シドニー・ルメット シドニー・ルメット

  • 出身地:アメリカ、ペンシルヴェニア州フィラデルフィア
  • 生年月日:1942年6月25日
  • 没年月日:2011年4月9日

略歴 / Brief history

【アメリカの問題を鋭く抉る社会派監督】アメリカ、ペンシルヴェニア州フィラデルフィアの生まれ。父がラジオ局のディレクター、脚本家、俳優をやっていた関係で、ラジオやブロードウェイに子役として出演した。1942年、コロンビア大学に入るが、同時に第二次大戦の部隊に入隊、レーダーの修理係として極東に行く。46年に除隊してブロードウェイに戻り、初期のアクターズ・スタジオに参加したり、グリニッチ・ヴィレッジで劇団を組織して3年間、オフ・ブロードウェイで仕事をする。やがて俳優生活に嫌気のさしたころ、CBS-TVにアシスタント・ディレクターとして招かれ、1年ほどでディレクターに昇格して売れっ子となる。5年間に手がけたドラマは500本あまり、さらにブロードウェイで芝居の演出もする。そして57年、「十二人の怒れる男」で監督にデビューする。彼自身が演出したドラマの映画化で、12人の陪審員中1人だけが無罪を主張し、やがて議論を重ねるうちに無罪に傾いていくというディスカッション・ドラマ。その緊迫感が見事な作品だった。続く「女優志願」(58)は、女優志願で田舎から出てきた女が劇作家と知り合い、役を射止めるまでを描く。「橋からの眺め」(61)はアーサー・ミラーの戯曲の映画化で、姪を愛するようになった男の悲劇を描いた社会派ドラマ、「質屋」(64)はユダヤ人の大学教授を通して人間の絶望の淵を描く。さらに、大学を卒業した8人の女性のその後の歩みを赤裸々に描いた「グループ」(66)、恋人がコールガールかもしれないという疑念から抜けきれない悲劇「約束」(69)、ニューヨーク警察内部にはびこる腐敗を単身取り除こうとする「セルピコ」(73)と、1作ごとに社会性の強い作品を発表し、アメリカの問題点を告発するエースとしてその地位を不動のものとする。【社会派サスペンスの巨匠】74年、オリエント急行内で起きた殺人事件を名探偵ポワロが鮮やかに解決する「オリエント急行殺人事件」で、娯楽映画にも並々ならぬ腕の冴えを披露、一転して次作の「狼たちの午後」(75)では、銀行に立てこもった2人組の警察との攻防をサスペンスフルに描いた。そして「ネットワーク」(76)では視聴率戦争にまい進するテレビ界の内幕を暴露する。以降は「プリンス・オブ・シティ」(81)、「デストラップ・死の罠」(82)、ポール・ニューマンがアル中の弁護士に扮して巨悪と闘う「評決」(82)など、社会性と娯楽性を兼ね備えた問題作を発表。2007年には大金を必要とする兄弟が宝石強盗を計画するという「その土曜日、7時58分」を監督。社会派サスペンスの巨匠はいまなお健在である。2004年度のアカデミー賞で名誉賞を受賞。

シドニー・ルメットの関連作品 / Related Work

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  • コネクション マフィアたちの法廷

    制作年: 2006
    アメリカ史上最長の裁判と言われる、1987-88年の間に21カ月にわたって行われたルッケーゼ裁判を描いた法廷サスペンス。この映画の法廷シーンの大半は、実際の証言を忠実に再現している。監督は、惜しまれながら2011年4月に逝去した名匠シドニー・ルメット。知的でいながら人情味溢れるジャッキー・ディノーシオを演じるのは、「トリプルX」「ワイルド・スピード」シリーズなどのアクションで名を馳せたヴィン・ディーゼル。2012年5月19日にヒューマントラストシネマ渋谷より、『未体験ゾーンの映画たち』の一作として上映。
  • その土曜日、7時58分

    制作年: 2007
    成功した会計士が弟とともに両親の宝石店への強盗を強行、転落する様を追うサスペンス。監督は「十二人の怒れる男」「刑事エデン/追跡者」のシドニー・ルメット。出演は「カポーティ」のフィリップ・シーモア・ホフマン、「痛いほどきみが好きなのに」のイーサン・ホーク、「ボーン・アルティメイタム」のアルバート・フィニーほか。2007年度ニューヨーク批評家協会賞功労賞、ボストン映画批評家協会賞ベスト・アンサンブル・キャスト賞・助演女優賞ほか受賞。
    70
  • グロリア(1998)

