廣木隆一 ヒロキリュウイチ

  • 出身地:福島県郡山市
  • 生年月日:1954/01/01

略歴 / Brief history

【エロスと青春にこだわり続けるピンク映画出身の俊英】福島県郡山市の生まれ。大学進学のため上京するが中退し、アテネフランセの映画技術美学講座に通った。1979年頃からフリーの助監督としてピンク映画の現場に参加し、中村幻児らに師事。82年の「性虐!女を暴く」で監督デビュー。83年の薔薇族映画「ぼくらの時代」に始まる「ぼくら」三部作で注目を集め、ピンク映画とにっかつロマンポルノを往来しながら、青春コメディからシリアスなサスペンスまで多彩な成人映画群を手がけた。89年の「童貞物語4・ボクもスキーに連れてって」で初の一般映画を監督。94年の青春映画「800/TWO LAP RUNNERS」で文化庁優秀映画賞、文部大臣芸術選奨新人賞などを獲得する高い評価を受けた。以後もインディペンデントなエロチック・ムービーで力を発揮し、フェティシズムにこだわった「不貞の季節」(00)、「理髪店主のかなしみ」(02)などを経て、03年、寺島しのぶを主役に迎えた「ヴァイブレータ」がヨコハマ映画祭ベスト・ワンなど数々の映画賞に輝く。近年は「機関車先生」(04)、「きみの友だち」(08)、「余命1ヶ月の花嫁」(09)など確かな演出力でメジャー規模の感動作を手がける一方、「ラマン」(05)、「やわらかい生活」(06)、「M」(07)など男女の情愛をテーマにした小品も並行して発表している。初の時代劇大作「雷桜」が10年秋公開。【空間造形の冴えと全身の芝居】80年代中盤からのピンク映画隆盛期に、低予算の成人映画で発想力と演出力を鍛え、その勢いをかって一般映画にシフトしたピンク出身監督。都会的な風景を切り取る空間造形のセンスから“シティ派ピンク”との異名もとった。メジャー作品を手がけるようになった今も、エロスと裸は依然として廣木にとっての重要なモチーフであり続け、仮に裸が登場しない作品でも、廣木が描く人間の“情”にはそこはかとないエロスが絶えずにじんでいる。反対にエロスや裸がモチーフの場合でも、廣木作品には常に“青春”の普遍性が根底に漂う。長く“エロティシズム”あるいは“女性映画”の作家と見られてきた廣木だが、成人映画時代から青春映画の秀作は多く、世評も高い「800」「きみの友だち」や、WOWOW製作のドラマ『4TEEN』(04)のようなストレートな青春物語で実力を発揮するのは当然とも言える。一見、役者を突き放したようなロングショットの長回しを好み、顔のアップをあまり撮らないことも特徴だったが、その実、役者が全身で表現する芝居を絶妙のフレーミングで画にしようとすることの現れでもある。大杉漣、田口トモロヲ、大森南朋など常連俳優を好んで起用する一方、積極的に新人俳優も発掘。ミュージシャンとの交友も多く、自作の音楽に対するこだわりの強さでも知られる。

廣木隆一の関連作品 / Related Work

作品情報を見る

  • 恋に至る病(2025)

    制作年: 2025
    TikTokを中心にSNSで大反響をよび28回に及ぶ重版を繰り返した衝撃の恋愛小説の実写映画化。原作は斜線堂有紀、監督は廣木隆一。
  • りりかの星

    制作年: 2023
    突然ストリッパーになりたいと言い出した高校生の娘と父親の葛藤と和解をサイレントで描く短編映画。父と二人暮らしの娘・萌が突然ストリッパーになりたいと言い出し、父・泰造は激しく動揺する。眠れぬ夜を過ごす泰造は女体の胎内にも似た異界に誘われ……。出演は、「月の満ち欠け」など監督として知られる廣木隆一、「農家に嫁いだ女 禁断の収穫」の水戸かな。映画評論家・塩田時敏の監督デビュー作。
  • あちらにいる鬼

    制作年: 2022
    後に出家し、“寂聴”を名乗った作家・瀬戸内晴美と不倫の恋に落ちた作家・井上光晴。そして、2人の関係を承知しながらも添い遂げた井上の妻。その渦中で育った井上の長女で直木賞作家の井上荒野が3人をモデルに執筆した同名小説を廣木隆一が映画化。出演は「空白」の寺島しのぶ、「ミッドウェイ 日本の運命を変えた3日間」の豊川悦司、「バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版」の広末涼子。
  • 月の満ち欠け

    制作年: 2022
    第157回直木賞を受賞した、佐藤正午のベストセラー小説を大泉洋主演で映画化。妻の梢と娘の瑠璃を不慮の事故で失い悲しみに沈む小山内堅のもとに、三角という男が娘の瑠璃はかつて自分が愛した女性の生まれ変わりではないかと訪ねてきて……。監督は「母性」の廣木隆一。小山内の妻・梢を柴咲コウ、娘と同じ名を持つ“瑠璃”という女性を有村架純、小山内を訪ねる三角を目黒蓮が演じるほか、伊藤沙莉、田中圭など実力派キャストが出演。
  • 母性(2022)

    制作年: 2022
    「告白」など映像化が相次ぐベストセラー作家・湊かなえが母と娘の愛憎を綴った同名ミステリーを、「ノイズ」の廣木隆一監督が映画化。真相が不明のままになっている女子高生死亡事件。娘を愛せない母と母に愛されたい娘、二人の食い違う証言が紡がれていく。母・ルミ子役で「あの日のオルガン」の戸田恵梨香が、娘・清佳役で「マイ・ブロークン・マリコ」の永野芽郁がW主演。また、理想に生きるルミ子の母を大地真央が、口が悪いルミ子の義母を高畑淳子が演じる。第41回バンクーバー国際映画祭正式招待作品。第35回東京国際映画祭ガラ・セレクション部門上映作品。
  • ノイズ(2022)

    制作年: 2022
    「デスノート」の藤原竜也、松山ケンイチがW 主演、神木隆之介共演の新感覚サスペンス。『グランドジャンプ』(集英社)で連載されていた同名漫画を映画化。平和な孤島と3人の幼馴染、そこに現れた一人の凶悪犯。一滴の<ノイズ>が殺人を呼び、壮絶な死体隠しが始まる。「猪狩島」復興の期待を一身に背負いながらも、島を訪れた元受刑者のサイコキラーを殺してしまった泉圭太を藤原竜也、その殺人隠ぺいに協力する幼馴染の田辺純に松山ケンイチ、故郷の猪狩島で勤務する新米警察官の守屋真一郎を神木隆之介が演じる。廣木隆一監督と脚本家の片岡翔が「夏美のホタル」以来、再びタッグを組んだ。
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