小林政広 コバヤシマサヒロ

  • 出身地:東京都文京区本郷
  • 生年月日:1954/01/06

略歴 / Brief history

【起死回生の40代デビューから、カンヌ映画祭常連監督へ】東京都文京区本郷の生まれ。学習院高等科を卒業後、フォーク・シンガーを目指して高田渡に師事。林ヒロシの名で活動し、22歳の時に自主制作レコード『とりわけ10月の風が』を発表する。その後、牛乳配達、コンピューター会社社員、喫茶店ウエイターを経て郵便局に就職。5年後の27歳の時に退職し、フランソワ・トリュフォーに弟子入りするため単身渡仏。トリュフォーに会うことは叶わず、1年をパリに暮らす。帰国後、業界紙の記者として働きながら脚本を書き始め、『名前のない黄色い猿たち』が第八回城戸賞を受賞。それを機に野村芳太郎と松本清張のプロダクション“霧プロ”に出入りしアニメやテレビドラマ、ピンク映画の脚本家として活躍するようになる。1996年、脚本家時代の貯金と人材を注ぎ込み、初監督作「CLOSING TIME」を自主製作。ゆうばり国際ファンタスティック映画祭で日本人初のグランプリを受賞する。続く「海賊版=BOOTLEG FILM」(98)、「殺し」(00)、「歩く、人」(01)が3年連続でカンヌ映画祭へ出品される。2005年、前年イラクで起きた日本人人質事件を材にとり、4度目のカンヌ出品作となった「バッシング」で世界的な注目を集める。そして自ら主演もつとめた「愛の予感」(07)が、スイスのロカルノ国際映画祭で金豹賞(グランプリ)を獲得。カンヌ、ロカルノをはじめ世界一級の国際映画祭の常連となり、最も知名度の高い現役日本人監督のひとりとなった。【荒涼とした北の大地との親和性】脚本家時代は小林宏一の名義も使用、特にピンク映画のサトウトシキ監督とのコンビ作で名を馳せた。作家主義にもとづくインディーズ監督として活動。デビュー以来、おおよそがセルフ・プロデュース作品であり、自身の企画・脚本に則って創作活動を続けている。「海賊版=BOOTLEG FILM」の撮影で訪れて以来、北海道を舞台にするのを好み、とりわけ苫小牧では「フリック」(04)、「バッシング」(06)、「愛の予感」「幸福/Shiawase」(08)の4本を製作。また「気仙沼伝説」(06)と「ワカラナイ」(09)は宮城県気仙沼市で撮影しており、北の地方特有の青みがかった風景と荒涼、寂寥感を反映させた舞台設定にこだわりをみせる。「低予算でいい映画を作るには脚本が命」と語る。その独創性と早書きはよく知られるところ。登場人物の行動・動作の反復からダイナミズムを生み出す演出が特徴的で、アルコール中毒者の妄想劇「フリック」よりそれは顕著になり、「愛の予感」で確立される。特異な風貌を生かして同作には主人公役で主演し、「ワカラナイ」にも助演で出演している。シンガーだった経歴から主題歌も手がけるなどして豊富な経歴を映画に役立て、年1本のペースで新作を発表。09年には3本もの作品を撮り上げた。

小林政広の関連作品 / Related Work

作品情報を見る

  • 帰郷(2019)

    制作年: 2019
    藤沢周平による同名短篇小説を仲代達矢主演で映像化。若かりし頃、訳あって木曾福島を出奔した宇之吉は、流浪の旅を続け、病に倒れた旅の空で見た風景に故郷への思いを馳せる。老い先を悟った宇之吉は、寄る辺なき帰郷を果たすが、そこに守るべき存在を見出す。共演は「だれかの木琴」の常盤貴子、「羊の木」の北村一輝、「散り椿」の緒形直人。監督は「最後の忠臣蔵」の杉田直道。第32回(2019)東京国際映画祭特別上映作品。
  • 橋ものがたり「小さな橋で」

    制作年: 2017
    藤沢周平の短篇集『橋ものがたり』の一篇を「最後の忠臣蔵」の杉田成道監督が映像化。10歳になる広次は母・おまき、姉・おりょうと3人暮らし。飲み屋で懸命に働きながらも自分の元を去った父・民蔵に恨み言をこぼす母を、広次は複雑な思いでみつめていた……。出演は「古都(2016)」の松雪泰子、「天空の蜂」の江口洋介、「クロユリ団地」の田中奏生、「クリーピー 偽りの隣人」の藤野涼子、「THE NEXT GENERATION パトレイバー」シリーズの筧利夫、「散歩する侵略者」の笹野高史、「めがみさま」の松井玲奈、「おかえり、はやぶさ」の中村梅雀。脚本は「海辺のリア」の小林政広。
  • 海辺のリア

    制作年: 2016
    小林政広監督と仲代達矢が「春との旅」「日本の悲劇」に続き三度組んだ人間ドラマ。認知症の疑いがかかった往年のスター桑畑兆吉は家族に騙され老人ホームに入居。脱走し海辺をさすらううちに妻以外の女に産ませた娘と再会し、彼の胸に人生最後の輝きが宿る。芝居をこよなく愛しシェイクスピア四大悲劇の一つ『リア王』と自身を重ねる兆吉を仲代達矢が演じるほか、「リップヴァンウィンクルの花嫁」の黒木華、「蜩ノ記」の原田美枝子、『深夜食堂』シリーズの小林薫、「海よりもまだ深く」の阿部寛らが出演。
    60
  • 果し合い

    制作年: 2015
    藤沢周平原作、仲代達矢主演、「最後の忠臣蔵」の杉田成道監督による時代劇。厄介者の部屋住みとして生涯の大半を過ごしてきた老武士・佐之助は、ある日、甥の娘・美也が慕う相手に果し合いが申し込まれたことを知り、身を捨てる覚悟で刀を手にする。脚本を「春との旅」の小林政広、音楽を「蜩ノ記」の加古隆が担当。共演は「最後の忠臣蔵」の桜庭ななみ、「痕跡や」の柳下大、「脇役物語」の益岡徹、「愛を乞うひと」の原田美枝子。2015年11月7日より東劇にて1週間限定上映。
  • 日本の悲劇(2012)

    制作年: 2012
    「春との旅」に続き、小林政広監督が再び主演に仲代達矢を迎えたヒューマンドラマ。ある家族の崩壊を通して日本が陥っている“無縁社会の深淵”を描く。共演は「龍が如く 劇場版」の北村一輝、「ぼくはうみがみたくなりました」の大森暁美、「キャタピラー」の寺島しのぶ。
  • ギリギリの女たち

    制作年: 2011
    「ええじゃないか・ニッポン宮城篇~気仙沼伝説」の撮影をきっかけに、気仙沼市に居をかまえた小林政広監督が被災地の復興を祈願して、2006年に書き上げてあった脚本を再構築し映画化。冒頭の35分間をワンカット、全編をわずか28カットという、実験的かつ大胆な手法で構成された意欲作。2012年3月9日より大阪で開催された第7回大阪アジアン映画祭にて上映された。

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