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「エクソシスト」「恐怖の報酬」のウィリアム・フリードキン監督がアル・パチーノ主演により、ニューヨークのアンダーグラウンドのゲイ・カルチャーを背景に犯罪捜査の行方を描いた問題作「クルージング」(1980)が、11月8日(金)よりシネマート新宿ほか全国で順次公開される。メインビジュアルが到着した。 1973年から79年にかけ、ニューヨークで実際に起きた猟奇連続殺人事件。SMクラブに出入りするゲイたちが標的となり、バラバラにされた死体の一部はビニール袋に詰められ、ハドソン川に投げ捨てられていた。興味を抱いたフリードキンを驚かせたのが、逮捕された容疑者が「エクソシスト」で病院シーンに出演した放射線科の看護師だったことだ。 容疑者への面会体験、元NY市警の友人に取材したゲイ・コミュニティ潜入捜査談、そして自ら足を運んで目撃したSMクラブの狂態を脚本に盛り込み、フリードキンはかつてないクライムサスペンスを完成させた。 ところが本作は同性愛差別を助長するとして、製作発表時から公開後まで全米で猛抗議を受け、批評も興行も振るわず、長らく語る者も稀だった。だが近年、「パルプ・フィクション」のクエンティン・タランティーノ、「ドライヴ」のニコラス・ウィンディング・レフン、「燃ゆる女の肖像」のセリーヌ・シアマら名監督がフェイバリットに挙げ、各国のクィア映画祭ではHIVウイルスが蔓延する前のゲイ・カルチャーを記録した貴重な作品として再上映されるなど、再評価が進んでいる。 SMゲイ・カルチャーの洗礼を受けて揺らぐ男性アイデンティティと精神の闇に迫った、先鋭的な野心作。待望のリバイバルだ。 Story 夜のニューヨークでゲイを狙った連続殺人事件が発生。密命を受けた市警のバーンズ(アル・パチーノ)はゲイを装い、“ストレート”立入禁止のSMクラブで潜入捜査を開始する。そして男たちの性の深淵を彷徨い、身も心も擦り減らしていく中、ついに犯人の手掛かりを掴むが……。 「クルージング」 出演:アル・パチーノ、ポール・ソルヴィーノ、カレン・アレン 脚本・監督:ウィリアム・フリードキン 製作:ジェリー・ワイントローブ 原作:ジェラルド・ウォーカー 音楽:ジャック・ニッチェ サントラ参加アーティスト:ウィリー・デヴィル、ザ・クリップルズ、ジョン・ハイアット、マデリン・フォン・リッツ、ミューティニー、ラフ・トレード、ジャームス 1980年/アメリカ/カラー/ヴィスタ/DCP/102分 原題:WILLIAM FRIEDKIN‘S CRUISING キングレコード提供 コピアポア・フィルム配給 © 2024 WBEI
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相米慎二監督の後期の名作「お引越し」(1993)「夏の庭 The Friends」(1994)が、4Kリマスター版となって12月27日(金)よりBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、新宿武蔵野館ほか全国で順次公開される。 「お引越し」は、両親の別居に揺れる少女の物語。4Kリマスター版は第80回ヴェネチア国際映画祭クラシック部門(Venice Classics)に出品されて最優秀復元映画賞を受賞し、フランスをはじめ各国で上映、「30年の時を経て、ついに姿を現した」「青春映画の偉大な作品」と称えられた。「夏の庭 The Friends」は、奇妙な老人と関わりを持った少年トリオの成長記。4Kリマスター版は、相米特集が組まれた今夏の香港映画祭でワールドプレミア上映された。 [caption id="attachment_41573" align="aligncenter" width="850"] 「お引越し」[/caption] 両作キャスト陣のコメントも到着。 田畑智子(「お引越し」レンコ役) 「お引越し」は私自身のデビュー作であり、思い入れしかない、宝物のような作品です。 小学生だった私は、まさか30年経ってもまだこの仕事をしているなんて思ってもいませんでした。 相米監督に出会って私の人生が変わった。あの夏はそのぐらいの出来事でした。 それが今、またスクリーンで観られる! みなさんがどういう感想を持ってくださるのか、すごく興味が湧きます。 改めて観る方も、初めての方も、現代だからこそ響くところがきっとあるし、相米監督のつくる世界をいろんな方に楽しんでもらいたいです。 中井貴一(「お引越し」 父・ケンイチ役) 相米監督との出会いは、人見知り合戦からスタート。