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レイモンド・チャンドラーが生んだ私立探偵フィリップ・マーロウの活躍を、リーアム・ニーソン主演 × ニール・ジョーダン監督で描いたハードボイルド・ミステリー「探偵マーロウ」が、6月16日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほかで全国公開。“男たちの友情と怪しい女性の影” を描いたシーンの映像、リーアム・ニーソンのメッセージ、著名人のコメントが到着した。 失敗を犯して落ち込むマーロウを、旧友のオールズ刑事は「もういい年なんだ。危険は冒すな。いい手本になってくれよ」と慰める。そこへ1台の高級車が……。 オールズ刑事を演じるのは、「コン・エアー」「ダイ・ハード2」やテレビドラマ『スタートレック』シリーズで知られるアイルランド出身の名優コルム・ミーニイ。彼と40年来の知り合いであるリーアムは「コルムとはイギリスのアビー・シアター時代によく一緒にやっていました。何年も前に亡くなった俳優コリン・ブレイクリーも合わせた3人芝居をテレビ映画で披露したことがありますが、コルムとの共演はそれ以来でした」と明かしている。 リーアム・ニーソン 日本のファンに向けたメッセージ 日本のファンの皆様、いつも僕を温かく応援してくれて、あなたたちの存在を光栄に思っています。いつも謙虚な気持ちにさせてくれてありがとう。『探偵マーロウ』をぜひみなさんに娯楽として楽しんでいただきたいです。劇場で見知らぬ人たちと隣り合って、同じ感動を共有できるということは映画館でしか味わえない貴重な体験ですから、多くの人に劇場で作品を観て欲しいと思っています。 〈著名人コメント〉(五十音順/敬称略) レイモンド・チャンドラーという作家は 男の気質を描いた探偵小説家であり、 私たち大人の男にとって、バイブルのようなものだ。 そこにリーアム・ニーソンが加われば、 これはもう見逃せない作品である。 ──伊集院静(作家) 物語と音楽が、チャンドラー・マナーの〈秘密と嘘〉のために 2つの裸体となって絡み合うような傑作 ──菊地成孔(音楽家/文筆家) リーアム・ニーソンには、私と同じ歳で私も同じ時代の探偵役を演じた経験があり非常に親近感を感じております。 紳士的で権力に媚びず、だからこそ最高にカッコいい『探偵マーロウ』を楽しんで下さい。 ──草刈正雄(俳優) 俳優生活45年のリーアム・ニーソンに ようやくフィリップ・マーロウの役が回って来た 少々老けた探偵だが、マーロウは何歳になっても探偵を続けているはずだ 80歳が近いボクは勿論マーロウの味方だ ──久米宏(フリーアナウンサー) 50歳を過ぎて演技派からアクション俳優へ無謀な舵を切ったリーアム。 普通なら逆でしょ!? 実生活の悲しみを役の哀愁に変換し、今「探偵マーロウ」に憑依した。 最新最高のリーアム・マーロウに酔え! ──田口トモロヲ(俳優など) 正義すら呑み込む退廃とスノビズム その混沌に果敢に挑むマーロウに ハードボイルドの美学を見た ──真山仁(小説家) Story 1939年のロサンゼルス。探偵フィリップ・マーロウ(リーアム・ニーソン)の事務所に、裕福そうなブロンド美女のクレア(ダイアン・クルーガー)が訪ねてくる。「突然姿を消したかつての愛人を探してほしい」という彼女の依頼をマーロウは引き受けるが、映画業界で働いていたというその男はひき逃げ事故で殺されていた!? 捜査を進めると“ハリウッドの闇”が明らかに……。 ©2022 Parallel Films (Marlowe) Ltd. / Hills Productions A.I.E. / Davis Films 配給:STAR CHANNEL MOVIES ▶︎ リーアム・ニーソン100本目記念作「探偵マーロウ」、ブロンド美女に翻弄される予告編!