    制作年: 1998
    マフィアに命を狙われる少年と逃避行を続ける女性の奮戦を描いたサスペンス。ジョン・カサヴェテスの同名作(80年)のリメイクでオリジナルを現代風にアレンジ、ヒロインはシャロン・ストーン(「マイ・フレンド・メモリー」)が演じ、監督には「NY検事局」のヴェテラン、シドニー・ルメットが起用された。脚本はスティーヴン・アンティン。製作は「ティン・カップ」のゲーリー・フォスター、「レインマン」のリー・リッチ。製作総指揮はG・マック・ブラウンとチャック・ビンダー。撮影は「NY検事局」のデイヴィッド・ワトキン。音楽は「ゲーム」のハワード・ショア。美術はメル・ボールン。編集はトム・スワートウート。衣裳は『ロバート・アルトマンのジャズ』(NHK~BSで放映)のドナ・グラナータ。共演は新星のジーン・ルーク・フィゲロア、「ミミック」のジェレミー・ノーザム、「冷たい月を抱く女」のジョージ・C・スコットほか。
    70
  • NY<ニューヨーク>検事局

    制作年: 1997
    N.Y.警察署内の贈収賄事件を追う検事補が、現職刑事である父が容疑者に上がったことで、正義と現実の間で苦悩する姿を描いた社会派サスペンス。ロバート・デイリーの小説『堕ちた証拠』(ソニー・マガジンズ)を、「Q&A」「キルティ/罪深き罪」のシドニー・ルメットの監督・脚本で映画化。製作は「死と処女」のトム・マウントとジョシュ・クレイマー。撮影は「ミルク・マネー」のデイヴィッド・ワトキン、音楽は「ネル」のマーク・アイシャム、美術は「ペリカン白書」のフィリップ・ローゼンバーグ、編集はサム・オスティーン、衣裳はジョゼフ・G・オーリシが担当。主演は「悪魔たち、天使たち」のアンディ・ガルシアと「アメリカン・プレジテント」のリチャード・ドレイファス。共演は「蜘蛛女」のレナ・オリン、「フィフス・エレメント」のイアン・ホルム、ブロードウェイの舞台で活躍するロン・リーブマンほか。
    70
  • ギルティ 罪深き罪

    制作年: 1993
    美しく優秀な女性弁護士が、依頼人の功名な罠に追いつめられていく姿を描くサスペンス・ドラマ。監督は「刑事エデン 追跡者」のシドニー・ルメット。製作は「白と黒のナイフ」のマーティン・ランソホフ。エグゼクティヴ・プロデューサーはド・カーモディとボブ・ロビンソン。脚本はラリー・コーエン。撮影は「いつも隣りにいてほしい」のアンジェイ・バートコウィアク。音楽は「ルームメイト」のハワード・ショアが担当。主演は「ゆりかごを揺らす手」のレベッカ・デモーネイ、「ボーン・イエスタディ」のドン・ジョンソン。他に「十二人の怒れる男」以後4本のルメット作品に出演しているベテラン俳優ジャック・ウォーデン、「ブルックリン最終出口」のスティーブン・ラング、「アダムス・ファミリー」のダナ・アイヴィらが共演。
  • 刑事エデン 追跡者

    制作年: 1992
    ユダヤ教ハシド派のコミュニティで起こった殺人事件の真相を探る女刑事の姿を描くサスペンス・ドラマ。ハシド社会は、ユダヤ教の中でも最も伝統を重んじる戒律の厳しい社会である。その興味深い生活習慣や伝統が、この映画の中でこと細かに紹介されている。監督は「Q&A」の、ニューヨーク派の代表的監督シドニー・ルメット。製作はスティーヴ・ゴリン、シガージョン・サイヴァットソン、ハワード・ローゼンマン。エグゼクティヴ・プロデューサーはサンディ・ガリンとキャロル・バウム、脚本は「ボディ・ダブル」のロバート・J・アヴレック、撮影は「ツインズ」のアンジェイ・バートコウィアク、音楽はブロードウェイ・ミュージカルの巨匠で、「屋根の上のバイオリン弾き」のジェリー・ボックが担当。主演は「嵐の中で輝いて」のメラニー・グリフィス、本作が映画デビューとなるエリック・サル。

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