お互い、人見知りで、「東京上空いらっしゃいませ」の顔合わせが進まず、トイレから帰って来た相米監督が、突然、「中井、ゴルフやる?ゴルフ行こう」と。 その一週間後、ゴルフをラウンドしながら、打ち合わせ、顔合わせとあいなった。そこからの、お付き合い。 「お引越し」は、一ヶ月、京都ロケ。しかも、お盆時期。インバウンドの盛んな今ほどではないが、実際の大文字山をバックに撮影などとは、車量、人の数からして正気の沙汰ではない。 それを、平然と実行するのが、相米組の凄さ。 まだまだ、話すエピソードの尽きぬ、思い出の映画である。 最も敬愛し、最高の友人でもあった相米慎二の凄さを、再び体感してほしい。 笑福亭鶴瓶(「お引越し」木目米先生役/「夏の庭 The Friends」葬儀屋役) 相米監督には「東京上空いらっしゃいませ」からずっと出演させてもらったのですが、その時は別に何とも思わなかったですね。ただウマが合って、僕と相米監督と安田プロデューサーと中井貴一で〝あほの会″というのを作って月に一回ご飯食べに行ったりしてましたね。 いま番組で色々な監督と出会う機会が多いのですが、〝相米さんはどうやった″とずっと聞きはるんですよね。若い監督が相米慎二の事を神さんみたいに尊敬しててそんな監督の作品にずっと出してもうてた僕までもがなんか羨ましがられて...。改めてすごい人やったんやなと実感してます。 ただ人間的には無茶苦茶ですよ。それでも人に好かれていて不思議な人ですね。 あの偉大さを今ようやくわかったというか、ただの友達と思ってましたがすばらしい監督ですね。 戸田菜穂(「夏の庭 The Friends」近藤夏子先生役) 私の映画デビュー作は、相米慎二監督の「夏の庭 The Friends」で、三國連太郎さん淡島千景さんの孫の役だったと話す時、とてもとても誇らしい気持ちになります。 「わあ、虹きれい」このセリフ、何度やってもオッケーがもらえず、「ダメ」「ダメ」「違う」と言われ続けました。 静まり返る現場で一人ぼっち、頼れるのは自分しかいない。これがプロの厳しさだと教わりました。本当に虹がきれいだと思ってセリフが言えるまで、延々と繰り返されたこの尊い経験がいつも私の根底にあります。 あの夏の神戸、小さな家、庭、コスモス。今はもう会えない相米監督。。。 あの少年たちはいくつになったのかなあ。 あの夏に行ける! もう一度映画館で! 試写室から出てきた相米監督の目には光るものがあり、それはとても優しい目でした。 [caption id="attachment_41575" align="aligncenter" width="850"] 「夏の庭 The Friends」[/caption] 「お引越し」 監督:相米慎二 脚本:奥寺佐渡子、小此木聡 出演:中井貴一、桜田淳子、田畑智子、笑福亭鶴瓶 1993年/124分/日本 ©1993/2023讀賣テレビ放送株式会社 ひこ・田中「お引越し」 「夏の庭 The Friends」 監督:相米慎二 脚本:田中陽造 出演:三國連太郎、坂田直樹、王泰貴、牧野憲一、戸田菜穂、笑福亭鶴瓶 1994年/113分/日本 ©1994/2024讀賣テレビ放送株式会社 ©1992湯本香樹実/新潮社 配給:ビターズ・エンド
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病気の療養から復職した新聞記者がなにげない日常や社会との繋がりから心の居場所を見出してゆく、静かな癒しの映画「ヒューマン・ポジション」が9月14日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開。本編映像「椅子のある生活篇」が到着した。 今回解禁された本編映像は、様々な「生活と椅子」をテーマに編集されたもの。新聞社に勤めるアスタと彼女のガールフレンドのライヴの二人の家の屋根裏には、修理を待つ椅子たちがたくさん。しかし取材に行く先々でも、打ち捨てられた椅子が気になり、家に持ち帰ろうとするアスタ。「他の動物はしないよね?」と、人間特有の“椅子に腰かける行為“とは何かを二人で考える。そしてまた、椅子を修理する。元の塗装を剥がし、やすりをかけ、そしてまた元の姿を取り戻せるよう、焦ることなく二人で手を加える。傷ついたアスタがライヴと共に過ごす不確かだけれど着実な、静かな日々の一歩一歩に癒される。 https://youtu.be/TJwifezid4I 何気ない日々のスナップショットを並べたような描写と共に、柔らかな色彩に包まれたこの作品は、静かな佇まいで絵の具が乾くのを見るかのように進む。