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30 年の時を超えて〝あの〟衝撃再び! エロティック・スリラーの金字塔「氷の微笑」
2023年6月15日今年85歳を迎えるポール・ヴァーホーヴェンだが、制作意欲は衰えることなく、現在、2作品の新作を鋭意制作・開発中。本作も自ら指揮を執り、4Kレストア版を完成させた。30年前の公開当時、シャロン・ストーンを一躍世界的なセックスシンボルとしてブレイクさせた本作は、今日に至るまで全世界で3億5300万ドルの興行収入を記録。一世を風靡した〝究極〟のエロティック・スリラーが再び劇場に登場する。 ポール・ヴァーホーヴェン監督作品「氷の微笑」は、製作から30年を経た今もまったく古びてはいない。まぁ30年程度でカビ臭くなるような映画はハナからしょうもないのだが。いやそれはともあれ、齢84歳のヴァーホーヴェンが発表した、本年度屈指の傑作「ベネデッタ」(21)を見た後では、その原点とも言える先進性、先鋭性に改めて舌を巻き、堪能することこの上ないのである。 「氷の微笑」の日本公開は1992年6月6日。日本ヘラルド映画によって配給されている。「ロボコップ」(87)、「トータル・リコール」(90)の大ヒット監督待望の新作として注目を集め、そしてなにより、女優シャロン・ストーンの出世作として話題沸騰であった。そう、取調室で美脚を組みかえる、あの映画史上の〝名〟シーンである。ドラマの設定上、シャロン扮するキャサリンはノーパンだ。当時はまだ、レンタルDVDが普及前夜でビデオテープの時代。劇場公開後レンタルが開始されると、誰もがその場面でビデオを一時停止してコマ送り、〝真相〟の確認をしたため、そこだけテープが弛んだとか弛まなかったとか(笑)。見えたかどうかはともかく、そういえば同時期、ジャック・リヴェット監督「美しき諍い女」(1992年5月23日日本公開)も、裸体絵画のモデル役、エマニュエル・ベアールの陰毛修整云々のヘア論争が巻き起こっていたな。ちなみに、同年度のキネマ旬報ベスト・テン外国映画 第1位が「美しき諍い女」、「氷の微笑」は第24位に入賞している。初公開時は、一般映画制限付き(今でいうR15+ 指定) 、ボカシありでの上映だったが、今回の4Kレストア版はR18+無修整での上映となる。はたして日本の社会が進化したのかどうかは微妙だが、作り手の意思は尊重された、か。尺も少し長くなったとの話もあるが、正直どこがどうなったのかは分からなかった。 分からないといえば、やはり真犯人は誰か!?という謎は今回も解明されず、見る人によってさまざまな答えが出るだろう。そのへんを逆手にとり、日本ヘラルド映画は宣伝の一環として〝犯人は誰でしょう、何故でしょう?〟キャンペーンを展開したほど。かくいう私も、30年前のこの映画のパンフレットを紐解くと、『謎とき「氷の微笑」──真犯人はいったい誰?』と題した拙文を寄せていたではないかいな(笑)。キャンペーンの正解(!?)によると、犯人はキャサリン=シャロン・ストーンとのことヴァーホーヴェン監督自身、インタビューでそう答えているそうである。 だがしかし、本当にそうなのだろうか? 私の見立てとしては初見より、さまざまな状況証拠からして、犯人はやはり市警付きのサイコロジスト、ベス・ガーナー(ジーン・トリプルホーン)だと睨んでいる。動機!? 腑に落ちない点は多々あるが、学生時代の同性愛相手キャサリンへの嫉妬と、署内での保身からだ。 じゃあ、ラストカットのアイスピックはどうなんだよ。そう、開巻の殺害シーンと、本篇中のキャサリンやベスの濡れ場を見比べても、おっぱいのシルエットからして(笑)、犯人はキャサリンとして撮られている。ジョー・エスターハスの脚本上では。 しかし、ヴァーホーヴェン監督はハナから犯人捜しなどには関心がないのではないだろうか。そうとしか思えない演出の仕方だ。私もフーダニット(who done it) 謎解き映画には興味を持てないタチだが、ヴァーホーヴェンも明確に犯人を断定させるつもりなら、キャサリンとニック刑事 (マイケル・ダグラス)との激しいセックスの後、いったん真っ黒のカットを挟み込んで!からアイスピックに寄ったりはしないはずである。 そもそも単独犯であるという確証もあるまい。現に同性愛相手のロキシー (レイラニ・サレル)はニック刑事殺害を試みている。誰が犯人なのかではない。女は皆犯人、誰もが心の中にアイスピックを隠し持っているのだ! これが私の見解である。就中、ベッドの上ではご用心召されよ。騎乗位好みはより危険。雌が雄を食い殺す、カマキリこそは BASIC INSTINCT。