上映 第83回キネマ旬報ベスト・テン 日本映画第1位、脚本賞(西川美和)、主演男優賞(笑福亭鶴瓶)、読者選出日本映画監督賞(西川美和) ©2016「永い言い訳」製作委員会 「永い言い訳」 7/10(土)~7/16(金) ※上映時間は、順次劇場ホームページにて発表 監督・原作・脚本:西川美和 出演:本木雅弘、竹原ピストル、池松壮亮、黒木華、深津絵里 (2016年/124分/PG-12/日本) 第90回キネマ旬報ベスト・テン 日本映画第5位、助演男優賞(竹原ピストル)   ◎西川美和監督(映画監督、脚本家、小説家) 1974年生まれ、広島県出身。オリジナル脚本・監督デビュー作「蛇イチゴ」(2002)で第58回毎日映画コンクール脚本賞受賞。長編第二作「ゆれる」(2006)は第59回カンヌ国際映画祭監督週間に正式出品され国内で9ヶ月のロングラン上映に。続く「ディア・ドクター」(2009)で第83回キネマ旬報ベスト・テン日本映画第1位を獲得。その後「夢売るふたり」(2012)、「永い言い訳」(2016)とつづけてトロント国際映画祭に参加するなど海外へも進出。一方で小説やエッセイも多数執筆しており、『ディア・ドクター』のための僻地医療取材をもとにした小説「きのうの神さま」、映画製作に先行して書いた同名小説「永い言い訳」がそれぞれ直木賞候補となるなど高い評価を受けている。「すばらしき世界」の制作過程を綴った『スクリーンが待っている』(STORY BOX/小学館)が発売中。 【キネマ旬報シアター】 千葉県柏市末広町1-1 柏高島屋ステーションモール S館隣り TEL:04-7141-7238

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