何かを声高に叫ぶわけでもなく、世界で最も裕福な国の一つといわれるノルウェーに対する、微妙な疑問とメッセージをそっと囁くように投げかける。心拍数を安定させながら、心乱さず高揚させてくれる物語は、”語らずに語る”全てが愛おしいスローシネマだ。 「ヒューマン・ポジション」 監督・脚本・編集:アンダース・エンブレム 撮影:マイケル・マーク・ランハム 音楽:エイリク・スリニング 製作:スティアン・スキャルタット、アンダース・エンブレム 出演:アマリエ・イプセン・ジェンセン、マリア・アグマロ、ラース・ハルヴォー・アンドレアセン 原題:A Human Position 日本語字幕:西村美須寿 2022年/ノルウェー/カラー/ビスタ/78分 © Vesterhavet 2022 提供:クレプスキュール フィルム、シネマ サセクション 配給:クレプスキュール フィルム
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[caption id="attachment_41533" align="aligncenter" width="627"] 日比野克彦東京藝術大学学長による「20th」のキービジュアル[/caption] 日本初の国立映画教育機関、東京藝術大学大学院映像研究科の設立20年を記念したイベントが10月13日(日)から27日(日)まで、神奈川県東京藝術大学大学院映像研究科・馬車道校舎大視聴覚室で開催される。 上映されるのは、1期から20期までの代表作といえる全72作品(オムニバス3作品含む)。濱口竜介(「ドライブ・マイ・カー」)、瀬田なつき(「違国日記」)、五十嵐耕平(「SUPER HAPPY FOREVER」)、池田千尋(「君は放課後インソムニア」)、真利子哲也(「宮本から君へ」)、清原惟(「すべての夜を思いだす」)、山本英(「熱のあとに」)他の監督作品もラインナップされている。また一般公開された修了制作作品のほか、大学院の実習などで制作された未公開作も上映される。 [caption id="attachment_41534" align="aligncenter" width="1024"] 東京藝術大学大学院映像研究科における実習風景[/caption] 東京藝術大学大学院映像研究科は2005年4月、ユーロスペース代表の堀越謙三氏を中心に設立された。モデルにしたのは、フランスの映画教育機関国立高等映像音響芸術学校(FEMIS)。映画専攻を監督、脚本、プロデュース、撮影照明、美術、サウンドデザイン、編集の7つの領域(コース)に分類し、映画のメインスタッフを担う人材を育てようとした。映像研究科映画専攻長の筒井武文教授(編集領域)いわく、目標は「規模は小さくても撮影所として機能させること。撮影という実践のなかで、自らが目指す映画を2年間のあいだに発見すること」。その成果として監督以外にも多数の優秀なスタッフを、映画の現場に送り出してきた。 [caption id="attachment_41537" align="aligncenter" width="1024"] 濱口竜介監督「PASSION」[/caption] [caption id="attachment_41539" align="aligncenter" width="1024"] 瀬田なつき監督「彼方からの手紙」[/caption] 本イベントの目玉といえるのは、共に2期生である濱口と瀬田が在籍した2年間の全作品を紹介する特別プログラム。10月14日(月・祝)には濱口の「遊撃」「記憶の香り」「SOLARIS」「PASSION」、10月27日(日)には瀬田の「港の話」「dark horse」「彼方からの手紙」が上映される。入試の課題として出された「差別」をテーマにわずか半日で制作した短篇作品も含まれ、トークショーも行われる。その聞き手を務めることになる前出の筒井教授は、「『悪は存在しない』『違国日記』という、2024年の日本映画で突出した作品を公開した2人の、18年前を見てほしいと思っています」と語る。「特に、彼らの撮った全テイクを上映する入試の実技課題品は、興味深く感じてもらえるのではないでしょうか。与えられた“差別”というテーマに、半日の撮影でどう取り組んだか。入試当日以来、ふたりも見ていないわけですし、緊張しているようです。この作品を見ると、どう演出するか、どうOKを出すか、彼らの映画術が伝わってくると思います(瀬田さんが俳優の動きに合わせてキャメラをパンすると、隣で撮影していた濱口くんがフレーム・インするというハプニングも起きる!)」