「画家と庭師とカンパーニュ」のストーリー
フランス・カンパーニュ。庭師の男(ジャン=ピエール・ダルッサン)が、ある屋敷の前でミニバイクを止める。何年も放置され荒れ果てたこの屋敷の庭を手入れしようと求人広告を見てやってきたのだ。庭から声をかけると屋敷の男(ダニエル・オートゥイユ)が現れる。それは偶然の再会だった。ふたりは小学校時代の同級生で、翌日から音信普通だった互いの歳月を語りあう。屋敷の男は画家で、御用画家としてそれなりのキャリアを築いていたが、パリでの生活に心身とも疲れ果てて、自分を取り戻すために生まれ育ったこの地に戻ってきた。長年に渡り、絵のモデルたちと浮名を流していたこともあり、妻エレーヌ(ファニー・コットンソン)からは、離婚を言い渡され、5年に及ぶ離婚調停の真っ只中でもあった。一方の庭師は、妻(ヒアム・アッバス)と二人の娘、そして婿に恵まれ、平凡ながらもささやかな幸福を慎ましやかに育んでいた。やがて、荒れ放題の庭を整え、菜園のための用具を揃え、カンパーニュ生活が画家の肌にしっくりと馴染んでくるにつれ、彼の心も平穏を取り戻し始める。そんなある日、画家の娘キャロル(エロディ・ナヴァール)が見知らぬ中年男と共に父を訪ねてきた。突然の娘の結婚宣言に反対した画家は、娘と口論となり、久しぶりの再会は喧嘩別れに終わってしまう。同じ頃、庭師が屋敷の庭で昏倒、翌日に入院、手術を受けた。しかし、画家は医者から、庭師がもう長くはないということを知らされる。退院した庭師は、画家を地元の湖に棲みつく巨大コイの釣りに誘う。小舟の上で穏やかに語らう画家と庭師。数日後、庭師のいないカンパーニュの庭で、親友の遺した菜園に水を撒く画家の姿があった…。時は流れて-パリの画廊で画家の個展が開催されている。庭師のミニバイク、庭仕事用の黄色い長靴、野菜、巨大コイ…そこには庭師の愛してやまなかったカンパーニュの風景が瑞々しく活写された絵が展示されているのであった。