エクスタシーは死に近く、セックスとは小さな死である。エロスとタナトスは常に背中合わせなのだ。ヴァーホーヴェンはこのことをずっと描き続けてきた作家である。まさに「氷の微笑」は、その後の「ショーガール」(95)「ブラックブック」(06)「エルELLE」(16)そして「ベネデッタ」へと続く、善も悪も踏み越えて、敢然と男社会に伍してゆく、危ないまでに魅力的な女を讃える主題の発火点となった、記念すべき作品なのだった。同性愛モチーフは鮮やかに「ベネデッタ」へと結実しているではないか。 30年前には、邪悪な魅惑に惹き込まれるゾクゾクする関係性を、前年に創られたジョナサン・デミの傑作「羊たちの沈黙」と、キャラを反転させた比較で楽しんだ。今回は、これも本年屈指の傑作であるパク・チャヌクの「別れる決心」と比較するのも一興か。美しき女容疑者の沼に嵌まる刑事。その硬軟の描写の差あれど、どちらも死に至るほど官能的な作品なのである。 文=塩田時敏 制作=キネマ旬報社(キネマ旬報2023年6月下旬号より転載) https://www.youtube.com/watch?v=U7KR8sJ3350 『氷の微笑 4Kレストア版』 BASIC INSTINCT 1992年・アメリカ・2時間8分 ●監督:ポール・ヴァーホーヴェン ●製作:アラン・マーシャル ●脚本:ジョー・エスターハス ●撮影:ヤン・デ・ボン ●美術:テレンス・マーシュ ●編集:フランク・J・ユリオステ ●音楽:ジェリー・ゴールドスミス ●出演:マイケル・ダグラス、シャロン・ストーン、ジョージ・ズンザ、ジーン・トリプルホーン、デニス・アーント、レイラニ・サレル ●配給:ファインフィルムズ ◎6月16日(金)より新宿ピカデリー、丸の内ピカデリーほか全国にて © 1992 STUDIOCANAL -
ミステリーの女王アガサ・クリスティが名探偵エルキュール・ポアロの活躍を描いた小説を、ケネス・ブラナー監督・主演で映画化するシリーズ。その「オリエント急行殺人事件」「ナイル殺人事件」に続く第3弾「名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊」が、クリスティの誕生日である9月15日(金)より全国公開される。特報映像と場面写真が到着した。 クリスティが1969年に発表した『ハロウィーン・パーティ』を、イギリスからベネチアに舞台を移して映画化した本作。一線を退いてベネチアで流浪の日々を送っていたポアロは、朽ち果てた大邸宅での降霊会にいやいやながら参加する。そこで来賓の1人が殺され、ポアロは秘密を孕んだ邪悪な世界へ足を踏み入れるが……。 ポアロ役のブラナーと共演するのは、「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」でアカデミー賞主演女優賞に輝いたミシェル・ヨー、ブラナー監督作「ベルファスト」で親子に扮したジェイミー・ドーナンとジュード・ヒル、女優でコメディアンのティナ・フェイ、さらにカイル・アレン、カミーユ・コッタン、リッカルド・スカマルチョなど。 ブラナーは『ハロウィーン・パーティ』を選んだ理由を「登場人物が列車や豪華客船で、美しい風景をバックに移動して行くという壮大な旅行記の後は、ポアロや登場人物を一か所に閉じ込めるのが面白いのではと感じたんだ」と明かす。 またミシェル・ヨーとの仕事については「とても楽しかったよ。最高に幸せだった」と振り返り、「彼女はスクリーンで類いまれな存在感を放っていた。威厳に満ち、見事な表現力があり、人を惹きつける力がある。茶目っ気があり、楽しい。観客が本当に信じられるよう説得力を持たせるには、ミシェルが作品にもたらす深み、知性、そして静寂が不可欠だった」と称賛。彼女のオスカー獲得については「当然与えられるべき輝かしい成功を収めたことを心から嬉しく思っている」と述べている。 水上の迷宮都市で、ポアロは“亡霊”の正体を解き明かせるか? 本格ミステリーに期待したい。 「名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊」 監督:ケネス・ブラナー 脚本:マイケル・グリーン 製作:ケネス・ブラナー、リドリー・スコット 音楽:ヒドゥル・グドナドッティル 出演:ケネス・ブラナー、ミシェル・ヨー、ティナ・フェイ、ジェイミー・ドーナン 配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン ©2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.