(筒井教授) 期間中には上映と併せてシンポジウムも開催。「教員と卒業生による座談会」には磯見俊裕教授(美術領域)、長嶌寛幸教授(サウンドデザイン領域)が参加する。 「15日間連続上映という期間は、ちょっとした映画祭の規模です。これを無謀ととるか、英断ととるかは、人さまざまでしょうが、どの日も思いがけない出会いとなる作品が揃っていることは保証します。ちょっと遠出になるかもしれませんが、馬車道でお待ちしています。お気軽に、ご来場ください」(筒井教授) 東京藝大映画専攻 20年の歩みを振り返る、貴重な機会となるだろう。 文・制作=キネマ旬報編集部 東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻 設立20年記念上映会 2024年10月13日(日)~27日(日) 神奈川県 東京藝術大学大学院映像研究科・馬車道校舎大視聴覚室 料金:無料 ■特別プログラム:10月14日(月・祝)濱口竜介監督作品(5作品) 「遊撃」「記憶の香り」「SOLARIS」「PASSION」 ※入試三次課題作品 テーマ:差別 ■特別プログラム:10月27日(日) 瀬田なつき監督作品(4作品) 「港の話」「dark horse」「彼方からの手紙」 ※入試三次課題作品 テーマ:差別 ◆作品ラインナップやタイムテーブルは上映会公式サイトまで。
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2023年10月7日のハマスによる奇襲をきっかけに、イスラエルがガザへの大規模攻撃を始めて間もなく1年。イスラエルとパレスチナの双方を⻑年取材してきた土井敏邦監督が、30年にわたるガザの記録をまとめたドキュメンタリー映画「ガザからの報告」が、10月26日(土)より東京・Kʼs cinemaほか全国で順次公開される。 第一部『ある家族の25年』は、土井監督がガザの難⺠キャンプで出会い、1993年9月の〈オスロ合意〉直後より追い続けたエルアクラ家の軌跡を通し、合意の意味を問う。第二部『⺠衆とハマス』は、ハマスの面々やガザの住⺠へインタビューを重ね、ハマスが⺠衆から乖離していったプロセスを解明、ガザの惨状の根源を浮かび上がらせる。 〈コメント〉 土井敏邦監督 私は1985年以来、34年間、パレスチナに通い続けてきた。遠い国の人たちに起こっていることを伝えるときにまずやるべきことは、現地の人びとが私たちと“同じ人間である”と伝えることだと私は考えている。私たちはニュースが伝える数字で現場の実態を「分かった」つもりになる。しかし、あの空爆や砲撃の下には犠牲になった一人ひとりの死の痛み、悲しみがあるのだ。遠いガザで起こっている事態を、日本で暮らす私たちに引き寄せるために、⻑年ガザと関わってきたジャーナリストの私がやるべきことは、そのための“素材”を提供することではないか。ハマスによる越境攻撃から2週間ほど経た10月下旬から、現地ジャーナリストMは1〜2週間ごとにインターネットの画面を通して、現地の状況を伝えてくれた。自身も自宅が砲撃を受け、弟と義弟が殺されたMは、世界のメディアが伝えない市井の人びとの空気を私に伝えてきた。Mが命懸けで伝えてきたその“生の声”を受け取った私には、それをきちんと世界に向けて伝える責務がある。この映画はそういう役割を担っている。 師岡カリーマ(アナウンサー、文筆家) 攻撃が続くガザで、砲弾が落ちる先にいるのがどんな人々で、どんな苦難を強いられてきたか、その生の声を丹念に記録した大作。夢も希望も持てず、人ではないかのように扱われても抗えず、首根っこを掴まれた屈辱的な抑圧と貧困の中で生きるとはどういうことか。なぜハマスは支持され、いかにして支持は怒りに変わったか。人々の生活や政治意識を淡々と追うカメラの向こうから伝わってくるのは「テロ集団ハマスをのさばらせているんだから同罪だ」とイスラエルに蔑まれるパレスチナ人の、悲しいほど「普通」な素顔。何を持ち帰るか、受け手の完成も試される作品だ。(※東京新聞6/22付朝刊「本音のコラム」より) [caption id="attachment_41516" align="aligncenter" width="850"] エルアクラ家の家族写真(1993年)[/caption] 「ガザからの報告」 監督・撮影・編集・製作:土井敏邦 整音:川久保直貴 デザイン:野田雅也、尾尻弘一 ウェブ広報:ハディ・ハーニ 配給協力・宣伝:リガード 2024/日本/205分/Blu-ray ©DOI Toshikuni 2024 公式サイト:http://doi-toshikuni.net/j/