ナンニ・モレッティ

  • 出身地:トレンティノ=アルト・アディジェ州ブルニコ
  • 生年月日:1953/08/19

略歴 / Brief history

【反体制左派から生まれ出たイタリア映画復興の牽引者】イタリア、最北東部トレンティノ=アルト・アディジェ州のブルニコで生まれたが、実情はローマ育ち。15歳から映画と水球に熱中し、高校卒業後に8ミリの短編を撮り始める。1976年に自作自演の長編「僕は自立人間」を発表。これが16ミリにブローアップされて一般公開に至り、若者の圧倒的な支持を得た。続く78年の「青春のくずや~おはらい」(撮影は16ミリ)でも友人を役者に起用、不安とフラストレーションを抱えた同時代の無為な青春を描き、ポスト反体制世代の共感を集めて大ヒットとなった。81年には35ミリ撮影で、映画製作に取り組む監督の苦悩を自身の主演で描いた「監督ミケーレの黄金の夢」がヴェネチア映画祭の特別金獅子賞を受賞。次作の「僕のビアンカ」(83)以降、反体制運動に揺れた同時代社会を背景に、自作自演により左翼的主張をコメディ・スタイルで表現するドラマ作りが続き、85年の「ジュリオの当惑」ではベルリン映画祭銀熊賞を受賞。一方、国内ではもっぱら俳優監督のスターとして活躍していた90年代に入ると実名の映画日記スタイルに転じ、癌との闘病を経て撮った「親愛なる日記」(94)がカンヌ映画祭の監督賞を受賞。50年代ふうミュージカルに取り組む日記映画「ナンニ・モレッティのエイプリル」(98)ののち、一転してシリアスドラマに取り組んだ「息子の部屋」(01)でカンヌのパルムドールを獲得、世界的巨匠の風格を備える。その後は短編作品を除き沈黙を保ったが、2006年に「カイマン」(日本未公開)を発表。現イタリア大統領の人生を映画化するプロデューサーの姿を描き、本国では総選挙直前に公開されて大反響を呼んだ。【イタリアのウディ・アレンと呼ばれて】戦後イタリア映画の凋落期にあたる70年代半ばに登場、同時期には若い戦後世代による“新しい喜劇”群が台頭し、その一翼で名を馳せた。彼らの作品は多くが自作自演で、国際的スターの不在ゆえ国内人気に留まっていたが、90年代に入ると各国で作家特集が組まれはじめ、同趣向のロベルト・ベニーニやジュゼッペ・トルナトーレに並び、イタリア映画の復興を牽引する作家のひとりとなった。その作風は反体制に揺れた70年代イタリア社会の情勢と切り離しがたく、左派の立場から自主製作に取り組んだ出発点は、ネオリアリスモの流れを汲む。また80年代までの長編作は「ジュリオの当惑」を除き、すべて自演のミケーレという人物を主人公に据え、自己を仮託して左派の主張を織り込み、あるいは映画づくりの奮闘を描いてきた。「親愛なる日記」以後はよりパーソナルな意匠が強まり、こうした自伝的姿勢はフェデリコ・フェリーニの衣鉢を継ぐものだったが、神経症的な饒舌さや自己諧謔性を特徴としたことから、“イタリアのウディ・アレン”と呼ばれることになった。名声を決定づけた「息子の部屋」では客観ドラマに方向転換を図ったかに見えたが、精神分析医を演ずることがテーマのひとつにあったと自身は語り、ここで一度、主人公および自作の客観視を試みたと考えられよう。映画監督以外では、若手のために製作資金集めと映画賞を設置、さらに劇場経営にと活動を広げている。

ナンニ・モレッティの関連作品 / Related Work

作品情報を見る

  • チネチッタで会いましょう

    制作年: 2023
    「監督ミケーレ黄金の夢」でヴェネツィア、「ジュリオの当惑とまどい」でベルリン、「親愛なる日記」でカンヌと、40歳にして3大映画祭を制覇したナンニ・モレッティ監督が製作・脚本・出演も兼ねたコメディ・ドラマ。イタリア・ローマ郊外にあるヨーロッパ最大の撮影スタジオ、チネチッタ撮影所で撮影を敢行した。映画監督ジョヴァンニは新作の撮影中に立て続けに災難に見舞われ、自分が時代の変化についていけていないことに気付き、悩み焦り始める。ベテランの映画監督ジョヴァンニをナンニ・モレッティ監督自身が演じるほか、「母よ、」などモレッティ監督作常連のマルゲリータ・ブイや、フランスの俳優・監督マチュー・アマルリックらが出演。2023年第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品作品。
  • 3つの鍵

    制作年: 2021
    ローマ の高級住宅街。同じアパートに住む3つの家族。顔見知り程度の隣人たちの扉の向こう側の顔を誰も知らない。ある夜の交通事故をきっかけに、それぞれがした選択が、次第に彼らをぎりぎりの淵まで追い詰めていく。扉を固く閉ざしてしまった彼らの、未来への扉を開く鍵は何なのか…‥。第74回カンヌ国際映画祭正式上映作品。2022年9月HTC有楽町他全国順次公開。(イタリア映画祭2022公式HPより)
  • 母よ、

    制作年: 2015
    ナンニ・モレッティによる自叙伝的作品。恋人と別れ、娘との関係も上手くいかず、さらに入院中の母の世話を抱えている女性映画監督マルゲリータ。アメリカから到着した主演俳優バリーとも確執が続く中、病院から母の余命宣告を受けてしまう。出演は「はじまりは5つ星ホテルから」のマルゲリータ・ブイ、「ジゴロ・イン・ニューヨーク」のジョン・タトゥーロ、「ローマ法王の休日」のナンニ・モレッティ。2015年(第68回)カンヌ国際映画祭エキュメニカル審査員賞受賞。
    67
  • ローマ法王の休日

    制作年: 2011
    選出されたくないという願いもむなしく選ばれてしまった新しいローマ法王が、大観衆へ向けた就任演説直前にローマの街に逃げ出すハートウォーミングなコメディ。監督・脚本は「息子の部屋」でカンヌ国際映画祭の最高賞であるパルム・ドールを獲得したナンニ・モレッティ。本作に出演もしている。「昼顔」「ここに幸あり」などで知られるフランスの名優ミシェル・ピッコリが、逃げた先のローマで街の人々や彼らの真心などに触れて自らの存在意義を見出していく新法王をチャーミングに演じる。他、「アマチュア」のイエルジー・スチュエル、「イル・ポスティーノ」のレナート・スカルパらが出演。第64回カンヌ国際映画祭正式出品作品。
    70
  • クワイエット・カオス パパが待つ公園で

    制作年: 2008
    「息子の部屋」のナンニ・モレッティ脚本、主演のヒューマンドラマ。
  • それぞれのシネマ「映画ファンの日記」

    制作年: 2007
    『あなたにとって映画館とは』をテーマに、世界の名匠たちが【3分間】で撮ったオムニバスの一遍。カンヌ国際映画祭の60回目の開催を記念し製作された。