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DTM(デスクトップミュージック)を題材としたむつき潤の青春音楽コミック『バジーノイズ』が、川西拓実(JO1)と桜田ひよりのW主演で、ドラマ『silent』の風間太樹監督により映画化。2024年の初夏に全国公開される。 週刊ビッグコミックスピリッツ(小学館刊)で2020年まで連載された原作は、デジタルネイティブ世代の音楽コミックとして話題を呼び、作家の燃え殻、アーティストの井口理(King Gnu)やSKY-HI、漫画家の浅野いにおらに称賛された。 川西拓実が演じるのは、マンションの管理人をしながらたったひとつの“すきなもの”である音楽をPCで作り、ひとりで奏でるだけのシンプルな生活を送る清澄(きよすみ)。桜田ひよりが扮するのは、清澄の部屋の上階に住み、漏れ聞こえる彼の音楽を密かに楽しんでいた潮(うしお)。 潮は失恋をきっかけに清澄と出会い、その音楽を広めると宣言して動画配信をスタート。閉ざされていた清澄の世界に、強烈なノイズが流れ込む──。 撮影は今夏に行われる。続報を待ちたい。 〈コメント〉 風間太樹監督 むつき潤さんが描く「音」の表現に魅了され、4年前「バジーノイズ」を手に取りました。シンプルな線で可視化された音楽が心地よく、ふわふわ漂って、確かに耳に届いたのです。主人公・清澄が作る音楽には、暮らしの原風景や日々の願いのようなものが込められています。誰かに届けるのではなく、あくまで自分のためのチルい音楽。その音楽が、知らず知らず、誰かの心の助けになっていて-その“誰か”である潮との出会いによって、清澄の他者との向き合いの物語がはじまっていきます。 清澄を演じる川西拓実君とは初めてご一緒します。ひとり、音楽作りに目を輝かせる彼は、きっと清澄の心の良き理解者になれるはず。潮を演じる桜田ひよりさんとは僕が懇願した再会です。破天荒な役どころを愛おしく演じてくれると思っています。楽しみにお待ち頂けたら幸いです 川西拓実(JO1) 初めまして。清澄役を演じさせていただきます、川西拓実です。 原作を読んだ時から清澄に自分に似ている部分があるなと感じていて、自分が出来るならやってみたいという想いがあったので、この作品に参加できることがとても光栄です。 誰しもが、生きてく上で恋愛と音楽には必ず触れるものだと思っているので、観てくださる方に少しでも良い影響を与えられるように全力で頑張ります。絶賛稽古中です。 桜田ひより 潮を演じます、桜田ひよりです。今回お話をいただいて原作を読んだ時、破天荒で周りを巻き込む自由な性格で、目が離せなくなるような潮に自然と惹かれていく自分がいました。風間監督が作り出す空気感が私自身とても居心地が良く、全力で役と向き合いながら演技ができるので、撮影がとても楽しみです。 方言での演技は少し不安もありますが、川西さんや風間監督、スタッフの方々とこのバジーノイズという作品を1から作り上げていきたいと思っています。 原作:むつき潤 絵で音を描いてみたら、本当に音が鳴ることになりました。 ひとえに読者のみなさまのおかげです。 原作をご存じの方も、映画がお好きな方も、音楽を愛する方も、 完成を楽しみにしていただけると幸いです。 僕もみなさんと同じように、風間太樹監督ならではの『バジーノイズ』を楽しみにしています。 Story 頭の中に流れる音を形にできれば、他に何も要らない──。 マンションの住み込み管理人を務め、「音楽を奏でること」だけを生きがいとする清澄。 人との関わりを必要とせずシンプルに暮らしていた彼に、上階に住む潮が挨拶してきた。 その日に失恋したという彼女は、毎日漏れ聞こえる清澄の音楽を楽しんでいたと打ち明ける。 