デヴィッド・フィンチャー デヴィッドフィンチャー

  • 出身地:コロラド州デンバー
  • 生年月日:1962/05/10

略歴 / Brief history

【善と悪の葛藤をテーマに鮮烈な映像を駆使する新世代作家】アメリカ、コロラド州デンバーの生まれ。カリフォルニアで育ち、10代の頃にオレゴン州に移り住む。父は『ライフ』誌のライター。18歳で映像制作会社に就職し、その後、1981年から83年までジョージ・ルーカスのILM(Industrial Light and Magic)で働いて映像技術の腕を磨いた。CM制作者として独立したのちの86年、映像制作会社プロパガンダ・フィルムを共同で設立。大手企業のCMや、マイケル・ジャクソン、エアロスミスら大物アーティストのミュージックビデオを手がける。その独特な映像感覚が注目され、人気シリーズの第3作「エイリアン3」(92)の監督に抜擢されて映画界にデビュー。新人の作品としては史上最大の製作費が話題となったものの、実は代打登板であって現場は混乱、結果的に一部で絶賛されながらも興行的には失敗した。このあと一時的に映画を離れ、ローリング・ストーンズのミュージックビデオでグラミー賞を獲得。95年、史上にも稀なバッド・エンディングのサイコ・スリラー「セブン」が世界中で大ヒットし、ヒットメーカーとしての地位を確立する。続けて奇抜なプロットの作品を連作。生死を賭けたドッキリ企画に巻き込まれる「ゲーム」(97)が日本では好評、「ファイト・クラブ」(99)は世界的なカルト人気を得る一方、避難シェルターでの攻防戦を描く「パニック・ルーム」(02)は多くの不興を買うなど、常に話題を振りまいていった。2007年の「ゾディアック」はカンヌ映画祭に出品、改めて映画作家としての先鋭さを示し、08年の「ベンジャミン・バトン/数奇な人生」で、初めてアカデミー監督賞にノミネートされている。【より成熟した視点で人の営みを見つめる】ミュージックビデオ等の評価によりいきなり大作を任されるかたちでの、異業種監督の先駆者。ILMでの経験もふまえ、SFやファンタジーに限らず特殊効果を積極的に用い、鮮烈な構図や色使いで観客の目を釘付けにする映像派としてまず認識された。スリラー風味の奇抜な物語を多く手がけ、「セブン」の七つの大罪をなぞる連続殺人、「ゲーム」の誕生日サプライズ、「ファイト・クラブ」の破壊工作に発展する格闘同好会など、道徳倫理を超えたゲームが現実化していく悪夢を紡ぎ出す。それを単なる悪趣味に終わらせないのは、根底に流れる“善と悪の葛藤”のテーマだった。「セブン」同様に犯罪者が人知を超えた絶対悪として描かれる「ゾディアック」、内なる悪との戦いと決別を描く「ファイト・クラブ」はもちろん、自ら大作B級映画と称する「パニック・ルーム」にもこれは当てはまる。「ゾディアック」に続いてデジタルカメラを使用した「ベンジャミン・バトン/数奇な人生」では、CGIを駆使した目眩い映像世界を展開しつつ、より成熟した視点で人生を描き、善も悪も人間の営みの一部として受け入れようという視点が見受けられる。

デヴィッド・フィンチャーの関連作品 / Related Work

作品情報を見る

  • ザ・キラー

    制作年: 2023
    「セブン」「Mank/マンク」のデヴィッド・フィンチャー監督、「スティーブ・ジョブズ」のマイケル・ファスベンダー主演によるサスペンス。とある“ニアミス”により岐路に立たされた暗殺者が、雇い主や自分自身にさえ抗いながら、世界を舞台に追跡劇を繰り広げてゆく。共演は「アラビアンナイト 三千年の願い」のティルダ・スウィントン「Mank/マンク」のアーリス・ハワード。2023年10月27日より一部劇場にて上映。11月10日よりNetflixにて配信。
  • Mank マンク

    制作年: 2020
    映画史に輝く、不朽の名作「市民ケーン」誕生の舞台裏を描くNetflixオリジナル映画。後に「市民ケーン」の脚本で、アカデミー賞脚本賞を受賞する、主人公のアルコール依存症の脚本家ハーマン・J・マンキーウィッツをオスカー俳優ゲイリー・オールドマンが演じ、デビッド・フィンチャーが監督した。2020年12月4日からのNetflixでの独占配信に先駆けて、2020年11月20日から、劇場限定公開。
  • 蜘蛛の巣を払う女

    制作年: 2018
    天才ハッカー、リスベット・サランデルの活躍を描いた「ドラゴン・タトゥーの女」に続くミステリー第2弾。AIの世界的権威から核攻撃プログラムの奪回を依頼されたリスベットは、やがて16年前に別れた双子の姉妹カミラの罠に落ちたことに気付くが……。リスベットを演じるのは、「ブレス しあわせの呼吸」のクレア・フォイ。前作でメガホンを取ったデヴィッド・フィンチャーは製作総指揮に回り、本作では「ドント・ブリーズ」のフェデ・アルバレスが監督を務める。
    70
  • ヒッチコック/トリュフォー

    制作年: 2015
    “映画の教科書”と呼ばれる書籍『定本 映画術 ヒッチコック/トリュフォー』を紐解くドキュメンタリー。トリュフォーによるヒッチコックのインタビューの音声と、現代のフィルムメーカーたちのインタビューを交え、ヒッチコックの映画術をよみがえらせる。監督は、NY国際映画祭のディレクターを務めるケント・ジョーンズ。2015年カンヌ国際映画祭クラシック部門出品。
    70
  • ゴーン・ガール

    制作年: 2014
    「セブン」「ソーシャル・ネットワーク」など独特の美しさをたたえた映像で人間の暗部を描いてきたデヴィッド・フィンチャー監督が、日本でも2014年『このミステリーがすごい!』海外編にランクインしたスリラー小説を映画化。田舎町に越してきた誰もが羨むような夫婦の妻が突如失踪、夫に疑いの目が向けられ夫婦の秘密が露見していく。原作者ギリアン・フリンが自ら脚本を手がけた。ライターの仕事を失い故郷に戻った夫を「アルゴ」のベン・アフレックが、高名な童話作家の両親を持つ完璧な妻を「アウトロー」のロザムンド・パイクが演じる。ほか「スマーフ」のニール・パトリック・ハリス、「バーニング・クロス」のタイラー・ペリーらが出演。
    60
  • サイド・バイ・サイド:フィルムからデジタルシネマへ

    制作年: 2012
    長きにわたり映画の記録媒体であったフィルムがデジタルシネマの台頭により消えつつある現状を踏まえ、誕生以来技術革新を重ねてきた映画の未来について考察するドキュメンタリー。「マイ・プライベート・アイダホ」「スピード」「マトリックス」など長きにわたり映画に携わり、映画が作られるプロセスの変化を見つめてきた俳優キアヌ・リーブスが本作を企画製作。キアヌ自身がナビゲーターとして、「ディパーテッド」のマーティン・スコセッシ、「スター・ウォーズ」のジョージ・ルーカス、「タイタニック」のジェームズ・キャメロンらハリウッドを代表する名だたる監督や撮影監督、編集技師などの映画関係者にインタビューをしている。

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