やがて潮が何気ない演奏動画を投稿したことで、自分の音楽を誰かに聴かせようなどと思ってもみなかった清澄の世界が大きく変わっていく……。 「バジーノイズ」 原作:むつき潤「バジーノイズ」(小学館「ビッグスピリッツコミックス」刊) 出演:川西拓実(JO1)、桜田ひより 監督:風間太樹 製作:映画『バジーノイズ』製作委員会 制作プロダクション:AOI Pro. 製作幹事・配給:ギャガ ©むつき潤・小学館/「バジーノイズ」製作委員会 公式HP:https://gaga.ne.jp/buzzynoise_movie/ Twitter:@BuzzynoiseMovie Instagram:@buzzynoisemovie
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“ピランデッロがくれた贈り物”。「遺灰は語る」パオロ・タヴィアーニのインタビュー到着
2023年6月15日名匠パオロ・タヴィアーニが、ノーベル文学賞作家ピランデッロの遺灰をローマからシチリアへ運ぶトラブル続きの旅を描き、2022年ベルリン国際映画祭で国際映画批評家連盟賞に輝いた「遺灰は語る」が、6月23日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほかで全国順次公開。監督の日本独占インタビューが到着、公開初日のオンラインQ&Aが決定した。 [caption id="attachment_26071" align="aligncenter" width="850"] パオロ・タヴィアーニ監督[/caption] ──本作のアイディアのきっかけを教えてください。 パオロ・タヴィアーニ監督 40年ほど前に『カオス・シチリア物語』を撮ったんですね。その時、実は「ピランデッロの灰」という物語を『カオス〜』の最後に加えるつもりでした。ところが、資金がなくなって、結局そのエピソードは撮れなかったんです。そのことがずっと心の中に残っていました。でも、なぜ今になってなのかは、よくわからないな。 ──ノーベル賞作家ピランデッロの遺灰を運ぶ物語ですが、この遺灰のエピソードはイタリアでは有名なのですか? 監督 ピランデッロは、私たちが抱える多くの問いに答えてくれる偉大な作家です。亡くなってから10年間遺灰がローマにあったことも、それから10年、15年くらい経ってようやく故郷のシチリアに墓(モニュメント)ができたのも事実で、何人もの作家がその遺灰についての物語を書いています。ただ、この映画はピランデッロという人物、その遺灰の旅からインスピレーションを得て作られた、完全なる創作なんです。良い映画監督というのは嘘つきなんですよ(笑)。遺灰の壺が列車で旅するというのも私の創作ですよ。 ──その列車のシーンで、素敵な愛のシーンがありました。戦後間もない、引き揚げの人たちをシチリアへ運ぶ列車なのに、ピアノを演奏したり、踊ったり、さらにはラブシーンまであって、なんて美しいんだろうと思いました。 監督 “愛のシーン”がありましたね。今、「素敵だった」と言ってくれましたが、実は「映画」だからこそ、さらに美しいんですよ。映画の撮影現場で起きたことによって、映画がもっと美しくなった。若い二人が愛を交わすシーン、あれは偶然の産物で、脚本に書かれていたわけじゃない。列車の中にレールを敷いて移動式のカメラを回して撮っていたら、あの二人が、本当に、愛を歌うような声やジェスチャーをしていたんです。それがすごく素晴らしいと思って、あのシーンを付け加えたんですよ。映画の現場から偶然生まれたシーンです。 ──映像が本当に美しくて、艶やかに輝いているようでした。モノクロからカラーに変わる瞬間もとても感動的ですね。 監督 白黒のシーンは撮影監督によるところが多いんです。自分が監督だから言うのではなく、白黒の中でも素晴らしい効果、色彩を作り出してくれたと思っています。“過去”にまつわるから白黒、ということだけではなく、映像自体が艶やかで力がありましたね。今後もまた白黒作品を撮りたいと思えるくらいでしたね。 映画は白黒で始まって、遺灰がシチリアに戻って来た瞬間に色がつく。あの海は、ピランデッロが「アフリカの海」と呼んだ海なんですよ。海に光が差す、あの濃い青がスクリーンに現れる。あのシーンは、ピランデッロがくれた贈り物かもしれませんね。 ──映画の最後にはピランデッロの短編がつくユニークな構成ですね。こちらは一転して鮮やかなカラーでした。 監督 色彩が爆発的にカラフルになりますよね。まるで色の奔流のような。その“色”というのが私たちが目にしている、“現実”なんです。私自身は、この映画は2つの全く違う作品が並べられているものだとは思ってはいなくて、同じフレームの中の第一章、第二章、と考えています。この短編「釘」はピランデッロが死の20日前に書いた小説で、だからこそ遺灰の旅と、この物語との間に強い結びつきが生まれるわけです。 ──本作は、初めてお一人で発表した作品ですね。 監督 (兄の)ヴィットリオは、やはり常に私の映画の中にいるんですよ。初めて一人で映画を撮影しましたが、私はシーンを撮り終えるたびに、「カット!いいね」と言って、ヴィットリオの確認を得るために振り返っていたそうですよ。兄はもうそこにはいないのにね。 ──ニコラ・ピオヴァーニさんの音楽も素晴らしいです。 監督 彼との仕事は、ヴィットリオと仕事をするのと同じような感覚なんですよ。私たちの映画にずっと寄り添ってくれた音楽家ですからね。『サン★ロレンツォの夜』から、途切れることなく関係が続いています。彼は偉大な音楽家だが、それはアカデミー賞を獲ったからではなく、それ以上の存在なんです。(*ピオヴァーニはロベルト・ベニーニ監督の『ライフ・イズ・ビューティフル』でアカデミー作曲賞を受賞している) ──この映画にはロッセリーニ監督の『戦火のかなた』はじめ様々な映画の引用によって、戦後のイタリアが描かれますが、日本の若い映画ファンに、これは絶対見るべき、と思うイタリア映画の名作を3本あげていただくことはできますか? 監督 ロッセリーニ『無防備都市』、デ・シーカ『自転車泥棒』、ヴィスコンティ『山猫』です。 私たちが映画監督になりたいと思ったきっかけは、ロッセリーニ監督の『戦火のかなた』を見たことでした。ただ、残念ながら、ロッセリーニ監督とは生前そんなにお会いする機会はありませんでした。けれど、私たちがカンヌのパルムドールを受賞した時、授与をしてくれたのはロッセリーニ監督だったんですよ!(*『父/パードレ・パドローネ』で1977年カンヌ国際映画祭の最高賞パルムドールを受賞している) ──今後、映画にしたい題材やアイデアはまだたくさんおありなのでしょうか? 監督 新作をいま準備中なんですが、それについては内緒です(笑)。なんとか撮影までこぎつけるといいなと思っていますよ。 パオロ・タヴィアーニ監督 オンラインQ&A 日時:6月23日(金)18:30の回上映後 会場:新宿武蔵野館 座席のオンライン予約は劇場HPで6/15(木)昼12:00より ※やむを得ない事情で、時間や登壇者が変更される場合あり © Umberto Montiroli 配給:ムヴィオラ ▶︎ 名匠パオロ・タヴィアーニが描くローマ〜シチリア波乱万丈な旅「遺灰は語る」 ▶︎ ノーベル賞作家の遺灰を運ぶ旅の行方は? パオロ・タヴィアーニ「遺灰は語る」予告編公開